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炎上事件 16 九月十四日 日曜日

 文化祭二日目、今日は一般開放される日だ。文月高校の文化祭はこの辺でも有名なお祭りなのでたくさんの人が来る。もちろん、受験を控えた中学生や、生徒の家族や友人もたくさん来る。出し物は同じ内容でも、一日目とは比べ物にならないくらい盛り上がる。


 僕は朝から教室で子供の相手をした。別に僕が迷子センターの係になったわけではない。ミニ縁日の当番をやっていただけだ。昨日が嘘だったみたいに、朝からお客さん(主に子供)が次から次へと僕らの教室にやってきた。僕は普段からゆずかちゃんの相手をしているので、子供たちとは仲良くやれた。おかげで他の当番の人よりも多く働くことになってしまった。


 そんな当番も終わり、僕は昨日と同じように法被姿のまま、模擬店にお昼ご飯を買いに行く。


 廊下は生徒とお客さんが行ったり来たりしていて、普段の学校と同じ場所かどうか疑うくらいに大盛況だった。生徒はクラスTシャツや劇の恰好をしているし、お客さんも見慣れない制服やコスプレしている人、さらに二年生のどこかのクラスがフェイスペインティングをやっているので、かなりの人の顔がペイントされている。つまり何が言いたいかというと、ここは学校なのかと疑うくらいに多種多様な人であふれかえっていた。


 模擬店のテントが並ぶ一角に来ると、人の量は校舎内よりも各段に多かった。七夕祭りに比べればまだマシなのだけれど。それでも、長蛇の列ができている店舗もある。


 僕は人をかき分け、ハンバーガーを売っている店舗を目指す。昨日はオムそばだったので、違うものをたべようという趣旨である。それに、今年はハンバーガーが美味しい、と噂になっていた。その噂は昨日、桜さんとクレープを食べているときに聞いたものだ。さすがに夕方にハンバーガーをたべるわけにはいかなかったので、今日のお昼に食べようと決めていた。


 ハンバーガーの列に並んでいると、向かいの店舗に見慣れた金髪を見つけた。


「山盛りポテト、山盛りください!」


 そう言って飛び跳ねる女性は金髪のショートカットにセーラー服。僕の耳が正常であればこの声は未守さんのものである。背格好も髪型も、彼女そのものだ。ただ、僕は未守さんが文化祭に来るなんて話は聞いていない。未守さんは文月高校のOGでもあるので、来ていても何の不思議もない。けれど、僕が家を出たとき、彼女はぐっすり眠っていたのだ。きっと眠りについたのは朝方だ。つまり何が言いたいかというと、昼夜逆転生活の人が文化祭にいるなんておかしい、ということだ。というか来るなら教えてほしかった。


 ちなみに、文月高校の女子の制服はセーラー服ではない。よって、コスプレということになる。いや、二十歳の人が制服を着ていたら、それがどんな制服だろうとコスプレなのだけれど。

僕はハンバーガーを一旦諦め、フライドポテトの店(看板には歴史ポテトと書かれている)へ行く。


「未守さん」


「ある! やっほー。来たっぴよ!」


「来るなら言ってくださいよ」


「あり? 言ってなかったっけ?」


「山盛りポテト山盛り、おまち!」


 アフロの店員さんがポテトを未守さんに差し出す。


「おおおお! 山盛りだー」


 受け取ろうとする未守さん。しかしアフロさんはポテトをひっこめる。そして彼女を真っ直ぐ見つめ、「おのの?」と質問する。それに対して勢いよく「いもこ!」と答える未守さん。それを聞いてアフロさんは頷き、ポテトを未守さんに渡す。


 歴史ポテトってそういうことか。いや、小野妹子の『いも』はポテトの『芋』ではないのだけれど。


「みもたろうはポテトをげっとした! 冒険に出かける! じゃあね、ある」


 そう言って未守さんは「すたこらさっさー」とどこかへ走っていった。

 僕は彼女の後姿を見送ってから、再びハンバーガーの列に並んだ。


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