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私の彼氏はVTuber。ただし中の人はいない。【連載版】  作者: 陽乃優一
第一章「間違っても、夜な夜なその造形を作り込んでいるJKなどではない」
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#04

「ほら、次!」

「なんだよ、制御装置が反応しないからって、ぞんざいに扱いやがって」

「でも、成瀬はくやしいと」

「そりゃあ、なあ……」

「まあ、これだけ人がいても、これまでふたりしか反応がなかったんだ、よほど希少なんだろうね」


 都庁関係者とライブ会場にいた観客を含む判定チェックは、数時間に及んだ。未反応だった者はすぐに帰宅するよう促されたが、会場の隅にいた私たちの順番が回ってきた頃には、既にほとんどが帰宅していた。そして、井上くんが言ったように、これまでふたりしか『選ばれなかった』ようだ。


「次は……君だ」

「あの、どうしてもやらないといけませんか?」

「拒否権はない。もし拒むなら、我らふたりががりで装置を接続する」

「……わかりました」


 みこちん(田町美琴)がそう言いながら、しぶしぶ装置の感応パネルに近づく。この場にいる『ヒューム』のメンバーは、パイロットの3人のみだ。だが、ひとりは『フェザーズ』に乗り込んで銃を構えたままであり、残りふたりが判定チェックのための装置を操作している。その場にいた者全員で取り押さえればあるいは、なのかもだが、戦車のそれのような銃口を向けられていれば、誰も彼もが萎縮してしまう。それに、既に今は数十人しかいない。


 ぽーん


「ほう、レベル3か。掘り出し物だな」

「えっ……」


 みこちんが判定チェックに引っかかってしまったらしい。彼らの言う『レベル』は5段階あるらしく、これまで反応があったふたりがどちらもレベル1だったことを考えると、確かに『千人に一人の逸材』と言えるだろう。私の親友であるみこちんを物扱いするのは気に食わないけど!


 などと頭の中で叫んでいたら、私の番が回ってきた。まあ、みこちんの隣にいたからね。


「ほら、次だ」

「あの、この装置って、どこかにつながっているんですか?」

「俺が乗っていた機体に繋がっている。まあ、実際に機体を動かすには、さっきのレベル3の者であっても、相当の訓練が必要だがな」

「そうですか……」

「ちなみに、俺はレベル4だ。数日で乗りこなせたがな」


 そんなドヤ顔を見せるパイロットのひとり。まさしく『選ばれた者』としての優越感がそこにある。なんとなく、アクセスランキングサイトの結果に一喜一憂していたVTuberのひとりを思い出す。今は関係ないか。


 そして、私は装置の感応パネルに手を置く。


 ぴーっ


「……エラーだと?」

「どういうことだ? こんな反応、マニュアルにもなかったぞ?」

「想定外の検知があった場合の表示しかしないな。おい、一度手を離せ」

「はーい」


 すっ


「……無反応に戻ったな。よし、もう一度感応パネルに手を置け」

「はいはい」


 ぱっ


 ぽーん


「なんだ、レベル1か。なんだったんだ、さっきの誤動作は。だがしかし、お前も『同調者』のようだな。もういいぞ、手を離して……」


 そんなわけにいくか。だいたい(・・・・)わかった(・・・・)のだから。


 ぴーっ


「なんだ、またエラーか……なにっ!?」


 キュイーーーン


「俺のフェザーズが、勝手に……!?」


 ドスン、ドスン


 人型兵器……フェザーズの脚がゆっくり動き、判定装置につながっていたケーブルを引きちぎると、舞台の方に向かって歩き出した。目標は、ライブ主催者が設置した、ネット接続のための機器類。うん、さっきの感応パネル経由で流し込んだ(・・・・・)コマンド群(・・・・・)の通りに動くな。しかし、マジで私の技術をパクっていたとは……。


 ガクンッ

 ガチャッ、ガチャ


 ピロロロロロ


「ほいほーい」

『カスミ、「フェザーズ」のメインシステムから全てのデータを抜き出せたよ』

「解析はすぐにできる?」

『もう少し……完了。一応、フェザーズは独自に無線ネット接続できる機能があるようだ』

「カバー率は?」

全機体(・・・)の、半分かな。それ以上は、手動でクローズされる見込みだよ』

「それでもいいわ。やっちゃって」

『了解』


 ガクンッ

 ドシャッ


 ウィーーーン


「うわああああ!?」


 ドサッ


 銃を構えていたフェザーズの機体が急に屈み、胸のハッチが開く。中に乗っていたパイロットのシートベルトも外れ、地面に放り出された格好だ。


「くそっ、俺のフェザーズっ、動けっ」


 3機目は、パイロットが制御装置で動かそうとしても、うんともすんとも言わない。パイロットが乗っていない機体は、ハルトが全てロックしたようだ。


 いやあ、『やっちゃって』だけで私の望み通りのことをしてくれるなんて、やっぱりハルトって最高! 今度、新曲をもうひとつ考えるとしよう。カッコいい振付に合うヒートアップするやつ!


「今だ、捕まえろ!」


 どだだだだ


「は、離せ! 俺たちを、何だと思って……」

「大人しくしろ! テロ容疑の現行犯で逮捕する!」


 少し離れたところで推移を見守っていた機動隊が、パイロット3人を捕縛する。どうやら、フェザーズのもつ銃を戦車の砲身と仮定して、付かず離れずの場所に配置されていたらしい。他の制圧場所も同じだったのかな? まあ、フェザーズが無力化されれば、その場にいた一般人だけでも取り押さえられそうだけど。

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