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「リナリス、人に物を頼むときに魔法をうっちゃいけないって学校で教わらなかったのか」
「むしろ学校では魔法で脅せば大抵の人はお願いを聞いてくれると習いました」
悪びれもなくそうのたまうリナリスに、つぶれちまえそんな学校とユウマは毒づいた。
「それで、なんで急にパーティに?」
「私最近修行不足を痛感する出来事がありまして。それでちょっと経験をつみたいなと」
このまま真っ当に学校に通っていたのでは、冒険者になる頃にはクレアに大きく差をつけられてしまう。
それはなるべく避けたいところだった。
「私の有用性は十分理解していただけていると思うのですが!」
「うーん、まぁ確かにリナリスがいるといろいろ助かるんだが……」
やっぱり攻撃力も必要だしな? とユウマに言われてしまった。
「ぐっ、人が気にしていることを……! わかりました、もう一つ私の力をみせてあげましょう。ユウマは勇者と呼ばれるくらいですし、付与魔法は使えますよね?」
「付与魔法は覚えたてだけどなんとか使えるぞ! あれ便利だよな!」
付与魔法をようやく覚えた程度の勇者って、勇者として大丈夫なのだろうかとちょっと不安になる。
まぁ明確な敵がいるわけでもないのでいいのだろうか。
「それなら都合がいいです。というわけで、少し街の外までついてきてもらえますか」
外に出るならついでに依頼を受けるということなので、定期的に街周辺で繁殖する巨大スライムの討伐をすることとなった。
草原をびよんびよんと跳ねているスライムを眺めながら、私とユウマは戦う準備をする。
「さて、それじゃあ付与魔法を使ってみてくれますか?」
私がそういうと、ユウマは自分の剣に手をかざし魔法を唱えた。
「ライトニングエンチャント!」
ユウマの剣を紫電がまとい、バチバチと音を立てて光り始める。
「やったぞ、それでどうするんだ?」
「まぁ少し待つのです。フラグメント」
ユウマの剣に私は魔力の断片を打ち込み、本来武器に魔法の力を宿すだけの付与魔法を、自分の制御下においた。
「ちょっとそれでスライムの方に近づいて突き刺してきてみてください」
「何も変わったようには見えないんだけど……」
怪訝な顔をしながらも、討伐対象である巨大スライムにユウマが立ち向かっていく。
そして、図体がでかい割に動きが鈍いスライムに、紫電をまとったその剣を突き刺した。
その瞬間、剣から幾つもの紫電が伸び、スライムの体の中からその体をズタズタに引き裂く。
驚いてこちらを振り向いたユウマに、私はふふんと自慢げに胸を張った。
「す、すごい。これリナリスがやったのか?」
「えぇそうですよ。どうです? なかなかの物でしょう」
基本的には、付与魔法のように一度使ったら固定されている物に対しては、私のフラグメントは相性がいい。
こういった形でならもしかして誰かとパーティを組んでも役立てるのでは? というのを少し考えていた。
ユウマの反応を見る以上、どうやらなかなか悪くないようだ。
「すごいな、これ普通に付与魔法使うよりはるかに強力じゃないか」
「まぁ普通付与魔法って、剣撃の威力をあげるくらいにしか使えませんしね。魔法としての柔軟性は比較にならないと思いますよ。斬り漏らした敵なんかも、私が処理してあげられますし」
もっとも、相変わらず私自身は何もできないので戦うのは主にユウマとなってしまうのだが。
「うーん、これなら確かにパーティ組んでもいいかもな。その眼もすごく助かるし」
「でしょうでしょう、ユウマは見る目がありますね」
まぁ、これは現在ユウマが一人で活動してるから提案できる案だ。
さすがに付与魔法を同時に制御するなんて芸当はできないので、対象にできるのは一人、複数人いるパーティなら普通の魔法使いと組んだ方がはるかにマシだろう。
「わかったよ、俺とリナリスの仲だしな! これからよろしく頼む!」
「一応言っときますが、私とあなたには何の仲もないと思いますよ? それはともかく、こちらこそよろしくお願いします」
そうして、私とユウマは正式にパーティを組むこととなった。