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炎上事件 08

 急いで帰ってきた僕は、急いで晩ご飯を作っていた。具材とたれを入れて炊くだけの釜めしをセットし、味噌汁を作り、鮭を焼いていく。


 なぜ急いでいるかというと、未守さんに放火のメッセージを伝えるためである。本当は帰ってきてすぐに言いたかったのだけれど、今日はゆずかちゃんが遊びに来ていたので、そうもいかなかった。小学生のゆずかちゃんがいる前で物騒な話はできない。というわけで、僕はゆずかちゃんが帰るまでの間、先に晩ご飯を作っておくことにしたのである。僕が料理をしいる間、未守さんはゆずかちゃんとゲームをして遊んでいる。


 そして、だいたいのものを作り終え、あとは釜めしが炊き上がるのを待つだけになったところで、僕はリビングへ行き、ゆずかちゃんに声をかける。


「ゆずかちゃん、今日は暗くなる前に帰った方がいいよ」


 ゆずかちゃんはコントローラーを握ったまま、無言でうつむく。


「ゆずかちゃん、どうかした?」


「……ゆうとくんって覚えてる?」


 ゆうと君とは、ゆずかちゃんと同じ小学生で、一年ほど前にゆずかちゃんの給食袋に牛乳瓶のフタを大量に入れた子だ。その行動はゆずかちゃんのことが好きだから行ったもので、その後、ゆずかちゃんは別に好きな人がいるから、と言ってふっていた。その、ゆうと君だ。


「うん、ゆうと君がどうかしたの?」


「最近様子が変なんだよ、寝てばっかりでさ。授業中もずっと寝てるし、なんかおかしい。ねえ、みもちゃんはどう思う?」


 ゆずかちゃんは隣に座っている未守さんの方を向き、質問を投げかける。それに対し未守さんは「んー」と言いながら天井を見上げる。そして、「あと何日かしたら元に戻ると思うから、大丈夫だよ」と言った。


「ほんとに?」


「ほんとでござる」


 一体なんの根拠があって大丈夫と言ったのかはわからないけれど、未守さんがそう言うのなら、間違いないのだろう。ゆずかちゃんは安心したようで、その後、すんなり帰ってくれた。


 玄関でゆずかちゃんを見送った僕はリビングに戻り、まだゲームをしている未守さんの隣に座った。


「未守さん、放火犯が次に火をつけるのって今夜ですよね。捜査の方は何か進展ありましたか?」


「ういー」


「未守さん、未守さんならわかっているんでしょうけど、放火現場の地名がメッセージになっていて、そのメッセージから推察するに、一件目の死亡者は火災に巻き込まれたのではなく、殺害された可能性があります。そして、犯人はまた誰かを殺そうとしています」


「ういー」


「そして、そのメッセージから、今夜火がつけられる場所も特定できます。まだ犯人を捕まえられてないのなら今夜――」


「やりたいようにやらせてあげることにした」


「え?」


「死人は出さないから安心して。警察にもまだ言っちゃダメだよ。あるは文化祭、がんばってね」


 そう言って未守さんは引き続きゲームをする。僕は立ち上がり、夕食の準備を再開することにした。

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