爆弾事件 18
僕は人差し指を動かし未守さんに指示された通りに、タブレット端末に文字を入力していく。全てを入力し終え、決定をタップすると、『CLEAR』という文字が表示される。
「五つ目、解除成功しました」
「任務完了ね」
「はい、終わりました」
「ワシは休憩するよー」
「了解です、お疲れさまでした」
探偵ケータイの通話を切ると、広場の方から拍手が聞こえてくる。もちろんこの拍手は任務を無事に完了した僕らに向けられたものではない。
「ありがとうございました! みんなまた会おうね、ふわりんレーザー☆」
ふわりさんの声がフロアに響き、再び拍手が巻き起こる。
こうして、無事にイベントが終了した。
僕と涼季刑事はイベントを見終わって帰ろうとするお客さんで混雑する前に、一階の出入り口からショッピングモールの外へ。涼季刑事の車(覆面パトカー)が停めてある近くの路地裏へと向かう。なぜショッピングモールの駐車場ではないのかというと、何かあったときにすぐに車を出せるようにしておくためなんだとか。ショッピングモールに併設されている立体駐車場や地下駐車場は入るのにも並ばなくてはならないし、混雑時は出るのにも時間がかかる。
「一度本部に戻ってから家まで送るわ」
「ありがとうございます」
「急ぎましょう。あの赤ずきんには訊きたいことが山ほどあるわ。それに、傷をつけられた分、みっちり絞らないと気が済まない」
「磯崎刑事がいて助かりましたね」
僕がそう言うと、涼季刑事は少し俯き、またすぐに顔を上げる。
「あいつさ、たまにケーキを奢ってくれるのよ。そんなに頻繁にじゃないけど、非番が被ったときとか、誕生日とかにね」
一旦言葉を切り、再び口を開く。
「今までずっと勘違いしてただなんて、馬鹿みたいじゃない」
「……」
「考えてはみるけどさ、あいつとは仕事仲間以上にはなれないと思う」
「それでいいんじゃないでか?」
磯崎刑事はこう言っていた。『笑顔が見たい、それだけなんだ』と。恋人になれなくてもいいとも言っていた。
「そうかもしれないわね。とりあえず、あいつが回復したらケーキを奢ることにするわ」
そんなやり取りをしつつ歩いていると、ポケットの中のケータイが震え出した。取り出して確認すると、ワタさんからだった。
「電話いいですか?」
「ええ、構わないわ」
涼季刑事の了解が取れたので僕は耳元にケータイをもっていく。
「もしもし、ワタさんどうしたんですか?」
「急で申し訳ないが、探偵同好会から抜けてくれ」
「はい?」
「黒の探偵と並木家のつながりに関しては、並木家に俺から口外しない様に言っておく」
「ちょっと待ってください、何の話ですか?」
「俺は神森未守と或江米太から一切、手を引く。お前の友達をやめる」