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終末に架かる陽光  作者: べすらいむ
3/12

魔の森 2

しん…と瞬時に辺りが静まり返った。

「…貴方ねぇ、空気読めないのかしら?」

ジトっと半眼で睨まれてしまった。

「おほん、まあいいわ。心して聞きなさい!」

心変わりしたのかやけにあっさり名乗ってくれるようだ。彼女は先程と同様に両手を叩くと左右から太い木の幹が出現し、ぐんぐん成長していく幹に座りながら

「私は地を司る精霊サフラです。土や木等を自在に操れます。つまり、この森全体が私の力になるのです。恐れ入ったかしら?」


言い終わると同時に両脇の木々からピンク色の花を咲き乱れる。…派手好きなのかもしれない。ドヤ顔キメているし。呆気に取られて言葉を失っていると、サフラは「真っ赤」に染まりながらくるりと後ろを向いてしまった。

「…ああ、教えてくれてありがとう。サフラ!」

一拍遅れて言葉を紡ぐとピクりと顔を動かしかける。しかし振り返ることなく右手を地面に翳し、

潜伏(ダイブ)!」

と唱えて地面に消えていってしまった。


「すげぇ便利そうだなぁ」

と彼女の消えた先を見据えてポツリと呟くと再び静寂が支配する。



「………で、お前は一体誰なんだ…?」

辺りに誰も居ないことを確認した上で、静かに呟く。


「え、ちょっと!聴こえてたのなら返事をしなさいよ!!」

少女のようなカン高い声が少しヒステリック気味に脳内で木霊する。


「よく分からんが俺にしか聞こえないみたいだし幽霊か?祟られる様なことをした記憶(おぼえ)は無いんだが…」


「ヨウ、貴方覚えてないの?」

悲しげな、それでいて心配するような声が伝播する。


「俺の名前を何故…?いや、確かに記憶が曖昧なところがある。君は俺の知らないことを知っているんだな。」

そこに居るはずのないモノに語りかけるように唱える。

「教えてくれ、何があって俺は此処に…?」


「…そう、記憶を失ってしまっているのね、それなら私と同調(ユニゾン)してもらうわ」


「お、おう…俺はどうしたらいい…?」

正体不明の少女に気圧されながらもヨウは直感で信じるべき相手であることを悟った。


「集中して、焔をイメージして…。そして同調(ユニゾン)と唱えて!」


「わかった、焔だな………。よし、いくぞ!」

思い描いたのは忘れもしない、ー故郷を焼いた灼熱の地獄ー 平穏が刹那に奪われた胸の痛み、憤怒、憎悪、ヨウの根源にある原動力は確かに過去(そこ)にあった。



同調(ユニゾン)!!!」



唱えると同時に、眩い光と共にヨウの周囲が焔に包まれる。しかし熱くはない。寧ろ心地よい暖かさだ…等と感じて安心していると、身体に変化が訪れた。

「な、何だこれは…記憶……!?」


そこには2人の姉妹が焔に焼かれる姿、そして長女が焔を纏い街を、村を火の海に変える姿、次女が町村の人々を不思議な能力で治す姿、気味悪がられて人々から迫害される次女の姿等…様々な映像が断片的に脳裏を駆け巡る。その中で飛空挺でヨウと話す次女の姿を見つけた。


「……ッ!…思い、出したっ!!」


すると足元から

「どう、無事に思い出しぇた?」

と舌っ足らずな可愛らしい声がヨウの耳に届く。目線を下に下げると、ちんまりとしたコウがヨウのことを見上げていた。


「思い出したよ。忘れちゃってごめん、コウ……なんで縮んでいるんだ?」


「…あたしたち、せいれいはね、生物ではあるけれど、死という、がいねんが、ないの。ただ、いくつかの、じょうけんで、てんせい…生まれかわる、ことができるの。」

小さくなったコウが噛まない様にゆっくりと説明を始めた。

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