第八章☆盲導犬
「2020年に盲導犬を廃止して、人が見えない人の目になるべきだ、という理論が起こってね……」
「犬権を擁護する人が現れた!」
「でも、人が誰かの目の代わりに付きっきりだったら、発狂するのじゃないの?犬の方が適任だったから導入されていたのであって、人がやるのは限界がありそうだけどなあ」
「しばらく物議を醸していたけれど、解決策として、AIロボットの導入が検討される」
「検討?」
「うまくいかなかったんだよ。結局、盲導犬は活躍を続ける」
「ふうん」
「で、だ。翼と茜には2050年にタイムスリップしてもらって、盲導犬を悪用しようとしている男を連行してきて欲しいんだ」
「悪用?どんな風に?」
「最初、男は目が見えない。だけど、交通事故で頭部を打って、目が見えるようになる。そして自分につけてもらっていた盲導犬のハチに人を襲うクセをつけて、事件になったら、相手の方に落ち度があったことにして大枚を稼ぎ始める」
「悪いやっちゃ」
「それがなぁ、相手に選ぶのは以前男にひどいことをしたやつらでな、情状酌量の余地はあるんだが、問題はハチ」
「ハチ?」
「人に利用されて善行をしていたのをねじ曲げられて使いものにならないからとあとで処分されてしまうんだよ」
「かわいそう」
「ハチのほうを連れてきて保護することはできないんですか?」
「誰が面倒を見るんだね?それに男は別の盲導犬を申請して同じことになるぞ」
「男は連行してどうするんですか?」
「新しい人生を歩んでもらう」
「わかりました」
時空パトロールの初仕事だ。翼と茜は気合を入れた。