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家出事件 21
我が家であるアオヰコーポの二〇三号室に帰ってくると、リビングに二頭のクマがいた。一頭は河部署の大男、朝見刑事である。そしてもう一頭はクマの着ぐるみパジャマ『だいちょう』を着た未守さんだ。二人はクマのぬいぐるみだらけの部屋の真ん中に将棋盤を置き、絶賛対局中。どうやら未守さんが勝っているらしく、朝見刑事は次の一手に悩んでいるようだった。
「ある、おかかー」
「未守さん、ただいまです」
僕がそう言うと、朝見刑事は将棋盤の上の駒に手を伸ばし、口を開く。
「ある君、大変だ」
「何がですか?」
「瓜丘が拘置所から脱走した」
第十章、家出事件でした。未守の生い立ちなどは第二章を執筆した後くらいにはほぼ決まっていて、ようやく物語としてお届けすることができました。次はハロウィン編です、お楽しみに。