第十七話
面会室を出たらそこは牢獄のような石作の通路で、そこには鎧姿の老人がいた。
「・・・・・・」
厳格な顔だった、ブレイバさんに負けず劣らずの覇気を僕に放っていた。
溜息をついた老人、僕に一つ質問を投げかける。
「ブレイバと一緒に居なくていいのか、確かにお前は勇者だ、だがそれがどうしたって言うんだ、お前は本当に剣を握りたいか?覚悟はあるのか?」
いきなり強めの口調で僕はむっとした、勇者であることが何よりもの宝なのに、それを悪く言われたからだ。
「覚悟ならありますよ、僕は悪い魔物を殺して、皆が尊敬するような勇者になって帰ってきます」
僕は自信満々に言った、でもこの老人は僕を睨みつけ、吐き捨てるように言うのだ。
「言ったな、お前は今悪い魔物と言ったな、会った事も見たことも無いくせに、立派に殺害宣言をしたな、しかも大量虐殺だ」
「えっと、何を言ってるんですか?魔物は悪いもの、人間を意味も無く襲ってくるもの、さっきから仰ってることが分からないんですけど」
「あ?まだ分かんねぇのか勇者サマ、お前は今狂ってんだよ、種族が違うだけで簡単に殺すと言った、悪いと決めつけた、それをお前は今生涯の喜びのように見せつけている」
心底意味の分からない事を言われて僕は混乱したが、何かを言う前に老人は言った。
「この先をまっすぐ進んで階段を登ったら、大きな門があるからそこをノックしろ、王がお待ちだ」
僕の横をさっさと通り過ぎ、老人は僕に指し示した方向とは逆の方向に歩いて行った。
心底嫌な気分になった、あれじゃあまるで魔物を庇護して勇者を卑下しているようだ。
「・・・・・僕は勇者だぞ、クソッタレ」
出来立てほやほやの危うい正義、それは誤って燃え広がった火と同義である。




