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異世界ニート達の挽歌  作者: ななつかたばみ
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貴族転生

宮仕えは辛いものです。


 若く優秀と評判の騎士、エノクには誰にも話したことのない秘密がある。それは前世の記憶だった。

 地方の小領主の嫡男である彼は、幼少から異才を発揮し、領内の様々な発展に貢献した。彼の功績は偉大である。リバーシ、チェス、といったゲームや、新しい水車、農法など、発明発見したものには限りがない。また騎士として剣術の研鑽にも余念がなかった。

 周辺の領地を治める貴族達は警戒し、その才能を妬んだが、それぞれの領地への利益も多大であり、それを歓迎した。エノクは王国の寵児と持て囃された。


 エノクはそうした才能、つまり前世地球での記憶を慎重に運用していたが、上がるばかりの評判に慢心もあったのだろう。陰謀は静かに彼の足元に影を落とした。



 エノクには誓いあった恋人がいた。隣の領主の娘で、美しく賢い姫だった。名をリディアといった。エノクが望めば大領の貴族との縁組もできたのだろうが、彼にはそのつもりは微塵もなかった。それだけ彼女に対する愛が深かったのだ。



 エノクが仕える王もまた賢王と名高い。しかし、王には一つの困った癖があり、それまでも小さな問題がいくらかあった。無類の女好きなのである。

 エノクが騎士として、隣国との小競り合いから帰ってくると、すでに事態は手遅れだった。愛するリディアは、王の後宮へ入ることが決定していた。エノクは方々を駆け回り、なんとか撤回するように求めたが、無駄だった。


 リディアの父、隣の領主は申し訳ないとエノクに深く頭を下げ、しかし王の威信にも関わる、と諦めるように言う。そしてリディアは涙を流して、エノクへの愛を誓い、しかし彼と父の為、王の元へ行くと言った。



 エノクは失意のうちに諦めざるを得なかった。二月の後、リディアの妊娠の報を聞くと、彼の失意はますます深くなり、酒に溺れるようになった。西国より取り寄せた薬に頼るようにもなった。


 やがて、エノクは新しい噂を聞く。リディアが死んだというのだ。死産で体を壊し、床に伏せるうちに王の寵愛を失い、そしていつしか医者も通わなくなったらしい。

 また、リディアの後宮入りが、エノクへの嫌がらせを目的とした貴族達の陰謀だということを知る。



 彼はもう己を抑えることはできなかった。この新しい人生でやっと掴んだと思った幸せなのに、それを奪うのか!


 王宮へ剣を振りかざし突如乱入した一人の騎士を止めるために、十八人の死者が出た。遂にはエノクの剣の師が、彼に止めを刺した。

 始終エノクは、リディアを返せ、と繰り返し叫んでいたという。


貴族達の陰謀というのは、リディアの父は関わっていません。

他の貴族達の寄り親である大公の一人が王にリディアを口利きしたとか。そんな感じ。

リディアの死の部分について少し改変。

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