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失恋した俺の高校生活は、守りたい人が少し多い。  作者: 神無桂花
√奏 大切な人へ。

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桜を眺めて。

 それから、志保を、朝倉家を狙う奴らを退けたり潰したりして、俺達は冬を越えた。

 奏との約束を思えば、全力以上の力を発揮して、敵を払い、打ち倒せた。

 そして、二年生になって、俺達四人は同じクラスになった。というか、した。色々裏工作して。護衛の都合上、同じ教室の方が良い。


「起きて、史郎君」

「……おー」


 朝か。でも最近、奏、普段より早めに起こすんだよなぁ。


「起きないと、そうだなぁ。チューしちゃうよ」

「知ってるか? 起き抜けの口の中の悲惨さを」


 そう言いながら身体を起こすと、奏は抱き着いてくる。


「……ふふっ」

「抱き着くなら、関係は無いな。別に良いのだが、奏のこれは本当に落ち着くのか?」

「ため込んだ気持ちが、季節を一つ越えたくらいで、落ち着くと思う?」

「……そりゃ、そうか」

「そうだよ」


 まぁでも、俺もこの時間に、安らぎを覚えないわけでも無いんだ。 

 髪形を乱さない程度に、頭を撫でて、アニマルセラピー的な効能を得る。


「ところでさ、史郎君。放課後、時間ある?」

「あるけど。なんかあったか?」

「要件は二つ。デートしたいというのと、もう一つは。まぁ、私のちょっとした、覚悟の表明といいますか。そういうの」

「……まぁ良いが。じゃあ、放課後な。予定は空いてるよ。結愛にも連絡しておく」

「大丈夫。もうしてあるから。今日は史郎君使えないよーって」


 用意周到な幼馴染……彼女に、少しだけ苦笑いだ。




 「仲良いね」

「まぁな」

「やははっ。照れ隠しすらしないかー」


 二年生になった志保は、なんか、さらに綺麗になった気がする、とか言うと、奏は少しだけ不機嫌そうにされたけど。こればかりは俺が悪い。


「女の子は、どこかのピークに向けてどんどん綺麗になるものだよ。心が強くなるとそれはより一層、輝く」


 と、奏は言っていた。


「ねぇ、史郎。お花見、ちゃんと行った?」

「……多分、今日行く」


 そう言うと、志保は小さく頷く。


「うん。そうだね。今日が見頃かな」

「史郎君、戻ったよ。志保さん、席、良いかな?」

「うん。どうぞー。ではごゆっくりー」


 そんな、わざとらしい言葉を放ちニヤニヤと結愛のところに志保は行ってしまう。

 結愛によれば、志保に言い寄る男は結構いるらしい。


「別に離れなくても良いのに」


 奏は、学校ではあまりくっついてこない。だから、付き合っていると気づかない人も結構いる。その分家で発散させていると考えれば、朝のあれも……いや、俺、奏にくっつかれて結構嬉しいとか思ってるな。うん。


「史郎君、お花見で良いの?」

「あぁ」


 窓の外。穏やかな春の空。鮮やかな青空だ。

 これから夏になれば、遠く広がる空になって、秋になれば優しい空に。冬になれば、寂し気な空になる。

 どれくらい、とは考えない。ずっととか、永遠とか鼻で笑っていた俺だけど。今は、これからもずっとがあれば良いな、と思っている。




 前に来たのは、志保と、結愛とか。

 その時は既に散った後だった。団子片手に、コンビニで買った緑茶を傾ける。


「綺麗だね」

「うん」

「流石に、この光景が見られたら、付き合っているって広まるかな」

「どうだろ。俺と奏、元々仲良かったし。キスでもしていれば広まるかもな。というか、広めたいのか?」

「史郎君狙いの女子を黙らせたい」


 怨嗟の籠った声に思わず身を引いた。


「史郎君フリーなの? とか九重君の好きな食べ物何? とか。デートに誘ったら来てくれるのかなーとか。実は男子の方が好きなのかなーとか。それをニコニコ対応するこっちの身にもなって欲しい」

「あぁ。大変だな」


 もちもちとした食感と餡子の甘みを舌で楽しみながら、ぼやいた。他人事だ。なびかなきゃ良いだけだから。


「ねぇ、史郎君。こっち見て?」

「ん?」

「えいっ」


 そんな可愛らしい掛け声とともに、奏は、本当に実行した。

 奏がさっきまで食べていた、ずんだの甘みが餡子の甘みと交わる。

 十秒、二十秒。もっと経っているのか、それとも、そんなに時間が経っていないのかわからないけど。

 顔が離れた時、お互い、少しだけ息が乱れていた。


「よしっ」

「何が『よしっ』なのかさっぱりなのだが」


 ふと、辺りを見回したら部活で来ていたのか、花見をしている、うちの制服を着た集団がこちらを見ていたことに気づいた。

 明日から、俺達は噂の的だな。はぁ。

 また結愛に。「ちゅっこらちゅっこら」言われる。


「ところで、ずっと聞きたかったのだが」

「なーに?」


 何事も無かったかのようにいつも通りの奏が首を傾げる。


「デート以外の用事って、なんだ?」

「ふふん。御両親に挨拶だよ」

「へー。帰ってくるのか。なら花音ちゃんと音葉ちゃんともご飯だな」

「違う違う」


 首を横に振り、今度は背筋を伸ばし、真剣な目で奏は言う。


「史郎君の御両親だよ。最後に会ったの、いつ?」

「えーっと……正月の時に、少しだけスマホ越しに話したかな」


 結構デカい任務なったから、特務分室だけでは足りなくなって、総監クラスの権限が必要になって、出張って来たんだったな。


「直接会ったのいつよ」

「中二の時」

「そっか……実は、今日、一緒にお夕飯を食べます」

「よし、逃げるか」

「駄目です。結愛ちゃんにお願いして、連絡取らせてもらったんだよねぇ。わざわざ時間を作ってくれたんだから」


 黒服の二人が、こちらに真っ直ぐに向かってくる。一瞬身構えたが、敵意を感じない。


「史郎様。久遠様。お迎えに上がりました」

「今日はありがとうございます」


 奏が立ち上がり、お辞儀しながら即座に応じる。

 父親の秘書の人か。


「こちらへどうぞ。お車を回してあります。久遠様の妹を回収した後、予約したレストランにて食事を」

「わざわざありがとうございます」


 奏はにこやかだ。でも、わかる。緊張していると。


「何を考えているんだよ」

「良いから。史郎君、私の隣に、いてね」

「……あぁ」

 


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