表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/57

とってもむかしのおはなし

とっても、とっても。


人間にとっては人生の半分ぐらいの時間で、神様にとってはほんの一時の間の、奇跡の時代のお話です。


世界は人間に支配されていました。


この広くて狭い世界の半分以上を支配した人間は、もう半分を支配する魔物を皆殺しにすることを決めました。


もっと贅沢がしたい、広い家に住みたい、そんな理由でです。


人間の強い戦士や魔法使いが集められ、世界の十分の一に死体の山が築かれました。


魔物たちは抵抗しませんでした、話せばわかると、一生懸命人間に訴えかけて死にました。


でもある時、強力な魔物が現れました。


霧の集合竜、ノウムです。


ノウムは幻を見せる霧で魔物の国を覆いました、霧の中の人間たちは、傷つくことなく追い払われました。


魔物たちは喜んで、ノウムにありがとうを伝えました。


ノウムは喜びを覚えました。


でも、ノウムは勇者に殺されてしまいました。


幻を見せる霧が効かなかったのです、ノウムは大好きな皆を守るために勇者と戦い、死にました。


勇者はノウムの血を仲間に浴びせました、ノウムが倒れても霧が残るので、霧の耐性のあるノウムの血を浴びせました。


それから、勇者はたくさんの魔物を殺しました。


毒ガスを巻きました、無抵抗な魔物を切りました、ひどい殺し方をし続けました。


それが正義だから、そう信じて。


でも、勇者はあるとき剣が握れなくなりました。


勇者の仲間もそうです、杖や盾を落とし、その場で膝を突きました。


魔物たちは相変わらず無抵抗でした、隙だらけの勇者を殺そうともしませんでした。


大丈夫か、そう言って手を差し伸べる始末です。


―――――こんな人たちを悪だと決めつける自分は、何だ?――――


その時、勇者のちっぽけでくだらない正義は、砕け散りました。


勇者はその後、その場で頭を下げ続けました。


三日間、雨が降っても、少しも動かないまま。


四日目の朝、勇者は魔物一人一人に頭を下げました。


魔物たちは笑って許してくれました。


勇者は仲間たちと魔物の国を去りました。


勇者は自分の生まれ故郷には帰りませんでした。


遠く遠く、凄く遠くの小さな村で、こう名乗ったそうです。


勇者が大嫌いなおじいさん、ブレイバ、と。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ