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捜査拡張

12月24日。

クリスマスイブ。

聖は再び、アピピを訪れた。

出来上がったハリネズミをペットショップに届けるために。

前と同じ場所に車を停めた。


他に、車は無かった。

当たり前だと、今は思う。


「あの日も、5階まで来なくても、駐車スペースが全く無かったわけじゃない。少しは空いていたかも。俺は、人に会いたくないから、わざわざ、ガラガラの5階まで上がってきただけ」

 今になって、どうして渡辺と塚本が、5階に車を停めていたのかと、

 疑問が湧いてきた。

 

 自分が到着した時点で、渡辺が、車中に居たことは警察に話した。

 見た全てを、ありのままに話した。


「でも、俺が見たのは、全てじゃ、無いかも」

 女の叫び声を聞いた。

 争う男2人を、薄暗い離れた位置から見た。

 血を流し、倒れている女と子どもを見た。


 走り寄ったときには

 作業服の男は倒れ

 もう一人の、エレベーターで見た裕福そうな、

大きな男が、馬乗りで、殴っていた。


「渡辺が親子を刺す瞬間は見てないんだ」

 凶器も見つかり、渡辺の犯行の証拠もあるのだが。


「ロッキーに乗って、ドアを閉めようとしたとき悲鳴を聞いた……エレベーターから出て、2分以内か。渡辺はワーゲンの側で待ち構えていたのかな」

 通り魔が、誰も来ないかも知れない空いた駐車場で、スタンバイしていたのか?

無差別殺人が、わざわざマッチョな男と一緒の妻子を狙ったのか?


「薫、無差別じゃ無い、犯人のターゲットは、あの母子だったと思う」

と、ラインを送った。


すぐに電話が掛かってきた。

「状況からは、そう考えられる。もちろんな。しかし、接点が無い。今のところ、全く見つからない」

渡辺と花村ユミと接点は無い、らしい。

だが、塚本の妻、七海とは、どうだろうか?


「……なんで塚本先生の嫁さん、なん?」

「塚本七海の画像を見て」


数分後に、薫から電話。

聖は、まだ駐車場に居た。


「これは、気持ちの悪い、一致やな」

やはり、結月薫は、気付いた。


「花村ユミは、塚本の知人やった。けど、何故か一見、妻に見えるような服装やったワケやな。教えてくれて有り難う。塚本は、今のところ被害者なんで、身辺洗う必然性が薄かった。……塚本の妻と花村ユミ、年齢は違うが、体型は似てるな。子どもの年と性別が同じ、やな」

「だからさ、渡辺は、花村ユミを、塚本の妻だと思い込んで、襲ったかも」

「つまり、渡辺は塚本の妻を恨んでいた、二人に接点が有る筈やと?」

「うん」


「セイ。接点があるのは妻では無く、塚本の方かも、な」

「……え?」


「凶器は刃渡り15センチの包丁や。背後から襲い、髪の毛を掴んで、正面から、喉を切っている。渡辺は、被害者の顔を見たんや。面識があれば別人と気付いたに違いない」


渡辺は、塚本に恨みが有り、面識の無い、塚本の妻子を、殺すのが目的だった。

花村親子は、渡辺には、塚本の妻子に見えた。だから殺された。

……何故、そう見えた?


「花村ユミが、あの日に限ってミニスカートやったのは、なんでや? 塚本が仕組んだかも。ドクター塚本を調べ直さなアカンな。捜査拡張やな」

 薫は早口で言って電話を切った。

 

聖は、事件現場から、まだ立ち去れない。

 自分が見たのは、

 <妻子を殺され、逆上して、犯人を殴り殺した男>

 だった。

 気の毒だと心から同情した。


 だが、今は、あの、大きな男が恐ろしい。

 ……とても。

 


「塚本さん。……渡辺を殴り続けていたのね。……ドクター、でしょ? どこをどう殴れば死んでしまうか……知っていたかも」

 マユは、

 塚本は、渡辺に妻子を殺される事情があり、

 花村親子を、妻子の替え玉にしたのではないかと。

 推理した。


「塚本さんは、妻子がターゲットになっているのを知っていた。そんな時に、同窓会で花村ユミに会った。ユミは塚本さんに恋い焦がれ、心を病んでいた。……奥さんに体型が似ている、子どもが同じ年なのも好都合……」

 塚本が、花村ユミ親子を、替え玉に仕立てたのでないかと言う。

 

聖は、マユの推理に反論する材料は無い。

 だが、余りにも信じがたい。

 自分の妻子が狙われているのを知り、

 自分に惚れて、言いなりになる女を、心が病んだ女を、子ども共々、妻子の身代わりした、訳だ。


「死人に口なし、よね。花村ユミさんと塚本さんとの関係が実際どうだったのか、塚本さんの証言しか、無いわね」

 事件の経過は、塚本が語るデータしか無いのだ。


「コレは……単純な通り魔無差別事件では無いわ。

恐ろしく残酷で頭の良い犯人が仕組んだ完全犯罪かも。

あ、でも、セイは見たのよ。……塚本さんが計画的に渡辺に花村親子を殺させ、渡辺を殴り殺した、

それが真実としたら、塚本さんにとって、目撃者のセイは想定外よ。

セイ、事件の日に見た事を、もう一度、詳細に正確に思い出して」






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