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炎上事件 18

 花桃さんは解決策とやらをその場では話さず、あとの二人を連れてどこかへ走っていった。


 取り残された僕はしばらく校舎内を歩き、未守さんを探した。すると、お化け屋敷の入り口で見慣れたツインテールに遭遇。


「あ、弟くん。変な格好だね」


 ゆずかちゃんである。出会い頭に変な格好と言ってくるあたり、相変わらず失礼な小学生である。


「これはクラスの出し物の衣装なんだ。あっちで縁日をやっているんだよ」


「縁日かー。後で行こうかな」


「うん、そうしてくれえると僕も嬉しいよ。ところで、ゆずかちゃんは一人できたの? 家族の人は?」


「パパとママは先に帰ったよ。今はデート中」


「デート? 誰と?」


「ゆうとくんに誘われたんだよね。で、お化け屋敷に入ろうって言われたけど、怖いから一人で行きなよって言った。だから今は待ってる」


 それは、はたしてデートなのだろうか。ゆうと君もまさか一人で入ることになるとは思っていなかっただろう。それにしても、いつのまにやら、デートする仲になっているゆうと君とゆずかちゃん。おませさんな小学生である。そして、さすが姉妹といったところだろうか。昨日、桜さんは僕とデートをし、今日は妹のゆずかちゃんがデートをしている。二人とも恋人とデートというわけではないのだけれど。


「一年前、ゆずかちゃんはゆうと君に好きな人がいるって言ってたけど、それはまだあきらめていないの?」


 一年前、僕はゆずかちゃんの好きな人が誰かは知らなかったけれど、四月に桜さんと出会った際、それが王子様だと知った。王子様とは僕の姉の事である。


「王子様のことはあきらめたよ。全然日本にいないし、わたしのこと子供だと思ってるしね。追いかけるだけの恋より、そばにいて、自分のことを好きでいてくれる人の方がいいのかなって最近は思ってる」


 小学生とは思もえない恋愛観である。桜さんは未だに僕のことを追いかけてくれているようだけれど、それは叶わない。僕には恋人、いや婚約者がいるから。けれど、妹のゆずかちゃんは王子様をあきらめ、前に進みだした。桜さんにもいつか、そんな日が来るのかもしれない。


「ゆうと君にもチャンスが来たんだね」


「まだわからないよー。わたしの恋人になる人はきっと大変だろうし」


「そうかな?」


「そうだよ。わたし胸小さいし」


「それはこれからだよ。ゆずかちゃんはまだまだ成長するよ」


「やったっぴー」


 胸がないといえば未守さんである。年に一度の文化祭、せっかく未守さんが来ているので、僕も恋人とデートしてみたいのだけれど、その恋人は絶賛失踪中だ。


「ゆずかちゃん、未守さんのこと見なかった?」


「見てない。みもちゃん来てるの?」


「うん。だけど見失っちゃって。見つけたら僕のケータイに連絡してくれる?」


「りょぷかでーす」


 頷くゆずかちゃん。僕はゆうと君を待つなら出口で待った方がいいと言って、その場を後にした。

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