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51、新生徒会

51


新学期早々、稲高は生徒会長が辞めたという話題で持ちきりだった。そして、早乙女部長が時期生徒会長になるらしいとの噂だった。


だけど、みんなは知らない。早乙女部長の秘密を。


夏休みの終わり、枝本さんの後に早乙女が生徒会会議室へ入って行った。


引き継ぎか何かかな?そう思ってドアを開けようとした瞬間……


「好きだ!!」


でぇええええええ!!早乙女部長は枝本さんに告白していた。まさか、早乙女部長に先を越されるなんて!いや、今はそこじゃない!これガチなやつ!ガチBL!


当然、枝本さんからOKの言葉は出なかった。それについてはかなり胸を撫で下ろした。


その後、枝本さんが早乙女部長を「バカは嫌いだ」と振った事から、早乙女部長はバカ撲滅委員会を設立。いや、マジで意味がわからない。


元バドミントン部員(害虫殲滅委員)が再び集められた。害虫殲滅委員会から、バカ撲滅委員会に変更になった。その兼ね合いで、バドミントン部も復活するらしい。


さらには、新生徒会との喧嘩に負けると勉強を強要される。早乙女部長の意味不明な罰則により、ヤンキーが激減。稲高に新たな風が吹いていた。


そんなふうに稲高が変わっても、相変わらず私は枝本さんには告白できず。たまに会っては近況を報告しあったり、一緒に勉強したり、バスケをしたり……二人の関係は相変わらずだった。


秋が来て、冬が来た。もうすぐクリスマス。年末年始は実家に帰る事になった。しばらく枝本さんには会えない。


稲高でのはじめての冬は、かなり寒くて驚いた。さすが田舎。冬は暗くなるのも早く、門限二時間前でも辺りはすっかり暗くなっていた。


花火のシーズンもとっくに終わり、枝本さんは少し時間に余裕が出たようで、毎週水曜の夜は稲高の体育館でバスケをしに来ていた。


今日は枝本さんに会える!


ヤンキーが激減した稲高の最寄り駅はすっかり治安が良くなって、私は1人で帰れるようになった。 今やもう拉致られ慣れしていた頃が懐かしい。


そう思って駅から稲高への道を歩いていると、ゆっくりと車が近づいて来あ。そして、その車の窓が開いて話しかけられた。


「枝本の彼女だよね?」


以前も同じ事があったけど、名指しは初めてだった。さすがの私もその雰囲気に恐怖を感じた。


「いえ、違います」

「あれ?紗菜から聞いた話だと……新川一葉。あんたがそうじゃねーの?」


紗菜さん……?


「前沢と井口って言えばわかる。枝本に連絡取ってくんない?」


嫌な予感しかしなかった。


「あの、今日は携帯を忘れちゃって……すみません」


それは事実だった。今日は寮に携帯を忘れてしまって誰とも連絡が取れなかった。私はすぐにその場を離れた。すると、その車は私の後をゆっくりついて来た。


一旦駅の方へ戻った方がいいかな?何かあったら最悪お店に駆け込んで通報できる。


走って駅前に行くと、帰宅途中の普通科の稲高の生徒がいた。


「助けて!」そう叫ぼうとしたけど、もしこの二人が巻き込まれでもしたら?少し冷静になろう。


ここは二人を巻き込む事は避けなきゃいけない。でも、助けを求められるのは今はこの人達だけ……


せめて電話を借りよう。でも誰にかける?警察?でもまだ何もされてない。枝本さん?枝本さんの番号なんて覚えて無い。


その時、ふと枝本さんだと思ってかけてナル先輩にかかった事を思い出した。


そういえば、今日って水曜日……


もしかしたら……


一か八か、ある方法にかけてみた。


「あの、携帯貸してください!」

「は?誰にかけたいの?」

「ナル先輩の番号って知ってますか?」


二人は当然だと言って、携帯を貸してくれた。いい人達で良かった。


「すみません、お借りします。……もしもし?」


ナル先輩はいつ何時でも電話に出るという噂だった。だから、バスケをやっていても絶対に電話に出る。いや、そこはちゃんと集中しなよ。


でも、今の私はそれに賭けるしかない!


「ナル先輩、枝本さんに変わってください」

「え?あぁ、そこにいるが……」

「早く!」


私が急かすと、枝本さんがすぐに出てくれた。


「何だ?」


枝本さんはバスケをしていたせいか、息を切らしていた。良かった!やっぱり稲高にいてくれた!


「枝本さん!前沢さんと井口さんって人が……」


来た!!


後ろからあの車が近づいて来るのが見えた。


私はすぐにお礼を言って携帯を返した。そして「私の事は知らないって言ってください」そう言って、もう一度寮の方へ歩き始めた。


方向転換したのに、やっぱりついて来る。


その異様な気配がどんどん迫って来る。


後ろを振り向けない……怖い……。


しばらくするとやっと諦めたのか、車は私を追い越し稲高へ向かった。


良かった。これで安心して帰れる。


それでも不安で不安で、何だか無性に枝本さんに会いたくなった。私は急ぎ足で稲高へ続く坂を登った。


この坂を上れば枝本さんに会える!会いたい!枝本さんに会いたい!


本当は年を越したくはなかったのですが……次回で最終回にしようと思っているのですが、間に合いそうにありません。皆様よいお年を。

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