第一話
「今日の朝食は目玉焼き!」
「いえーい!」
年甲斐も無く両手を上げて万歳をするブレイバさんの表情はにこやかで、ついつい自分も笑ってしまった。
「ベーコンにします?ソーセージにします?」
「両方で」
無駄にかっこいい声でぜいたくな注文をされた、笑みがこぼれそうになるが、さすがに大笑いは恥ずかしいので堪えた。
冷蔵庫の中の卵を二個、ソーセージを二本、大きなベーコンを一枚切る。
それらを丸ごとフライパンに入れ卵を割ると、何とも言えない肉の香りが広がった。
「スゥ……ハァ、やっぱり肉は良いねぇ、毎日食べたい」
「ふふっ、笑わせないでくださいよ、はい、朝ご飯」
皿に盛った卵とベーコン、そしてソーセージを渡すと、ブレイバさんはそれをフォークで貪り始めた。
「うはいなほれやぅはまいにいにふはいい(美味いなこれ!やっぱ毎日食べたい!)」
「ぶっ! 笑わせないでって言ったじゃないですか!」
吹き出してしまった、ニヤニヤするブレイバさんを憎たらし気に、しかし楽しげに見ながら、僕もベーコンに齧りついた。
楽しそうにベーコンを噛んでいたブレイバさんがふと横を見る。
「おっと、火が付いてるな、火事になったら大変だ」
僕の体が固まる。
「……あっ」
火を消したブレイバさんから笑みが消える。
「……ごめん」
「いいよ、火消してくれてありがと」
僕は気にしていないふりをするが、流石にブレイバさんの顔を見るのは難しかった。
美味しかった飯を腹にさっさと入れ、僕は外に出た。
ガチャン、閉まるドアの音が虚しく、自分のやり場のない怒りを彷彿させた。
「……火なんて、嫌いだ」