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わからない 05

 まっしろなせかいにいました。


 めがさめたときにはまっしろいへやにいました。


 まどのそとだけがどこまでもあおくて、ただ、そのあおいせかいをみつめていました。


 めをさましたあと、なんにんかのひとがやってきました。


 そのひとたちはかおをぐしゃぐしゃにして、なきしました。


 ちからいっぱいだきしめて、かえっていきました。


 けがをしているひとも、ちいさなおんなのこもいました。


 けれど、そのひとたちがだれかわかりません。


 じぶんがだれなのかもわかりません。


 どうしてこのしろいへやにいるのかもわかりません。


 だから、まどをみつめることしかできません。


 なにも、なにも、なにも、わかりません。


 どうしてしろいのか、どうしてあおいのか、なにもわかりません。


「だいじょうぶ。あなたはひとりじゃない」


 ぼくをだきしめた、くろいおんなのこがいっていました。


 けれど、そのいみもぼくにはわかりませんでした。


「おはよう」


 こえがきこえました。


 まっしろなせかいにきれいなおんなのひとがいました。


 かみのけはきいろで、きているふくは、まっしろです。


 そしてまっさおなめでぼくをみています。


 なにもわからないぼくをみつめています。


「だれ?」


 きいたところでだれかはわからないのにききました。


「こいびと」


 こいびとがなにかはやっぱりわかりませんでした。


「あなたをみにきた。げんきそうだね」


「ごめんなさい」


「どうしてあやまるの?」


「なにもわからないから」


「おなじだね」


 なにがおなじかはわかりません。


 けれど、おなじなんだとおもいました。


「だいじょうぶ」


 こいびとのおんなひとがいいました。

 

 そして、まっさおなひとみでぼくをみつめています。


 なにがだいじょうぶなのかもわかりません。


「わたしがいるよ」


 ぼくはくびをかしげます。


「わたしがいるから、ひとりじゃない」


 くろいおんなのこがいっていたのは、このひとのことなのかもしれないとおもいました。


 それがわかれば、ほかのことはわからななくてもいいとおもいました。


「そろそろいくね、ばいばい」


 そういっておんなのひとはぼくにせをむけます。


「まって!」


 きがついたときにはぼくはさけんでいました。


 どうしてこんなことをしているかはわかりません。


 こいびとのおんなのひとはふりかえります。


「……なまえは?」


「わたしはみもだよ」


 そういって、まっしろなせかいからでていきます。


 さいごにおんなのひとのこえがきこえたきがしました。


「まってるからね、あるじろう」


新人賞に出した時はここで終わっていました。次の第五章以降はここに投稿する用に新規に書き下ろしたものになります。

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