表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/20

2-7

「おぉ、これが亜龍ですか。実物を見るのは初めてですけどなかなか迫力ありますね」

「だからなんでそんな冷静なんだよ!? でかいトカゲが空飛んでる!?」


 正門付近では、予想通り群れからはぐれたと思われる亜龍が2匹暴れまわっていた。


「せっかくここまできましたが、やっぱり私たちが手を出す必要はなさそうです」


 街の警備兵とギルドの残存戦力が力をあわせ、亜龍を街に入れないよう徐々に弱らせていっている。

この調子なら街に被害が出る事もなく討伐されるだろう。


「……なぁ、俺今亜龍と目があった気がするんだけど」

「何あほな事言って……、なんかめっちゃこっち見てますねあいつ」


 冒険者たちの攻撃に翻弄され逃げ惑っていた亜龍だったが、そのうち一匹が急に自分の体が傷つく事すら気にせず、こちらの方へ向いてきた。


「あ、これはやばい奴な気がします。狙いはユウマみたいなので私から離れてください」


 そういって標的にされてるらしいユウマから全力で距離をとろうとしたが、うしろからガシリと肩をつかまれてしまう。


「なぁ、俺たちパーティメンバーなんだよな? パーティメンバーは助け合うものだろう?」

「はなしてください! こ、この短期間で無駄に力だけはつけましたね、全く手が解けない……!」


 私が肩にかかったユウマの手を必死に振り払おうと格闘している間に、翼竜はついにこちらへと突っ込んできた。


「わああああ!! とにかく、とにかくここはまずいです! まずは街の外に出ますよ!」


 このままでは街に被害が出てしまう。

遮蔽物のない平地で空から攻撃できる亜龍を相手にするのは大変だが、幸いここには他の冒険者たちもいる。


「よしわかった、リナリス、しっかり掴まってろよ」

「は、え、一体何を」


 急にユウマに抱きかかえられ、ふわりと体が浮く。


「フライリープ!」

「ぐえっ」


 ユウマがスキルを使い、地面を力強く蹴って空高く飛び上がった。

その衝撃で思いっきり私のお腹が押され、何かがこみ上げくる。


「わあああああああ!!」


 どんどん離れていく地面を目にし、知らずと叫び声が漏れた。

ユウマは街を囲う壁を飛び越え、こちらへ向かってくる亜龍と一瞬交差する。


「ライトニングエンチャント!」


 すれ違いざまに剣を引き抜き、雷魔法を付与した剣で切りつけた。

ぐらりと亜龍の体が傾き、街に入る前に地面へと落ちていく。


「どんなもんだ!」

「これ一人でやればよかったじゃないですか!? なんで私まで連れてきたんですか!?」


 ろくに魔法も使えない、機動力もない私など格好の餌食だ。

こんなところに連れてこられたらたまったものじゃない。


「いやなんか咄嗟に……。まぁ俺が守るから大丈夫だよ」

「すでに私のお腹はあなたのせいで大ダメージをおってますけどね」


 着地の衝撃で再びお腹に衝撃を受けた私は、きっとユウマを睨みつけながら

も、剣に付与された雷魔法に魔力の断片を打ち込む。


「サポートは任せてください! あいつはまだこっちを狙ってますよ!」


 冒険者たちからは手を休めることなく魔法や矢が打ち込んでいるが、亜龍はボロボロになるのも御構い無しに、こちらへと向かってきた。


「ユウマ、あの亜龍になにかしたんですか? 尋常じゃない執着心みせてますけど」

「知らないよ! あれか、さっきトカゲっていったからか?」


 と、そんな話をしているうちに私の眼に亜龍の口に集中していく魔力が映し出される。


「ユウマ! ブレスがきます! 構えて!」


 任せろとばかりにユウマは私の前に立ち、真正面から私の魔法で更に強化された剣で飛来するブレスを切りつけた。

爆煙と爆風が巻き起こり、思わず私は目を瞑る


「……きゅう」


 そして、私が目を開けると目の前でユウマがところどころから煙を出しながら倒れていた。


「ユウマあああああ!!」


 どうやら気絶しているようで、うんうん唸りながら地面に這いつくばっている。


「ちょっとユウマ、何寝てるんですか!? 私を守るんでしょう!?」


 揺さぶってみても全然反応しない。

亜龍は倒れたユウマをみて満足そうにしていたが、私の存在に気がつき、ついでとばかりに襲いかかってくる。


「まずいまずい、これはまずいですって!」


 使える魔力はブレスの残存魔力くらいだが、制御下に置く前に食われるのがオチだ。

恐怖で頭が真っ白になりかけるが、そんな私の目を覚まさせるかのように聞きなれた声が鳴り響いた。


「エクスプロージョン!」


 爆音とともに亜龍の頭が爆風に包まれ、その体を地面へと大きく傾ける。

その背後には、杖を構え荒い息を吐いた、私の唯一の友達が立っていた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ