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template romance story …  作者: 篶椰
序章 落ちたのは異世界でした
8/8

第8話 語り

この世界、いや、大陸の名は〝カーオス〟。

世界に名はなく、ここが星という概念もおそらく無い。

と言うか俺にもここが星かどうかなんて分からんけど。


とにかく、この〝カーオス〟の端には〝封邪の深淵〟と言う大穴があるらしく、そこから幾百年置きに〝邪神〟...みたいな奴が出てきて、破壊と殺戮の限りを尽くすのだとか。

その〝邪神〟が生まれる経緯は省略するが、それを倒す為に〝カーオス〟には〝魔女〟と言う存在が生まれる。

逆に言えば、〝カーオス〟に〝魔女〟が生まれた時、〝邪神〟の誕生が近い...ということだ。


それがまさに今起こりえており、その〝魔女〟こそが...


「リーゼリア...という訳ですか...」

「...そうです。正確には〝蝕〟を司る〝魔女〟。複数いる〝魔女〟のうち、一般的には〝蝕の魔女〟などと呼ばれております。そして今リーゼリア様はこの街の留置所に拘束、監禁されているはずです...」

「...なるほど」


なるほど...とか言ってるけど内心はめちゃくちゃ混乱しておりますよ!

何!?やっぱりここはそう言う所なんですね!?異世界怖いぃぃぃ!?ってかリーゼリアが〝魔女〟!?〝蝕の魔女〟って俺が相当な悪人なんだな、とか思ってた奴じゃんか!?えぇぇ〜!?わけわかんねー。これ俺がどうこう出来る問題じゃねーわ...。大見得切っちゃったよ...どうすんだこれ...世界規模の問題だろ...。


「...そもそも。リーゼリアは何故捕まっているのですか?〝魔女〟という存在は言わば救世主ですよね?」

「それについては、嵌められた...と言う他にありませんな...」

「それは...?」

「お察しかもしれませんがリーゼリア様は高貴なお方です。それも、とある国の姫であらせられます」

「姫!?マジですか!?」


知らなかったとはいえ、モノホンの姫様とあんなフランクに話してたとは...ヤベェ、何か知らんけど鼻血でそう...。


「と言っても、とても小さな国で他の国に目をつけられないようにほそぼそと国を統治しておりました」

「へぇ...」

「しかし、数年前にその国の地下から貴重な古代の遺跡や今の技術では再現できない超文明の遺物などが発掘され、数多の国に注目され...いえ、狙われるようになってしまいました」

「...ほう」

「ですがその国は高い山に囲まれた場所にあったので、山が無い一方だけ警戒すればよく、発掘された古代の超兵器を手探りで使い、国を何とか守ることには成功しておりました」

「...ふむ」

「立地の悪さが国防に役立つなんて皮肉なものでございますよね。まあ、それはさておき。周りの国々の侵攻を防ぎ続け、軍隊も無いその国が疲弊してきた頃。幾度も他国を撃退した功績を重く見た他国の重鎮らが、停戦を提案してきました。実際はその国を巡って他国同士の戦争が勃発仕掛けたのが原因でしょうが、疲弊したその国にとっては渡りに船。周辺国を巻き込んで、停戦条約...建前上は和平条約を結びました。しかし、その中でも一番近く、大きい国だけは虎視眈々とその国を貶める為の策を模索していたのです」

「...」

「そして一昨年、1人目の〝魔女〟が生まれたという情報が、大陸中に広まりました。その情報がその国に伝わる頃、その国でも〝魔女〟が生まれました」

「え?リーゼリアは一昨年に産まれたんですか!?」

「...いえ、〝魔女〟はある日唐突に20歳前後の女性がなります。選定基準は未だ明確には判明しておりません」

「...そうですよね〜。ああ見えてまだ2、3歳児だったら詐欺ですよね〜」

「はあ...?」

「...すみません。続けてください」

「そうですか?では...シンジ様が言ったように救世主たる〝魔女〟が自国で生まれる事は大変名誉なことで直ぐに他国へと伝えるのですが...その国は〝魔女〟を秘匿しました」

「それは...何故ですか?」

「〝魔女〟と言うのは実は周期的に増えています。最初の〝魔女〟は1人で〝邪神〟を倒したらしいので...」

「それって...〝邪神〟が復活する度に強くなってるって事ですか...?」

「その通りです。そして新たな〝蝕〟を司る〝魔女〟が一つ前の時に生まれたのですが...その〝蝕の魔女〟が裏切り行為をして、危うく他の〝魔女〟が殺されそうになった...」

「え?つまりリーゼリアは前の〝魔女〟の風評被害のせいで公に出来なかったってことですか?」

「まあ、そんなところです。しかし、〝魔女〟と言うのは目立ちます。直ぐに他国にバレて、他の〝魔女〟を筆頭とした連合殲滅軍が攻めてきました」

「...」

「ですが、いくら何でも理由としては薄過ぎるので、某大国が何か吹き込んだのは間違いないはずですがね...」

「それで...この逃避行って訳ですか...」

「他にも色々ありましたが、大体そのような見解でよろしいかと」


じゃあ、リーゼリアは自国を失って、追手に追われながらも、必死で生きていたんだな...。

俺には想像も出来ないくらい壮絶な人生だ。というか、俺にはそんな事を思う資格もないのかもしれない。

俺に物語の主人公のような力や強い意志があれば...ここで、許せない!絶対に助けてやる...とかかっこいいセリフでも吐けたのかも知れないけど、何もない俺では...ああ、こんなネガティブな事しか考えられない自分が嫌になる...。


「それで、リーゼリア様が捕まった経緯ですが。シンジ様と別れて暫くの所で、盗賊に襲われている商隊が見えたものですから、お優しいリーゼリア様は私達に助けて来いと命令されました。路肩に浮魔車を止めて、リーゼリア様を残し、私達は救出に向かったのですが、それが失敗でした。残ったリーゼリア様をまんまと捕まえられてしまったのです」

「え?リーゼリアって〝魔女〟なんですよね?そんな簡単に...」

「それが...リーゼリア様はまだか〝魔女〟の圧倒的な力たる〝魔導〟を扱えないのです」

「...なら、なんで一人残すようなことを?」

「それは完全にこちらの判断ミスでした。盗賊の数がそれなりに多かったので、商隊に深刻な被害が出ない内に殲滅しようとしたのですが...やはり二人で行くべきでは無かった...」

「...しょうがない、とは言えませんね...」

「...はい」


リーゼリア...酷いことをされてはいないだろうか...。泣いてはいないだろうか...。今、一体何を思っているのだろうか...。


だけど...俺に出来ることなんて...。


「それで...俺にして欲しい事って...?」

「そんな顔をしなくてもよろしいですよ。何も捕まっているリーゼリア様を助けてこいとは言いませんから...」


...クソッ!ゼインさんにまで気を使わせてしまうなんてな...。

今俺は余程醜い顔をしていることだろうな。

情けなく怯えて、何も出来ない自分に怒り、その資格も無い俺は顔を歪めるしかない。


「私達は恐らく顔が割れておりますので、迂闊に行動できません。なので、どこにリーゼリア様が収容されているか、どの程度の警備なのか、などを調べてきて欲しいのです」

「...分かりました。やってみます」

「私達は暫くここにいますので、調べ終わったらまた来てください」

「はい」


俺は何だかここに居るのが苦しくなり、足早に立ち去る。

その時、ちらりと見たフードから覗くフィスさんの目が、今までで一番恐ろしく感じた。


◇◇◇◇◇


「ゼイン様。やはり、見込違いでしたね。あの様子では下手打って捕まり、こちらの情報が漏れかねません。この阻害ローブがあれば私も動けますので、早々に対処した方が...」

「なりません」


シンジ様が去るのを見送ると、直ぐにフィスが進言してきました。

確かにシンジ様は心身共に弱い。

しかし、物事を正確に判断し、他者に安易な同情をしない。その柔軟さと優しさに掛けてみたいと思うのは、私の目が曇ったからでしょうか?

いえ、私には見る目がある。それに、リーゼリア様が心を許せる方ならば...。


「私を信じては貰えませんか?あの方にはその価値が...」

「リーゼリア様が処刑されるかも知れないのにですか!?こんな時にそんな不確定な...」

「こんな時だからこそ!...です。きっと...いえ、必ず結果を残してくれます」

「...私は独自で動きます。下手は打ちません」


そう言うとフィスはフードを深くかぶると、屋根に跳躍して私の視界から消えてしまいました。


「さて...」


私もじっとしている訳にも行きませんね。

なんせ、幾ら離れていたとはいえ私達に気づかれずにリーゼリア様を攫うなど、並の人間には出来ますまい。

どうやら、厄介な事になりそうな予感です。


◇◇◇◇◇


「はぁ...」


俺は入り組んだ路地裏から何とか脱出し、大通りをぼんやりと行く宛もなく歩いていた。

ぼんやりというかさっきの事を考えていたんだけどね。


大見得を切ったものの、情報収集のノウハウを毛ほども知らない事に思い至り、こんな事も碌に出来ないのかと落ち込んでいる訳です。

いや〜参った。マジでどうすんだよこれ。

颯爽と助けに行くどころか居場所も調べらんないとか終わってるわ。助けに行っても足で纏いになるだけだから行かないけども。


「...あれ?」


何も考えずにフラフラと歩を進めていると、見覚えのある道にいた。

どうやら最初の門に続くメインストリートに出たようだ。


.....そういや本来の目的はハンクさんの所に行く事だった。

何も思いつかないし、取り敢えず討伐隊詰所にでも行くかね...って...


「あっ!」


そうじゃん!〝討伐隊〟と言えばその街の自警団的存在!(良心的なアウター or 昔の地域密着型ヤクザみたいなもの)

なら、マルクトの事も当然熟知している筈だし、何なら留置所の管理もしているかも知れない!

そうと決まれば善は急げ!

俺は突然大声を上げて、周りの人にジロジロ見られて恥ずかしくなったこともあり、一目散に討伐隊詰所へと走り出した。


気まぐれ更新です♪すみませぬ!そして読んでくれた方には感謝を!

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