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はなうた  作者: くろばね
7/7

エピローグ

 うー、寒い。今日もよくバイト頑張ったよ俺。

 コンビニファイターに正月はない。クリスマス前に連休取って帰っちゃったし、三が日もがっつりバイトで、やっと明日から休みだ……二日だけだけど……

 電気を点けて、暖房を付ける。電気代を節約したいところだけど、今日はつけないと死ぬ。さむい。


 ぴー、と音がして、エアコンの電源が入る。

 ぴー、と音がして、エアコンの電源が切れた。


「おい、いたずらすんな」


 ピシッ! と窓が鳴ったあと、音もなくエアコンが動き出した。

 あれからきちんと墓参りもして、響の家に行って、言ってたとおりの封筒を見つけて。


 ……帰ってきてから、怪現象が止まらない。


 今みたいなのは初歩の初歩で、時間になると勝手にテレビが恋愛ドラマに変わったりとか、買ってたお菓子が半分なくなってるとか、しまってたはずの漫画が読みかけになってたりとか。

 最初は怖かったけど、なんのことはない。

 試しにと思って、ガトーショコラとモンブランを買ってきて、無造作に台所に置いてバイトに出た結果。


「わっかりやすいよなぁ、お前も」


 モンブランだけが綺麗さっぱり、包み紙を残して消えていた。


 ピシピシピシッ!


「うるさい! ああもう、出てこいよ! いるんだろ!」

「すごい、なんでわかったかな」


 誰いないはずの部屋に、そんな声が。


「お前ガトーショコラ苦手だったろ?」

「罠! たばかったねかーちゃん! 私はかーちゃんをそんな風に育てた覚えはないよ!」

「育てられた覚えもねえよ! というか人の物を勝手に食うな!」


 そして。

 まるで最初からいたみたいに。


「やー、ばれたか」


 俺の前に響がいて。


「ただいま」


 嬉しそうにはにかんだ。


「いやここ、俺の家。お前不法侵入」

「またそういう事言って」


 べしべしと俺を叩くけど、相変わらずすかすか透ける。

 うん、幽霊だなこいつ。間違いない。つまり生き返ってはないわけで。


「で、どういうことなんだ? 成仏したんじゃなかったのか?」

「うん、それがね。何か向こうのえらい人から守護霊やらないかって言われてね。かーちゃんさあ、これから先の人生、運気最悪みたいなんだよ」

「うわぁ……なんだそれ……」

「だから、せめて結婚するまでは助けてやれって言われてね。かーちゃんと同じ飛行機だったんだけど気づかなかった? あ、おじさんとおばさんが飛行機代出してくれてよかったね!」

「帰れ」

「ひどい! あんなに行くなって言ってくれたのに!」

「なんだよ守護霊って! ずっと一緒にお前と生活かよ!」

「あ、それは大丈夫。通いのお仕事だから基本は9時5時だし、夜は向こうに帰るからね? えっちなことはできないよ?」

「そういうシステムなのかよ! というかおまえ相手にしないわそんなこと!」


 うっわあ、墓の前で泣きながらギターとか弾いたの、馬鹿みてえ。


「あ、あの曲もよかったよー。涙をかみしめて演奏する男って感じだったね」

「え、なに、心とか読めるようになったのお前」

「単純ばかなかーちゃんのことだからわかるよ。あと、相変わらず人間には触れないけど、かーちゃんの物にだけは触って良い許可証ももらったよ」

「役所でもあるのか、死んだら……」

「まあまあ、それはゆっくり話してあげる。それよりね」

「ん?」

「また聴きたいな、かーちゃんのギター」


 俺のギターのネックを掴んで、こっちに差し出してくる響。


「いや、この時間からは近所迷惑」

「もー、またそんなこと言って。ほら、一緒に歌おうよ、あの曲」

「例の三曲目か? お前、あんな良い曲なのにあんなタイトル付けて。何考えてるんだよ」

「えー、いい曲名じゃない」

「ふんふーんって感じだろ? ひらがななのが間抜けさ倍増しだよな」

「そっちじゃない!」

「ほらほら、ここ本当に壁薄いんだから、小さな声でな。一曲だけだぞ?」

「うん!」


 それは、応援歌。

 響が生きた確かな証で、これから生きる人に元気をくれる、そんな曲。

 小さく小さく、けど確かな音が鳴るように、ギターの弦をつまびく。

 これから音楽でやっていけるかなんてわからないし、どうなるかはわからない。

 響ともいつまで一緒にいられるかはわからないんだけど、それでも。

 この曲と、この歌詞と。


「春が来たらね 種を植えよう――」


 響の歌を忘れないで、頑張るから、な。  

しめっぽいのよりは、あほみたいなハッピーエンドにしたかったんです…!

切ない終わり方は他の方にお任せするとして…

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