魔の森4
「ったく、ボスも人使い荒いよなぁ…こんなやべぇ森ン中で花を探せなんてよォ」
「うだうだ言ってないでしっかり探せよ、開発部のこのセンスのないガラクタの反応見逃したら減給どころじゃねぇぞ?」
「おいおい、そんなヤツら敵に回すような発言していいのかよ〜、それバレた方がデスるだろォ?」
「いいんだよ、アイツらは機械いじりしてりゃこんな僻地で調査なんてしなくて済むんだからな、愚痴の一つや二つ付いてもバチぁ当たらんさ」
「まあそれ言ったらボスもイイよなぁ、何だっけか…精霊だか何だか捕らえて今頃お楽しみなんだろォ??」
「おいおい、人外にそれ言うのはお前の趣味キツすぎだぞ、そんなんだから女出来ねえんだろ」
「いやどう見てもアレは上玉だって!あの数値見たルォ?」
「…ああ、測定不能。人類が適う相手じゃない…ま、その点ヤツらのガラクタが有能なのは認めざるを得ないな」
「すんげェよなァ、対精霊決戦兵器だったか?アレ使ィや最強の精霊様も一瞬でただの非力な人間と同じって訳じゃあねェか!」
「まぁそのお陰で我々は森の主に怯えることなく捜索できるって訳だがな……ん、その先の茂み光らなかったか?」
「んァ?……確かに光ってンなぁ、こいつァもしかして」
「ビンゴだ!微弱だが反応があるぞ。」
********
(なるほど、向こうの機械は反応が良すぎるらしい)
木の後ろに隠れながら先程のやり取りを聞いていたヨウは冷や汗をかく。同調の影響か色の見える方向に意識を集中させると話し声が鮮明に聞き取れるようになっていた。恐らく肉体全体がパワーアップしているのだろうという感覚がわかってきた。しかしそれよりこちらの居場所がバレる可能性が極めて高いという現状
…自分と相手の戦力差が分からない以上奇襲等で1人倒してしまおうと考えていた。
(まあいい、正面突破だ。ヨウ!)
内に眠る精霊に呼びかけると呼応する様に右手の甲が光を帯びる。すると朱色に煌めく明かりと共に細長い棒状の「武器」が顕現する。
(..これは!?)
細長く木製で先が枝分かれしている。突っついたら痛そうな形状、そして叩きつけたら直ぐに折れそうな純度100%の細い木材。紛うことなきこの武器は……
ただの木の枝だった。