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異変 part2

 ララを促して窓の傍へと行かせると、鉄鎧を纏った軍隊の隊列が、街の出口のほうへと向かって歩いているのが見えた。


「何……?」


 ララが窓を開いて通りを見下ろす。


 と、真向かいの家の二階からも同じように人が見下ろしていた。ララはその口髭を蓄えた中年男性に声をかける。


「おじさん、何が起きてるの?」

「ああ、ララか。なんでも、かなりの数の魔物が街に押し寄せてきてるらしい。お前は何も聞いてないのか。冒険者も戦いに駆り出されてるって話だぞ」


そう、とララは返事をして、青い顔で家の中に引っ込む。俺は尋ねる。


「魔物が街に……。これも精霊の力が不安定になったせいなのか?」

「たぶんそうだと思う。魔物は普通の動物よりもマナの影響を強く受けるから……マナが不安定になれば、魔物たちも不安定になるのよ」

「なるほど……。でもそうなると、余計に一刻も早く精霊をどうにかしないといけない――んだろうけど、なあ、ララ、一つ訊いてもいいか?」

「何?」

「精霊って……倒してもいいものなのか?」


 もしかして、倒したら今よりもっと酷いことになるのでは?


「別に問題はないと思うわよ。精霊って別に、その一体しかいないっていうものじゃないし。『大事なのは、精霊同士の力の均衡が取れていることだ』って、マージとか冒険者の間ではよく言われてるわ」

「そうか。じゃあ、つまり今の状況は、あの精霊があまりにも力を持ちすぎていることが原因で起きてる可能性が高いってことか?」

「おそらくは、ね。だから、やっぱりアタシたちがすべきことは、あの精霊を倒すことってわけ」


あ、とララはつけ加える。


「でも、今はまずちゃんとセリア姉のことを――」

「いや、ララ、俺たちはすぐに行くべきだ」

「え……?」

「確かにセリアさんは心配だし、まだ治療も必要だ。だが、俺たちは俺たちのやるべきことをすべきだ。それが、結局はセリアさんのためにもなる」

「で、でも――」

「それに……ララ、お前はブレイクの遺志を継いだんだろ? 必ず母を取り戻すと、そう覚悟を決めたんだろ? なら、精霊を不安定な状況に追い込んだ今を逃すことはできないはずだ」


 そんな俺の言葉に、眠っていてさえ苦しげなセリアさんへ目をやってララは沈黙する。


 やがて、重く口を開く。


「……そうね。その通りだわ。アタシたちはアタシたちにしかできないことをやらないと……。でも、精霊はあそこを離れて一体どこに……? アンタには解るの?」

「やってみよう」


 やってみよう、って……? そう怪訝そうに呟いたララの声に被せて、俺は呟く。


「《エルフェン・サーチ》」


以前、ララの首飾りを探した時に使った魔法。その強化版。


コーン…………。


 という小さな鐘を打ち鳴らしたような澄んだ音が周囲に響き、同時、緑色に光る幕のようなものが俺を中心として放たれる。その数秒後、


「……見つけた」

「え? う、嘘でしょ? アンタ、一体どこまで便利な――」

「いや、でも待て。……一つじゃない。強力なマナを感じるポイントが、一、二……いや、結構あるぞ。三十五、三十六……三十七だ。三十七カ所、かなり強いマナを感じる場所がある」


先程、エルフの里で感じた精霊の気配――あれを探ったはずなのだが、これもマナが不安定になっている影響なのだろうか、ほとんど同じくらいに強力な気配が多数ヒットしてしまった。


「これは……マズいな。《テレポート》を使えば一つ一つ回ることは可能だが、それぞれで精霊を探し回ったりすれば、かなり時間がかかる。いや、でもこうなったらやるしか――」

「待って。……ここは、人の助けを借りるのがベストだわ」

「あ、ああ、それはもちろんそうだが、誰の……」

「じゃあ、行ってくるわね、セリア姉。大丈夫だから、安心して休んでてね」


 言って、ララはすぐに家を出る。そして、迷いのない足取りで街を走る。


「もしかして、冒険者ギルドに向かってるのか?」

「ええ」

「でも記憶によれば……お前、他の冒険者と仲悪そうにしてなかったか?」

「ええ、そうね」

「そんな連中をどうやって説得するんだ?」

「説得……? アンタ、アタシがどういうヤツかはもう解ってんでしょ。アタシに『説得』なんて回りくどいやり方、できると思う?」

「無理に決まってるだろ」

「当たり前みたいに言われると腹立つけど……まあ、そういうことよ」


『そういうこと』って……まさか力にモノを言わせて、泣いて嫌がる人間を引きずりだそうってんじゃないだろうな。


 ――いやいや、ララはそんなことをするヤツじゃない……よな?


 そう信じながら、俺はララの頭に載って夜の街を駆け抜けていった。

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