エピローグ☆無常の月
翼が元の時空にかえるときが来た。
空には2050年の月。月基地が完成して、月の裏側にソーラーシステムが確立されて、いよいよ宇宙開発も佳境に入っている。
「宇宙開発は、人類をどこまで連れてゆくんでしょうか?」
「その先は見たいかね?」
「いや。想うだけで十分です」
翼はそう言うと、そばにいた茜を見た。
「茜。ぼくと一緒に1980年に来ないか?」
「私は……、どうしても2020年の人間だから」
茜はかぶりを振りながら、涙ぐんでいた。
「私の月は、開発途中で、希望に満ちた新天地なのよ」
「そっか」
「会えて良かったわ。私の知ってる男の子って、みんなへにょへにょの子ばっかりだったけど、翼はちょっと違ってて良かったよ」
「ぼくの時代はこれが普通」
あはははは!と笑い声が響いた。
茜はもう泣いていなかった。
「最後に2050年の夜空を夜間飛行と洒落込もうじゃないか!?」
小型機で彼らは夜空を飛んだ。
「空はいいなぁ」
しみじみと翼は言った。
「ねえ、翼?」
茜が空っぽのシートに気づいて愕然とした。
「彼はかえった」
「ああ……!」
そうだなぁ、小型機のライセンスとるか。そう思って我にかえった翼は1980年の自分の部屋の中だった。
「あー、ぼく、ライセンス取ったあとまた時空パトロール隊員になってたぞ!!!」
老けた自分を先輩と呼んでいたことに気づく。
「そっか。じゃあまた茜に会えるわけか」
彼はクスッと笑った。




