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確認事件 05

「あるうううううう!」


 桜さんが帰った後、僕はケータイで未守さんにメッセージを送った。『会いに来ていいですよ』と。すると、一分も経たないうちに未守さんは走ってここにやってきたのである。そして、そのままの勢いで僕の名前を叫び、僕に抱き着いてきた。ここは病院なので静かにしてほしいのだけれど、数日ぶりの再会なので、これくらいは茶古先生も多めにみてくれるだろう。


「未守さん、落ち着いてください」


 そう言って僕は未守さんをゆっくりはがす。未守さんはおなじみのワイシャツに黒のホットパンツ姿。僕がプレゼントしたネックレスが光っている。未守さんはこのネックレスを、どんな時でもつけてくれているのだ。寝るときも、お風呂のときも、こないだの文化祭でセーラー服を着ていたときも、肌身離さず、ずっとつけてくれている。もちろん、僕もずっとつけているのだけれど。


「ある、だいじょうぶ? ぶ?」


「見ての通り、僕は元気です。少し昔のことを思い出しただけです」


「ある、好きだよ」


 文脈に関係なく、好意を伝える未守さん。その言葉に僕はキスで答えることにした。


 桜さんが言っていたように、この人はなんでもわかってしまう。それは昔からで、少なくともあの河部ハーメルンが起きた時にはその力は備わっていた。ということは事件の真相もわかっていたはずなのだ。自分の妹分のさっちゃんがどういう経緯で死んだのか、知っていたはずなのだ。なのに、そのことを警察に伝えることはせず、犯人達は自殺し、真相は闇の中。壊れた僕は助かり、分からず屋として普通の暮らしをし、未守さんは探偵として活躍して、いろいろあって僕らは再会を果たした。相談屋とその世話役として。

 そして、今はこうして恋人をやっている。未守さんは前から全て知った上で僕と出会い、一緒に過ごし、苦難を乗り越え、婚約までする仲になった。感情を知った今でも変わらず、こうして好きと言ってくれている。

 だから、僕が真実を知ったところで、接し方がどうのこうのなんて、今更な話なのである。だって僕の恋人は、なんでもわかってしまうのだから。

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