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投稿先を間違えてしまいました、申し訳ないです。
「……さて、私もここであのモンスターに丸焼きにされるつもりはありません」
そういいながらいまだに剣を抱えて尻餅をついている自称勇者に軽く蹴りを入れる。
「いたっ! 何するんだ!」
どうやらまだ反抗的な声をあげる元気は残っているようだ。
「あれを倒しますよ」
私がそう言うと自称勇者は一瞬訝しげな顔をしたが、何かに気がついたようにはっとした顔をする。
「そのどうみても魔法使いっぽい衣装。まさか君、魔法を使えるのか!?」
そう目を輝かせて聞いてくる自称勇者に悪い気はしなかったので、自信気に胸をはって高らかに宣言した。
「そう、私こそはいずれ世界最強になる魔法使いリナリス! ここで朽ちるような小物ではないのです!」
普段クラスメイトからダメ魔法使いとしか扱われていないから、自称勇者の羨望の眼差しが気持ちい。
「ま、あくまで予定で私まだまともに魔法使えないんですけどね。というわけで時間稼ぎしてきてください」
「おいふざけんなよ! 俺の感動を返せ! 使えないダメ魔法使いじゃねえか!」
「失敬な誰がダメ魔法使いですか! それに策がないわけじゃありません、そっちこそ勇者自称するなら少しくらい役に立ってください」
と、そんな下らない争いをしている私たちの間を、再びモンスターから放たれた熱線が通り過ぎる。
「くそ、文句言ってる場合じゃないか。こうなったらその策とやらに乗ってやる!」
今度こそ本当に覚悟を決めた自称勇者は、両手で剣を構えてモンスターに立ち向かっていった。
そして、私は深呼吸をして冷静にモンスターを見る。
全身漆黒の巨大な犬のような身体と、口から吐かれる熱線。
この二つの特徴をもっているモンスターを確か私は学校で習った覚えがある。
魔犬ヘルハウンド、魔法を主な攻撃とする強力なモンスターだ。
本来こんな街近くに出没するようなモンスターではないが、あれだけ莫大な魔力がのに放たれた以上、それにつられて寄ってきていてもおかしくはない。
それに大事なのはなぜヘルハウンドがここにいるのかではなく、あれの主な攻撃手段が魔法だということだ。
そして魔法相手なら、私にも勝機がある。
「くそっ、剣なんて扱ったことが……あれ、なんか身体が勝手に反応するぞ」
そんなアホっぽいことをいいながらも、私の要望通り自称勇者は魔物の注意を引きつけてくれていた。
そして私は精霊の眼をつかって、ヘルハウンドの魔力の流れを追い続ける。
「いつまで俺はこれを引きつけてればいいんだ!」
「もう少しです、つぎにそいつが魔法攻撃を行うまで待ってください!」
そしてついに、いつまでも捉えられない獲物に業を煮やしたのか、ヘルハウンドの口に魔力が集まり始めた。
「きた」
私は狙っていたタイミングの到来に、地面を蹴ってヘルハウンドの前へと踊りでる。
「お、おい! 何をする気だ!」
となりで自称勇者が慌てた声を上げているが、気にせず魔力を貯めているヘルハウンドの口の中に手を突っ込んだ。
「私の眼は魔力を観測できる。そして、観測できるなら干渉だってできる!」
私の魔力で暴走させられたヘルハウンドの魔法が、おかしな方向を向いて暴発する。
自分の魔法で貫かれたヘルハウンドは、一瞬びくりと身体を震わせると、静かに地に伏せた。
「はぁ……。やればんとかなるものですね」
そう言って私は焼けただれた自分の手をヘルハウンドの口から抜き出す。
「その手……」
痛々しいものを見るように、自称勇者が私の手を見つめる。
「あぁこれですか。私は魔力が極端にすくないですからね。魔法に干渉するにはゼロ距離で触れるしかないんです。ま、すぐに治療してもらえるので気にしなくて平気ですよ」
保健室の先生にはまた怒られそうなのでそれだけは憂鬱だが。
「その、ダメ魔法使いとかいって悪かったな。助かったよ、えーとリナリスだっけか」
「私こそ、あなたに時間を稼いでもらわなければ今頃黒焦げだったでしょう。名前くらいは聞いておきましょうかね」
そう言って私はちょっとだけ信じてある気になった勇者に対して向き直る。
「俺の名前はヒグチ・ユウマ。ユウマってよんでくれ」
「私はリナリス・クレールです。まぁこれも何かの縁でしょう。街で会ったら挨拶くらいはしてあげますよ」
そう言ってともに戦いを切り抜けた私たちはがっしりと握手を交わした。




