#31
「お婆ちゃん、死んじゃやだよ!」
「何言ってるの……人は皆、いつかは死ぬものよ……」
「でも……でも……!」
「もし、どうしても嫌だというなら……これを、握りしめてみて……」
「……石?」
「そうだよ。ここには……私が、いるから。いつまでも、いつまでも――――――」
◇
『……御子神?』
「御子神さん、どうしたの!? 御子神さん!!」
ガシャンッ
『……ヒューム・グランザイアは、永遠の存在。それは、人類の統合の象徴、悠久の調べ……』
キュイーーーン
「……まさか、あの巨大な『結晶体』から、膨大な精神感応波が……婆ちゃんの思考パターンが放射されているのか!?」
『えっ、まさか、御子神って「無限同調者」とやらだから、モロに影響されたってのか!?』
「ちょっと待って!? 御子神さんは同調度合いを自身で変更できるって!」
「あまりに膨大な思念波で、心が飲み込まれちまったのかもしれない。いやでも、いくらあの婆ちゃんでも『人類統合の象徴』とか考えてなかったぞ!?」
『それじゃあ、あの大きな結晶体って、やっぱり……!!』
キュイーン、ガシャンッ
ガシャッ、ガシャガシャンッ
ブオンッーーー
『うわああああ! 動かなくなってたフェザーズが集まってきやがった!』
『こ、これって、みんな霞が動かしてるの!?』
『歌って踊れるどころの量じゃないね!』
『井上、お前結構余裕だな!? マジで御子神がヒューム総帥に成り代わっちまったじゃねえか!』
ガシャンッ
『……我らは、侵略者などではない。大人しく従えば、何も危害を加えない。だが……抵抗する者には、容赦しない』
ジャキンッ
『いやあああああっ!? 霞、目を覚まして! 霞!』
『おい御子神! 田町はお前の心の友だろ!? そいつに銃を向けるのか!?』
『御子神さん! 御子神さーん!!』
『井上、だからここは「愛してる」って言う場面だろ!? このヘタレ!』
『こんな場面だから言えないんだよー!』
だっ
「おいっ、武藤! 今すぐGNNの通信回線をグローバル接続に切り替えろ! 早く!」
「ミーアさん!? ……!! わかったっす!!」
カチッ
ピッ、ピッ
「完了っす!!」
「配信サイトは……!!」
ポンッ、タッ、タッ
「ボイスチャット接続……よし! おい、『ハルト』!? 『ハルト』!!」
『わかってますよ、ミーアさん』
「わかってんなら、さっさとお前の彼女を正気に戻せ!」
『もちろんですよ。僕は……カスミの一部なのだから』
ピーーーッ
『え、この音、なに?』
『うわっ、フェザーズの無線ネット接続が、勝手に機能し始めたよ!?』
『ヒューム侵攻を邪魔した時のやつか!』
がくんっ
キュイーーー……
ズンッ……ドスッ……
「よし、全てのフェザーズが機能停止……って、カスミの機体がまだ反応してるぞ!?」
ピコン
パッ
『先に、他のフェザーズを無効化しました。カスミの機体はコマンド入力を全て拒否されるから、直接―――』