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失恋した俺の高校生活は、守りたい人が少し多い。  作者: 神無桂花
悪い子になるね。

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結愛の真意。高校生の本業。

 「まずは確認だ。結愛。志保の護衛の任務に就いているんだな、お前は」

「はい、その通りです」


 両手両足を自ら拘束した後輩が、目の前に転がっている光景は、見つかれば破滅への一本道になっている気がする。

 でも、戦闘部隊を送り込めず、スナイパーが狙うのも難しい、結愛にとって圧倒的不利な場所で、こうして好きにしてくださいと言わんばかりの状態になって。話も聞かないというのは、俺にはできなかった。


「志保を今まさに狙っていて、実際に動いている組織がいる、というのは」

「嘘です」

「じゃあ聞くが、あの校門前にいた奴らは?」


「制服を盗んでそれを着て、女子生徒に不埒な真似をしようとしていた奴らです。新学期早々、見覚えのない生徒がいても違和感を持たないでしょう。私もそれを利用して、正式入学前に昼休みに学校に潜入していたので」


「はぁ。あのラブレターは?」


「私が用意しました。事前に特定して、その計画も突き止めていたので。先輩に捕まえてもらうついでに、信用を得るために利用させてもらいました」


「素直に話せよ……」


 でも実際、俺はそれで乗せられて、自分から阻止しに動いたんだ。

 昼休みの結愛の一瞬の接触も、制服を着れば、今の時期なら紛れ込むことにそこまで苦労しない。そんな可能性に思い至らせるためと考えれば……うまく乗せられたものだ。


「じゃあ、あのスリも?」


「あれは違います。前も報告した通り、ただのスリです。常習犯でした。あの近辺に現れることは、知っていました。ただ……彼も気の毒なことに、変な人に目を付けられたらしく」


「変な人?」

「はい。その人が、黙っておく条件として、志保さんから財布を盗めと」

「……それ、狙われてね?」

「そう考えられることには考えられるのですが、だとしたら妙だと思いませんか?」

「何が?」

「何の意味も無いじゃないですか」


 確かに。スリを脅して財布を盗ませたところで、何になると言うのだ。

 財布を盗ませて俺を志保から引き離したところを狙うなら、まだわかるが。

 例えば、犯罪行為を強要するいじめと解釈することもできる。


「脅した人間の目星は?」


「全くです。学校の下駄箱に入っていた手紙で、写真付きで脅されたらしいです。手紙は処分するように指示されたらしく、残っていませんが」


「高校生がやるにしては徹底してるな」


 送られた側としても、自分の犯罪行為を証拠付きで指摘している手紙を他の人に見られたくない筈だ。処分するだろう。


「そして、私たちが捕まえた当日に関しては、公衆電話から指示されたそうで。手紙だけなら妄言だって切り捨てるところですが、通話履歴あったので」


「今時か。そうか……」


 どうとでも解釈可能な範囲だ。かなり陰湿なのは間違いない。


「公衆電話ボックスって監視カメラ、基本的に付けないらしいですね。困ったものです。調べるの、結構手間ですよ」


「そうだな」 


「本当は、先輩に危機感を持たせて、連絡を取ったり、会いに行ったりする口実を作るだけのつもりだったのですけど、色々起きたせいで、変にリアリティが生まれて、ややこしくなってしまいました」


「はぁ。じゃあ、お前のやっていることは」

「立派な命令違反ですね」

「まぁ、護衛任務を一人でこなすのは難しいのはわかるが、しかも本人に気づかれないように」


「えぇ。志保さんと仲良くなるところから始めなければいけなかったので。気弱な文学少女を演じるのも大変です」


「ちゃんと調べてはいるんだな。あいつ、結構本好きだからさ」

「はい」

「そういえば、お前も結構読んでるよな」

「そうですね……先輩の影響で」


 結愛の前で、本を読んでたことは……結構あった気がする。本部で待機を言い渡された時の暇な時間とか。

 何冊か、結愛に薦めた覚えもあるな。そっか、俺が仕事から離れた後も。

 少し、照れくさい。


「あの、どの時点で私を疑ったのですか?」

「土手で会った時。志保と出かけるなら俺に連絡が無いのはおかしいって、奏が」

「あの人ですか……やはり、油断なりませんね、あの人」


 忌々し気に結愛は呻く。もう少し拘束しておくか、今解放するのは危険だろう。と思ったらがっくりうなだれて、溜息。


「先輩、復帰、しませんか? また先輩と組みたいです」

「お前は優秀だから、そんなに俺に拘らなくても良いだろ」

「私が全力を出せる相棒は、先輩しかいません」

「はいはい」


 結愛の制服のポケットから手錠の鍵を見つけて、外す。

 外した瞬間に襲われるとか、一瞬頭を過ぎったが、そんなことは無く。

 その時点で、俺の中で結愛に対する疑念は解けた。


「じゃあ、教室戻るか」

「はい……ゲッ」

「気弱な文学少女は、そんな声を出さないと思うけど? 萩野さん」

「か、奏さん……負けませんよ。私、諦めるつもりはありません」

「ふん」

「奏、来てたのかよ」

「史郎君、全然帰って来ないんだもん」

「……心配かけたな」

「全くだよ」

「えっ……私、何をすると思われていたのですか?」

「さぁな」


 ったく。

 あーあ。まぁ良いや。なんか胸に閊えてた物が取れた気がするし。



 今の今まで、特に意識してこなかったが、うちは所謂私立の進学校である。入試の難易度も高く、また、奏が言うには、定期試験の難易度も相当らしい。

 休職を選んだ俺は奏に誘われてそこを志望し、彼女が出来て浮かれていた俺は付き合い始めた志保も誘い、結果、合格した。俺たちの中学からは、三人しか合格しなかった。


「というわけで史郎、お願い。もう、あなたしかいないの」

「えっ、なんで?」


 放課後、テストまであと二週間という日の教室。

 部活も来週には休止期間に入るらしいが、帰宅部の俺には関係が無い。

 さて、俺はちらりと結愛を見る。が、スッと目を逸らされた。

 結愛がこの学校の勉強についていけていることはわかっている。志保にも問題なく教えられるはずだ。順調に仲を深めているように見える。観察していると、お互い少しずつ素が漏れているから。

 奏を見る。が、奏は志保に鋭い視線を向けていた。


「史郎しか、いない」


 キリリと頭は痛みと共に、志保の受験勉強をサポートしていたのは誰なのかを思い出す。


「史郎、また、勉強を、教えて、欲しい」

「断る」


 反射的に言った。

 言った後に後悔する。もっと言い方があるだろ。

 取り繕おうと、口を開くが。


「良い。やは」


 という、志保の、少し素が混じった笑い声に遮られる。


「史郎も忙しいよね。ごめんなさい。自分でもどうにかしてみる」


 鞄を持った志保はそのまま教室を出て行く。結愛も慌ててその後を追いかけていく。


「……史郎君」


 奏はその一言に、どんな感情を込めたのか、読み切ることはできない。

やってしまった。どうしたら良い。。

 でも、吐き気と痛みは、容赦なく。

 しゃがみ込んで、そのまま地面に融けて消えてしまいたい衝動は凄まじく。

 しばらく、背中をさすってくれる奏に甘えることになった。



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