10、誘拐?
10
次の日学校へ行くと、周りの反応が昨日とは明らかに違っていた。その反応は様々で……
ひそひそ声でこっちを見る人、物凄い顔で睨んで来る人、避けるように私から離れて行く人。
「おはよ~」
「おはよ~じゃないよ一葉!」
未来ちゃんがすぐに私に話かけて来た。
「一葉が生徒会長の男になったって……」
待って?男?それって彼氏って事?
どうやら昨日の一件で、一晩で私はホモという事になり、あっという間に稲高で有名人になってしまったらしい。
「一葉~!生徒会長と付き合ってるんだって~?」
そこに肉食系女子の荻野さんが話しかけて来た。
「ホモとか言われてるけど、一葉って普通に女だよね?」
「あの、訳あって生徒会長の前では男なの」
荻野さんは少し首を傾げてそこには興味無さそうに「そうなんだ~」と言った後、仕切り直してこんな事を訊いてきた。
「で、どうだった?生徒会長としてみて」
してみて?生徒会長とした事といえば……バドミントン?
「何度も何度も全力で……(スマッシュしか打たないし、そのシャトルが当たって)たまに痛くて……」
私の発言に何故かみんなが呆然としていた。
「一葉……」
「え?なんかおかしい事言った?」
「いや別に……」
何その微妙な反応?!
教室でそんな話をしていると、放送で名前を呼ばれた。
「2年A組枝本 邦夫、1年C組新川一葉、至急職員室へ来るように」
何故!?
その時はまだ、生徒会長と付き合うという事がどういう事なのか何も理解していなかった。
私の予想では、喫煙所での喧嘩の事だと思う。あれは100%こちらが悪い。あんな場所で、しかも授業中にバドミントンをやるなんて……
でも、あの人に睨まれると嫌とは言えない。
そんな事を思い悩みながら職員室へ向かって歩いていると、突然後ろから布を頭から布を被せられた。
え?は?ナニコレ?
その後、あっという間に手足を縛られ、二人がかりで担がれて移動した。
これって…………拉致!?何故!?どうして私が拉致られなきゃいけないの?何も見えず運ばれる恐怖といは何ともいえなかった。
どこへ連れて行かれるんだろう……?怖い……!!
しばらくすると、何だかカビ臭い場所に来た。こういう時のセオリーは……多分体育倉庫!!
後ろで手を組み、椅子に座らされると布が外れた。
そこは…………ほぼ正解!!ビンゴ~!!本当に体育倉庫!!
ただ、その体育倉庫はヤンキーで溢れていた。3?4人?その人達は昨日喫煙所にいた人達の何人かだった。
どうしよう……また煙草の臭いがする。いや、そこじゃない!ヤンキーに慣れすぎて、喘息の発作の方を気にする自分が悲しい。
「あの~……これはどう言った理由で私はここに連れて来られたんでしょうか?」
「枝本に報復だよ!」
ですよねぇ~!!
「お前、枝本の女なんだろ?だから日頃の感謝を込めて、俺達が少し遊んでやろうと思ったワケ」
「枝本の女…………!?」
今……この人、私の事を女って言った!?
「あの、私の事女に見えるんですか?」
「は?普通に見えるけど?」
この人、なんて……なんてお目が高い!!
「はぁ?お前何言ってんだ?俺には全然見えん」
「俺も」
「いや、どう見ても男だろ?」
唯一、赤い髪をした人だけが、私の事を女と認識してくれた。
「あの……あの、ありがとうございます!!」
「お前何喜んでんの?気持ち悪ぃな」
なんか、めちゃくちゃ嬉しい!!女扱いってこんなに嬉しいんだ!!
「なんかめちゃくちゃ嬉しいです!!」
「こいつ縛られてめちゃくちゃ喜んでるぞ?そういう趣味か?それなら枝本の女としては納得だ」
それ、どうゆう意味!?
すると、その中の1人が生徒会長に送る果たし状みたいな物を墨と筆で書いていた。
『抱腹!!体育館裏にて待つ』
「あ、それ字間違ってます。その抱腹だと、仕返しではなく、腹抱えて笑う方です」
「はぁ?」
「あの、だから……報道の報の字に復習の復で……」
なかなかその指摘は伝わらなかった。携帯があれば普通に変換して出せるのに……というか、手紙じゃなくてメールで良くない?
「今、メールでいいって思っただろ?この、墨と筆で書く事に意義があんだよ!!」
「それにどんな意義が……?」
「それはな………………カッコいいからだ!!」
中2病!!?わざわざ意味深にためて言った言葉がそれ!?いや、むしろそこに何かを期待した私がバカ!
結局、携帯で漢字を調べて書き上げていた。
「字、上手ですね」
「まぁ、俺、ガキの頃から習字と水泳と英会話やってたからな~」
それはもはやヤンキーではなく、いいとこのお兄さんの経歴!!
ここに来て道を外れたのか、道を外れたからここに来たのか疑問に思う所は多々あるけど、ここには色々な人がいるんだな~と改めて思った。
「私も水泳やってました~水泳は肺を鍛えられるとかなんとかで……」
そんな世間話を始めると、体育倉庫の扉が突然開いた。
「こんな所にいやがった……」
そこには、生徒会長が立っていた。
生徒会長!助けに来てくれた!!と、思ったけど、私の事は全く目に入っていなかった。完全にキレてる!!
「え、枝本!?どうしてここが!?」
「あぁ?邪魔だ!どけ!!」
生徒会長は次々と体育倉庫の中にいる人を倒していった。相変わらず鬼のような強さ……
周りはあっという間に倒された人達が転がっていて、赤い髪の人だけが残った。
「ちょ、ちょっと待ってください!私、何もされてませんから!」
その言葉は生徒会長の耳には入らなかった。完全に頭に血が昇っていて、その手が止まる事はなかった。
このままじゃ赤い髪の人が殺されかねない!私はとっさに椅子から立ち上がり、赤い髪の人の前に立った。
「やめ…………」
生徒会長は私の胸ぐらを掴むと、そのまま左側に投げ飛ばした。それは何の迷いも無く、流れるように自然な動きだった。
それは、女扱いとはほど遠い、ヤンキー(しかも敵)扱い。
後ろには、ちょうど立ち上がろうとしていた人がいてその人と衝突した。私はその衝撃でまた意識を失った。




