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Bitter day, but a little sweet.

作者: イワオウギ
掲載日:2017/08/06

今日の先輩はどこかおかしい。

僕にはそれが、何となく分かる。


先輩の見た目はいつも通り。

何も変わらない。


その長い髪を、頭の後ろで丸く束ね、

何かのロゴの入った白いTシャツに、

紺色のデニムのパンツ。

いつも通りの、ラフな格好。

何も変わらない。


研究室のデスクでパソコンを打ちながら、

ときどき、誰かの冗談に対して、

いつも通り、笑顔を振りまいている。

何も変わらない。


でも、どこかおかしい。

作り笑いのような、そんな気がする。

何か無理をしている。

僕にはそれが、何となく分かる。



「コーヒー淹れてきますけど、ほかに欲しい人いますか?」


自分のを淹れるついでに、研究室のみんなにも訊いてみる。

何人かがこちらを向いて、手を挙げた。

先輩も手を挙げた。

僕はその数を数えると、給湯室に向かった。



お盆の上に人数分のマグカップと、何本かのスティックシュガーを用意した。

熱いコーヒーを、そのマグカップに淹れていく。

先輩の様子を、何となく思い浮かべていた。


お盆を運ぼうと手を伸ばし、僕はその手を止めた。

少しだけ考える。

そして、スティックシュガーを1本だけ破り、

一振りだけ先輩のマグカップに入れて、

残りを全て、自分のものに入れた。



僕は、お盆を持って研究室に戻った。

そして、コーヒーの入ったマグカップを、

それぞれのデスクに置いていく。

砂糖が必要な人には、スティックシュガーも添えた。

いちいち訊かない。

誰が必要かは、もう覚えていた。


先輩のデスクにもコーヒーを置く。

スティックシュガーは置かなかった。

いつもブラックしか飲まない。

先輩はパソコンの画面から視線を外すと、

僕を見て、お礼を言った。

やはり無理をしている。

作り笑い。

僕にはそれが、何となく分かる。


僕はお盆を、研究室のいつもの場所に置き、

自分のデスクに戻った。

そして、パソコンでの作業を再開させる。

鼓動が少しだけ大きい。



名前を呼ばれた。

一呼吸おいて、僕はゆっくりと先輩の方を振り向く。

先輩はマグカップを片手で軽く持ち上げ、こっちを見ていた。

作り笑いではない。

僕にはそれが、何となく分かった。

2017/08/20

シュガースティック → スティックシュガー に修正。


書いてるときから違和感あったんだけど、

最近になって、ようやく分かった。

あー、恥ずかし。

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