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私の彼氏はVTuber。ただし中の人はいない。【連載版】  作者: 陽乃優一
第三章「そうですねえ……『嘘から出た真』、ですかねえ」
14/36

#12

ここから第三章です。本日中に全5話を1時間単位で投稿します。なお、残念ながら、第三章ではロボット(フェザーズ)は出ません。

 ブンッ―――


『カスミ、AHC(アーク)上層部からレポートが届いたよ。現在の『ヒューム』支配圏の様子だね』

「待ってました!」


 ヒューム侵攻から既に2か月ほど。ハルトのフェザーズ無効化を恐れて通信網を分断されて以降、お互いの地域の様子がほとんどわからなくなっていた。


 しかし、そこはそれ、先の基地襲撃と同様に、AHC側もスパイを送り込んで地道な情報収集を続けてきた。とはいえ、秘匿回線を用いた情報返送……ということさえできないから、情報が届くまでとにかく時間がかかるのである。


「……市民生活は、普通? というか、従来通り?」

『みたいだね。旧国家の政府はそのまま存続しているし、分断された連邦国家についても、地方政府や自治体が維持されているようだから』

「じゃあ、ヒュームは何を……『総帥府』?」

『フェザーズ部隊の戦力維持と各地域への配備、各国・地域政府の代表を集めた総帥に対する諮問機関……という名の上意下達(じょういかたつ)組織、くらいかな』

「支配欲だけを満たしたいだけ? なんだかなあ」

『人類の全てを統合する、っていうのは、それだけでも支配者の夢じゃないのかな』

「まあ、そうなんだろうけど」


 皮肉なのは、旧国家群側であるAHC管轄圏と大して構成が変わらないことだろうか。AHC上層部が様々な意向をとりまとめてプランを策定し、各国家・地域がそれを受けて活動する。


 たとえば日本からは、自衛隊基地の設備と人員をプランに沿って移管し、ARC直轄軍の一部を構成する。森坂さんが所属する研究開発基地がその典型で、アメリカ西海岸の研究組織から派遣されたミーア・グランザイア博士がその基地で活動しているわけだ。


「ヒューム支配圏はこんなところね。他には? 特に、配信サイトの運営会社と、TVニュースネットワークね」

『そちらは、「担当者」レベルでヒューム構成員が紛れ込んでいたってことで落ち着いているようだよ。あの時の対応は限定的だったし、組織の規模を考えると、まあ、妥当だね』

「ふーむ……」


 ヒューム侵攻については、フェザーズ部隊以外にも『実行部隊』がいた。フェザーズ各機が各種データを密かにやり取りするための広域ネットワーク対応と、演説を全世界に一斉に流すためのTV中継対応。それが、とあるVTuber配信サイトの運営会社と、とあるTVニュースネットワーク会社だったのだ。


 想定外だったはずの『ハルト』による妨害時に、ヒューム制圧下のそれらの支部がやたら迅速に遮断対応したことに違和感を覚え、組織ぐるみじゃないのかとも思ったのだけれども……それは私がVTuberだったゆえの発想だったようだ。


『もちろん、「勝てば官軍」の言葉通り、ヒューム支配圏のそれらの支部は全面的に従っているようだけどね。フェザーズ間通信網の方は不明だけど、TVニュースネットワークの方は、盛んに「ヒューム」支持のキャンペーン番組を流しているって報告があるよ』

「国は潰さなくても思想は潰す、ってことかなあ。世界の半分をとれなかったことで、支配圏の住民はもちろん、ヒューム構成員にまで反旗を翻されたらマズいもんね」

『ヒューム構成員はとにかく承認欲求が強いみたいだからね。それにしては、今のところうまくやっているみたいだけど……』


 まあ、その辺は、人気VTuberを生み出して広告収入ガッポガッポの私からすれば、いろんなやり方があるよねってところだ。


「世界情勢の報告については以上ね。VTuber活動の方は?」

『順調だよ。AHCの情報統制によって、ヒューム侵攻時の撃退に僕が関わっているってことは、世間一般には知られていないからね』

「ヒューム側の失敗とすることで、AHC管轄圏での威信を落とすって策略だもんね。私としてもそれは歓迎だから、まさしくwin-winだよ!」


 とはいえ、仲の良いクラスメイトは知ることになっちゃったし、各国上層部を含めた社会的責任のある人々には、ほとんど公然の秘密と化している。まあ、その辺は放っておいていいだろう。


 ―――そう、思っていたんだけどなあ。

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