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失恋した俺の高校生活は、守りたい人が少し多い。  作者: 神無桂花
√奏 大切な人へ。

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93/223

奏√最終話 幸せにを繋ぐ。

 『先輩、警備員の配置、完了しました』

「はいよ。こちらも特に問題無い」


 結愛からの報告に、今一度、会場全体に意識を向ける。

 志保は今、社長の代わりにこのパーティーに出席している。俺はその横で警戒に務めているが、あくまで秘書としてだ。あまり露骨に警戒するのは良くない。

 そこで、結愛だ。外で待機している結愛が、会場の警備システムを覗き見して、眼になってくれている。


『先輩、怪しい人が。清掃員の恰好をしていますが、この時間に来る予定は無い筈です』

「了解」


 さて、どうしたものか……。

 奏が、袖をクイっと引いて、耳元に顔を寄せてくる。


「行って良いよ。史郎君。多分、最初から下手にここは狙わないはずだし」

「よし……」

「お願いね、史郎」

「任せろ」


 意識を切り替える。頭の中に一気に流れ込んでくる、視覚、聴覚の情報。それを一気に処理する。

 いつも通り、スイッチを入れる。


「さぁ、始めようか」

「……史郎君。自分の歳、考えようよ」




 大学を卒業して、すぐに婚姻届けを出した。

 家は変わっていない。奏は、妹たちが自立するまでそうしたいと。

 そして、今年、音葉ちゃんが大学を卒業し、この隣り合う二軒の家には、俺と奏だけが残った。


「志保が、『うちに住まない?』とか言ってたな。部屋余っているって」


 結愛は住んでるし。

 結局、俺も結愛も、志保に雇われることを選んだ。奏もだ。法律関係の難しい事を色々してくれているとか何とか。俺もよくわからない。


「それも、悪くないかもね」


 奏にとって、高校で出会った人たちも、大切な人だ。

 俺達は、大切な人と一緒に過ごすことを、選んだんだ。


「私、思うんだけど」

「うん?」

「史郎君のこと、やっぱり好きだなーって。毎日思う」

「急にどうしたよ」


 夕飯の乗ったトレイを置いた奏はギュッと抱き着いてくる。


「気持ちは冷めるもの、なんて言うけど、毎日熱されて冷めないんだよね」

「それは、嬉しいな」


 そして、それは、俺も感じていること。同じことを、感じていた。


「史郎君、史郎君は、子どもって欲しい?」

「……いや」

「なんで?」


 ショックを受けたわけでは無いようで、純粋に疑問をぶつけてくる。


「……自身が無い。ちゃんと愛情を注いで、寂しい思いをさせずに、立派に、一人で歩いて行けるように育てる自信が、無い」


 それができる自信が無い奴が、子を持つ親になるべきではない、とすら思っている。

 二人の愛の結晶とか、綺麗な言い方で誤魔化してはいけない。生き物だ、これからを生きる、一人の人間だ。 


「大丈夫、なんて適当なことは、言いたくないけど、でも。史郎君は今、ちゃんと生きて行けている。それだけは、保証できるよ」

「ありがとう」

「でも、それだってちゃんと最初からできわけじゃない。迷って、転んで、立ち上がって、やっとできるようになったこと」


 その通りだ。頷くしかないことだ。


「最初から、上手くできる人なんていないよ。史郎君、二人で、頑張ろうよ」

「子ども、欲しいの?」

「流石に、この家、二人で住むには広いって」


 家庭を持つことに、幸せを連想したことは無かった。

 でも、そうだ。

 幸せは繋がなければいけない。

 それなら。

 俺は奏を抱きしめる。


「……まずは、夕飯食べよ?」

「あぁ」


 家族を持つ。そのことに、少しだけ、前向きに考えられる。

 できないと思っていたこと、できなかった人を、知っていたから。 

 でも、俺は違う。


「奏、ありがとう」

「急にどうしたの?」

「また、迷って立ち止まりそうになったから。背中、押してくれてありがとう」


 静かに首を横に振って。奏は笑って答える。


「史郎君が、ちゃんと頑張ってくれているから、できるんだよ。前向いてなきゃ、背中押せないじゃん」





                               奏√ 了

                               次回、結愛√

 


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