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第十八話

あの老人の言うとおり、僕は階段を下りた。

道を教えてくれるのは親切だが、流石にあの言い方は無いと思う。

とはいえ、あの老人は王が待っていると言った、という事はつまり。


(王様直々の、命令……!)


まさしく王道、自分が勇者になった自覚がより一層高まり、思わず廊下を走りそうになる。


だがそこは勇者と自惚れているだけはあり、ちょっと歩くスピードを速めただけだった。


ルンルン気分で歩いて行くと、自分から見て右側に大きな扉があった


自分の身の丈二つほどの木製扉だ、まさに王道、僕は興奮した。

思い切ってあの伝説の技で飛び込みたいところだが、この冗談はさすがに王様の怒りを買う恐れがあるので普通に開けるという決断をした。


コンコン、一度に二回扉を叩く、一回目では反応が無かったので、二回目はちょっと強めに叩いた。


「……」

三秒待つ。


「…………」

五秒待つ。


「……………」

十秒待った、それでも扉は開かれない。


(おかしいな、ノックしろって言われたんだけどなぁ……)


困った表情で、リグレットは辺りを見渡した。


(誰もいないな、よし、この際だからやってしまえ!)


二歩三歩、四歩五歩と後ろへ下がる。

実はこの勇者様、先ほどやろうとした伝説の技をしようとしているのである。


王との初めての謁見、それを意外と有名なギャグマンガネタで始めようとする辺り、やはりこの勇者は自覚が足りないと見える。


スタンディングスタートの態勢を取り、リグレットは走り出した。


「食らえ~!飛鳥文化アタッ

「リィィィイグレットォォォオォォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!」


ずどぉっ!聞き覚えのある声が僕の脇腹に突っ込んできて、僕を扉の正面から吹っ飛ばした。

僕の体は一瞬宙を舞い、次の瞬間地面を転がった。

突然の攻撃に体中が痛んだ、誰がやったのか、僕は確かめようと後ろを向いた。


そこには、僕と同じように倒れているブレイバさんがいた。


思わず言葉が詰まった。

うごめく目の前の老人には、既に別れを告げたはずだった。

なのに、僕を突き飛ばした?


「なん、で?」


「ッッ!逃げろリグレット!来るなぁ!」


叫び声をあげるブレイバさんに、僕は恐怖すら覚えた。

と、僕が首をゆっくり横に振っていると、扉が勢いよく開いた。


扉の向こう側から、先ほどの老人が現れたのだ。


「………」

「リグレット、なぁ頼む今すぐ逃げてくれ、信じてくれなくていい、恨んでくれていい、でも生きてくれ頼む、この際勇者でも何でもやっていいから!」

「黙れ」


ズドォン!自分がいる床すら揺れるほどの衝撃を持った足踏みが、ブレイバさんの頭を抑えつけた。


たじろぐ僕に、老人は何かを投げつけてきた。

それは、あの機械剣だった。


「勇者よ、お前の初仕事だ、この不敬者を殺せ」

「!!」


思わず手が震えた、今、この老人はなんと言った?


「勇者っていうのは、善良な市民を助ける者の事を言う、こいつは今お前を害した、そして次殺されるのは誰だと思う?この国の王だ」


選べ、そう言って老人は僕の目を見た。


僕の中で、いろんなものが交差した。


ブレイバさんの言葉、勇者としての使命。


「‥‥……分かりました」


そう言って僕は機械剣を握り、ゆっくりと老人の踏みつけているブレイバさんの元へ歩いて行った。


未だにブレイバさんは動いている、僕の後ろ側を指差しながら、聞こえにくいが逃げろと言っている。


一体何から逃げろというのだ、僕はそんな疑問を浮かべながら、老人の目の前に立った。


「貴方の言っていた勇者の覚悟、僕はそれがようやくわかった気がします」


「そうか、ならば示せ、その覚悟を」


僕は頷き、剣に魔力を込めた。


運命が選ぶのは、炎か、怨か。

「注意!」

次回から読み方が固定されます

第○○話の後に炎、もしくは怨が入ります。

炎と怨では話の進み方が違うため、炎を選んだ方は炎を立て続けに読み、怨を選んだ方は怨を読み続けることをお勧めします。

(どちらもお楽しみいただけます)

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