#30
ピピピッ
「真那っ……いや、『特務司令官殿! 中継が開始されました!』」
「よし! 無効化装置停止! 私たちも乗り込むわよ!」
いよいよである。私たち4人はもちろんフェザーズで、森坂さんやミーアさん、武藤さんを始めとしたGNNクルーは、複数のジープ型軍用車を降ろして分乗しての移動である。
『母ちゃーん、観てるかー! 俺だー、桃矢だー!』
『あれ、成瀬くんの名前ってとーやって言うんだ?』
『全世界に向けてバカにされた! 御子神、お前の正体もここで暴露してやる!』
『ワレワレワー、ウチュウジンダー』
『俺は地球人だ!』
『成瀬くん、今回はカットされないからって、言いたい放題……霞も』
『フェザーズに乗り込んでるから、機外スピーカーからの声だけだけどね』
「あなたたち……ここは、戦場なんだから……」
「こっ、『このようにっ、フェザーズ搭乗者の高校生たちも、特に緊張することなくっ……!』」
あ、武藤さんが困り果てた顔でリポートしている。ごめんなさい。
ドスンッ、ドスンッ
カチャッ
『……どの機体も、動いてないな』
『というか、敵フェザーズ全てのハッチが開いているね』
『双方共に、被害はほとんどないまま済みそうねー』
『そうだね……死んだ人とか、大怪我した人とか、見たくなかったし……』
みこちんの言うとおり、私も見たくない。見たくはないが……なぜか妙に落ち着いている。これも、ヒュームさんの思考パターンが影響しているせいなのだろうか? ミーアさん曰く、もともと私の本質らしいけど。
ガシャンッ
「……ここが、『総帥府』の置かれている元研究施設ね」
『研究施設にしては、それっぽくないよね?』
『どちらかというと……教会? いや、大聖堂っていうのかな』
派手な装飾はないし何かシンボルが掲げられているわけでもないが、立派な時計塔があるせいか、確かにそんな感じがする。神に祈る場……ここに、神様が降臨するとでもいうのだろうか。
「司令! 総帥補佐官3名を含むヒューム上層部全員を逮捕しました!」
先に突入していた陸戦部隊があっさり制圧したようだ。あっけなかったなあ。
「了解。総帥は?」
「それが、どこにも……。補佐官たちも、総帥についてはなにやら意味不明な言葉をつぶやくばかりで……」
「そう。……御子神さんの、いえ、『ハルト』のシミュレーション結果の通りね」
「は?」
「これからはっきりさせるわ。とにかく、私たちも……」
リーン、ゴーン、カーン、ゴーン
『鐘の、音?』
『これって……あ、あそこ!』
研究施設を大聖堂と見紛うばかりの建造物たらしめている、高い時計塔。鐘の音は、そこから鳴り響いていた。―――そして、その時計の中央に光る、巨大な鉱石。
「あれって、もしかして……ヒュームさんが作り出した、『微弱電流感応結晶体』の、本体―――」
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「あっ、あっ……あああああああっ!?」
キュイーーーン
『御子神!? おい、どうした!』
『霞!? 霞!!』
『御子神さん!?』
それは……静かに、穏やかに、しかし、強く染み渡るように……語りかけてきて―――