第一章☆星降る夜
翼の住んでいる地域では、まだ未開の田んぼの場所が広がっていて、街灯はポツンと離れた場所に点在していた。
稲刈りが終わった秋の田んぼに降りて、上を見上げれば満天の星空。
かろうじて冬の星座のオリオン座が見えるが、一体何時位だったのだろう?
翼は最近読んだオリオン座が舞台のSF小説を頭の中で反芻した。
世界は広い。ちっぽけな存在の翼。自分には一体何を成すことができるのだろう?
ぶるるい、と身を震わす。
あんなに暑かった夏はどこへ行ってしまったんだ?
虫の音が物悲しく響いてくる。
博物館のプラネタリウムを思い出す。ここは天然の特等席。
「本当に星が降ってきそうだ」
星の瞬き。澄んだ空気。
のどかな風景。他に人影もなく、ただ翼がいる。
「夜間飛行もオツかもな……」
空?一体どの高さまで空っていうんだ?途中から宙になりはしないか?
「ぼくは、飛行機にも乗りたいけれど、できることなら、宇宙に行ってみたい」
でも、宇宙飛行士になるには、知力体力勝負だと聞いた。今から翼がどんなにあがいても無理そうだった。
「学芸員の資格とろうかな?天文台で働くとか?」
そこまで頭はついていくかな?翼は苦笑した。
でも、夢は果てなかった。