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異世界ニート達の挽歌  作者: ななつかたばみ
2/8

ゲーム世界転移

こういうのも一種のダークファンタジーだと思ってます。

 気付いたらゲームの中にいた、と言うしかなかった。


 それは彼、新居浩二が遊んでいたオンラインゲームとそっくりに似た世界で、後に彼はそれが似た、どころではないと言うことを嫌というほど知ることになった。

 ゲームと同様にステータスを見たり、道具を異空間に収納したりできる。パソコンで操作するのとは違ったが、すぐにそれらの操作に習熟することができた。不思議な感覚だ。



 「浩二、こんにちは!今日これから森に狩りに行くんだけど、一緒にどうかな?来てくれると心強いんだけど」


 話しかけてくる彼女は、この世界に転移してから知り合ったヒーラーだ。これまでも何度もパーティーを組んでいて、互いに信頼しあっている。浩二はレベル99のタンカーでパーティーの構成に欠かせない役割だった。


 レベル99はこの世界の人間が到達できる最大の強さだったが、それ自体は珍しくない。というよりは、大抵の人はレベル99なのだ。


 「勿論いいよ、これから?」

 「みんなまだ集まってないから、あちらでお茶でも飲みながら待ちましょう」



 ゲームには料理や、飲食などの微細な動作が設定されていて、それもこの世界では再現されている。彼女――レシアという名前だ――と、街角に備えられたベンチに腰を下ろし、彼女が異空間から取り出したお茶を受け取る。お茶にはまだ手を付けずに、これから集まると言う仲間を待ちながら他愛もない世間話をする。


 率直に言って彼女は美人だ。もっともこの世界の冒険者は男も女も大概美人なのだが。しかし、かつてディスプレイ越しに眺めていたキャラクター達とは異なり、自分自身の目で見ると、また違った感慨を受けるものだ。僧服を盛り上げる胸が眩しい。


 が、浩二はレシアとの世間話をしながら漠然とした不安を感じていた。レシアとの関係に不安はない。出会ってまだ一か月ほどしか経っていないが、二人は周囲から似合いのカップルだとよく冷やかされている。多分、そのうち結婚とかするんだろう。

 この世界での生活にもそれほどの不安はない。この世界では飢えないからだ。睡眠も必要ないようだ。汗もかかないから風呂に入る必要性さえない。ただ生きるだけならお金は必要ないのだ。第一死んでも生き返る。

 では何が不安なのか。


 浩二と違って、レシアや他の、おそらく全ての冒険者は、転移者ではない生粋のこの世界の住人だ。だから彼らは気付かない。浩二は気付いた。

 例えば、鎧や服を脱いでも、下着を脱ぐことは出来ない。

 例えば、劣情から彼女の胸を触ろうとしても、何故か触れない。体がそれ以上動かないのだ。キスやハグは出来たのだが、それはもともとゲームで機能として実装されていたからだろう。

 例えば……。

 

 「みんな来たようね」

 いつの間にかいつもの仲間が集まっていたようだ。手に持っていたお茶を飲む。……いつものことだが、味はしない。代わりに多大な薬効がある。

 「じゃあ、いきましょう。今日も大猟だといいね」

 

 レシアがほほ笑みながら、こちらに手を伸ばしてきた。その手を握りながら思う。

 今はいい。まだ、飽きてない。でもいつか。この歳を取ることも、死ぬこともできない世界で、いつまで俺は……。


死ぬこともできないと書いたけど、実際には死んでも生き返る、ですね。

個人的にはホラーの域。絶対体験したくないです。

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