魔法使い転生
魔法使い怖い、野放しなんてありえません!
異世界には異世界の歴史がある。
木暮厚志は強大な力を持つ魔法使いとして異世界に転生した。
この世界において魔法使いの存在は希少で、魔法の力はまさに万能の感があった。しかし、厚志は王国で頭角を現すうちに、よくよく思い知ることになった。
厚志の仕える王国に限らず、この世界では過去に魔法使いによる大きな災厄が繰り返されていた。古くには魔法使いが権勢を振るい、人々を奴隷のように支配したこともあるとか。その為に今では、魔法使いや魔法に対する対抗策が充実している。まさに、苦難は成長の機会である。
異世界には異世界なりの歴史がある。如何に木暮厚志が力ある魔法使いであったとしても、王国にとってそれは脅威ではない。反逆など画策しようものなら、あっという間に暗殺されるだろう。権力者からすると、魔法使いは便利な道具以外の何でもなかった。
「山にトンネルを通す工事は順調かな?」
「大きな岩盤があって、それの除去を行っているところです。ええ、安全対策も計画しています」
監視役でもある上司に、一昨日徹夜してまとめた書類を説明する。一刻ほど計画について話し合うと、上司はやっと納得したようだ。
「来月には西の台地の開拓が始まる。そちらの方の計画もまとめておいてくれ」
仕事を終えて家に帰ると、内縁の妻が迎えてくれる。妻は二人の子供を産んだが、家にはいない。
魔法使いの子供は魔法使いになりやすいらしい。魔法使いを無暗に増やさない為、魔法使いの結婚は禁じられている。表向きは。実際には女を宛がわれ、子供は国によって管理される。
厚志は小さくため息を吐くと、王城の空に浮かぶ月に、己と我が子の行く末を案じるのだった。