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死女神ディルシアの廃品回収 共通①


―――あたりは闇、夜の星空と月灯りの美しい神殿。

集められた数名の男が空中に浮く堂々たる一人の女を見つめた。


未知なる遭遇に畏怖するもの、その美しさに心奪われるもの、目を閉じ時間が過ぎ去るのを待つもの。


「気になるであろう。なぜ、そなたらがここへ集められたか――――」


女が口を開くと、蔦に腕を拘束された少年が暴れた。


「おい女!!とっととこれ外せよ!!」


ワインレッド髪の少年は目を血走らせ、足で床を叩き女を威嚇した。


「うるさいぞ貴様、話が進まんから黙れ」


身なりの良い黒髪の青年は腕を組み、少年を軽くにらんだ。


「君の名と僕達がなぜこの場に呼ばれたかを、教えておくれお嬢さん」


上半身は何も着ておらず腰に布を巻いただけの軽薄そうな金髪の男は女にいった。


「……では。男神のケルクナソンス、人間の王子セヴィレンス、貴族ヤーロウ。そなたら三名が呼ばれたのは他でもない」


女は彼らを見て、捲し立てる。


「……この少年王子だったのか」


ヤーロウは先程見下した相手が自分より位の高い存在で怯む。


「あのヘラヘラオッサン神かよ……」


セヴィレンスはケルクナソンスを呆れながらみた。


「そして黙ってみていた後ろのお前たち。宰相キリク、そして我が弟ディクシス!」


そういわれ、反応するのは二人の男。


「……」

「いやだなぁ姉上……美人が台無しですよ」


キリクは目を伏せる。ディクシスはニコニコと余裕で笑みをうかべた。


「私はずっと見ていた。そしてお前たちが万物神シクに仇なす危険な存在だとな」

「……アンタは何者だ!」


セヴィレンスが叫ぶ。


「――――私は死を司る女神ディルシア」


ざわざわと男達は顔を見合わせた。


「女神ディルシア、全ての生き物を気まぐれ一つで死へ誘い神すらも抗えぬ無二の存在だったとは……」


ケルクナソンスは目を見開き彼女をじっくりみた。


「セヴィレンスはドメスティック、ケルクナソンスは女好き、キリクは潔癖、ディクシスは廃棄癖、ヤーロウは私の友人の婚約破棄をした罪だ」


ディルシアが理由を話すと、意外にも自覚はあるのか男達は反論できなかった。

そして、相手が無条件で死を操るとなれば逆らえないのだと本能的に口が出ない。


「冗談じゃねぇ!!」


セヴィレンスはたった一人、彼女へ反発した。


「はい、器物破損でマイナス1だ。ポイントが100になったらもれなく地下監獄行きだぞ」

「……地下監獄には両刀使いのオカーマ様がいると聞くな」


ディクシスが思い出したように語ると、周りが震えあがった。


「私がみっちり懲罰調教……じゃなくて教育するから覚悟しておくがよい」


ディルシアは彼らを怖がらせたお詫びに親指を立てて片目をパチリとしてお茶目アピールをして安心させてやった。


「ディルシア様、連れてまいりましたよ」

「ご苦労であったなハルクヌツト」


物腰おだやか、理想の都合いい男といったような雰囲気の男神。

彼が引きずっているのは薄茶髪の男。


「コンハー=キークソン?」


セヴィレンスが彼を見てあっけにとられる。


「なんでここに第7王子が!?」


知り合いがいたことにコンハーは動揺した。


「あ、女神様先日はたすけてくださってありが……」

「貴様、よくも私の友人アミテルナの婚約破棄をしてくれたな」


ディルシアはにっこり、優しく微笑む。


「アミテルナ?」

「ああ、ハキサレーラという名になった元女神だ」


コンハーはその名を聞いて慌てる。無意識に彼女を傷つけたことを思いだし罪悪感がおそった。


「だが過ぎたことだしおかげでアミテルナには無限の可能性が広がった」

「は、はあ」


わけがわからないと皆が思っていると、突然床から筒状の何かがせり上がる。


「なんだ!?」


ガゴン、完全にそれが上まであがると中から濃紫髪の着物の男が現れる。


「……はあ」


ディルシアが辟易したようにため息をついた。


「またおまえか」


ディクシスもうんざりしたように目をそらす。


「……ディルシア早く、死んで?貴女はいつになったら、死んでくれる?」


あまりに直球すぎる死ねの言葉にディルシアはまったく動じないが周りは驚愕した。


「おい、あいつ命知らずすぎねえか?」


セヴィレンスがコンハーに耳打ちする。


「そ、そうですね」

「いやはや、彼女にそんな発言をできる者がいるとは長生きするものだな」


「ホウヨノミ、私は死なない死ねないの。だから早く黄泉へ帰りなさい」

「……わかった。死にたく、なったら、迎えにくる」


「いや、だから……」

「……絶対なんて、きっとない……生きるの嫌になったら、すぐ楽にしてあげる」


彼は筒に入り、地下へ潜った。


「ホウヨノミ……生を司る女神と黄泉の王の弟神だと下界では語られている」


キリクがいった。


「死ねはさすがにねーだろ。なんでまずあいつを懲罰しねえんだ!!」


セヴィレンスは不本意、不平等だと文句をいう。


「やつは黄泉の住民、つまりもう死んでいるのでな」


ワコクから信仰されしヤオヨルズの神における死の世界は黄泉。ヨウコクから信仰されしゴルダーンにおいては冥界とされる場。

そしてアラビンの神はデスアーラに住み死ねば死國へいく。


「死をもって償わせるのが手段なら、死んでいる相手は管轄害というわけか」



彼等を脅したが、セヴィレンスは今もなお逆らっている。

彼は死を恐れていないようで不可思議だ。


「これで、全員でしょうか?」


ハルクヌツトは私に問う。


「いいえ、まだ一人いるわ」


とっておきの、問題児が――――。



ドガガガガ――――突如、壁が大破した。


「……御前が死の女神ディルシアか!!」


曲線を描く長い黒髪の乱雑に布を巻いた装束をまとった男が怒鳴りこむ。


その姿にハルクヌツトは目を見開いた。


「いかにも……」


ディルシアは動じることなく頬杖をつきなが自らの髪をいじる。それは赤や青、黄に緑へじんわりと時間を経過するごと変化していく。


「貴様の命、このルクハヌツテが奪って―――」

「まっていたわルクハヌツテ」


ディルシアが余裕の笑みを浮かべた。


「なんだと―――」

「私の噂を流せば、女神殺しのお前は来ると思っていた」


そう、ディルシアはルクハヌツテを調教すべく捕まえるのではなくあえて自らで足を運ぶように差し向け、計画の通り招き入れた。

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