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第十四話

「おうおう、派手にやりやがって」


身の丈よりも少し大きいぐらいの大剣を担いだ全身鎧の老人は、脳髄を貫かれた火竜を見つめていた。


真なる一撃必殺、無駄な行動も思考もすべて閉じ、ただ目の前の標的を殺すだけの一撃を受けた、そんな死に方だった。


「すげぇな、やっぱ『導きの剣』の『鞘』だからか?ちっこい火竜ぐらい雑魚同然ってか」


ニヤニヤしながら、老人は振り返った。


「まぁでも、お前には届かねぇよなぁ」


「・・・・・・・・・」


男は問いに答えないまま、立ったまま気絶している白髪の少年の肩に手を回した。


老人は意外そうな顔をした。


「そんなことしなくても、俺の部下が担ぐんだが?」


「信用できるか」


冷たい眼光と口調で老人を睨みつけ、男は用意されていた馬車の上に乗る。


既に火は老人の部下とらしき武装集団が鎮火している、馬の肝は座っており、特に動じてはいなかった。


「・・・・んじゃあ、儂はこっちのお嬢さんをお助けしますかね」


その場にしゃがみ込み、瓦礫をゆっくりと、一つ一つ放り投げていく。


「辛かったな、苦しかったな」


なるべく痛くないように、それでい迅速に瓦礫を放り投げていると、下敷きになっている少女がうめき声をあげた。


苦しそうに、痛みをこらえながら。


「・・・・・・・・」


瓦礫を取り除き終わった老人は、ゆっくりと少女を持ち上げた。


「安心せい、城には医者も薬もある、そんな傷すぐに治るさ」


その言葉を最後に、少女は気絶した。


馬車に向かうと、そこには少年を抱きしめる丸メガネの男の姿があった。


泣いていた、大の男が、大声をあげて。


そして謝っていた、何の事かは、この命令が下った時から察していた。


「・・・・・・・なぁ、ソラ」


「言うな!」


男は老人に罵声を浴びせた、どうしようもない怒りを、ぶつけた子供のような声で。


「私はブレイバだ!ソラじゃない、この子の家族だ!」


「じゃあ何だ、お前は自分の家族を身代わりにしたのか?」


火に水を掛けたように、男の怒りが冷めた。


ボロボロと、大粒の涙が流れ始め、男はただただ気絶した少年を抱きしめた。


言葉は何もない、老人も、気絶した少女を馬車に乗せただけで、何も言わなかった。


「馬を出せ、丁重に扱えよ」


手綱を握る髭の男は頷き、馬を走らせ始めた。


馬車に乗る少年の手には、しっかりと運命の火種が握り締められていた。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 描写の表現がとても綺麗で丁寧で読みやすい。ここまでノンストップで読みました。 続きも読ませていただきます。☆5を捧げさせていただきました!
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