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失恋した俺の高校生活は、守りたい人が少し多い。  作者: 神無桂花
√結愛 信じること。信じられること。

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結愛√最終話 迷いながら。

 「はぁ。やれやれだぜ」


 結愛からの情報を受け取り、ビルの地下。今頃志保は奏と一緒にパーティー会場か。

 志保の秘書としてから、志保の護衛として、仕事だ。


「よう。こんなところで何をしているんだ?」


 そう声をかけると、作業員の恰好をした男は立ち止まる。


「ちょっとあなた、関係者以外立ち入り禁止ですよ。ここ」

「なら安心だ。お互いそうだろ」

「わ、私は違いますよ」


 中年の男。大きなリュックを背負っている。あの中身が何なのか、だ。

 さて、どうしたものか。

 悩んでいると、後ろから足音。殺気。

 咄嗟に横に飛ぶ。危ない、後ろからグサリとやられるところだった。

 作業着の男が走る。俺を襲ったのはスーツ姿の男だ。


「ぐはっ」


 作業着の男が後ろから何かをくらって派手に転ぶ。それに気を取られたスーツの男の顎を容赦なく蹴り上げる。


「二人だけか?」

「はい」


 その声は、無線越しではなく直接聞こえた。


「ナイス狙撃だな」

「先輩も、良い判断でした」


 ここまで年季が入ると、特に何もなくとも、こんな連携が取れてしまう。


「さて、後は私がやってくので、先輩は会場に」

「頼んだ」


 ハプニングはそれだけ。手応えがあったようで、満足気な志保と共に、朝倉家本宅に帰る。


「お疲れ二人とも」

「おう」

「はい。志保さんもお疲れさまでした」


 俺達は志保の家に住まわせてもらっている。仕事をする上でも都合が良いのだ。

 結愛は隣の部屋だが、夜中になると、どちらかの部屋に集まる。

 大体結愛の方から来る。

 トントンと、ノックの音がして、扉が開く。


「先輩、失礼します」

「おう」


 結婚はまだしていない。

 子どもとか、そういう話も、俺達の間では無い。 

 志保がたまに。叔母と呼ばせたいとか言い出すくらい。

 そういう話になると、結愛が愛想笑いで誤魔化して、別の話題にしてしまう。


「あー。やっぱり先輩の部屋のベッドが一番落ち着きますね」


 年甲斐もなくぴょんとベッドに飛び乗って、ころころと寝心地の良い位置を探し始める。


「恐らく同じベッドだと思うぞ」

「匂いが違いますから」

「男の匂いがするベッドとか……」

「わかっていないですねぇ」


 そんな結愛を眺めながら、俺の思考は続いていた。

 結愛が考えていること。俺達の関係を、恋人のまま止めていること。

 結愛の気持ちは、理解できる。

 俺も結愛も、自信がない。 

 ちゃんと、一人の人を育てる自信がない。

 甘やかすことと愛することを、履き違えるか。

 自分の親のようになるか。


「先輩」

「んー?」

「私たちって、おかしいのですかね」

「どうだか。それぞれだろ」

「今この場面では、その一般論すら、逃げに感じてしまうんですよね」


 だからと言って、なら挑んでみるか、なんて、そんな無責任な軽い言葉すら、言えない。


「満足感も、あるんですよね。この現状に」

「それは、そうだな」


 だから、別に良いと思う。

 俺達が俺達に自信を持って頷けるまで、良いと思う。


「寝ましょう。明日は志保さんが、気晴らしに出掛けよう! と言っていました」

「それは楽しみだな」


 着々と、会社を継ぐ準備を進める志保の、たまの息抜き。それをしっかりと遂行するには、俺達も、全力で楽しむ準備をしなければいけない。

 俺達は雇い主様に忠実なのだ。

 悩みは尽きない。

 俺達は迷い悩み続け、間違って、正解して、でも一つ一つ無駄じゃなくて。

 そんな日々が続いていく。


「おやすみ」

「おやすみなさい……そういえば、先輩、最近ご無沙汰だと思います」

「……そうだな」


 間違えないように。 

 間違えないように。間違えても、大丈夫だと、言えるように。


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