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「うおぉぉ…………何処だか分からないんだったぁぁぁ……」


1歩を踏み出した途端頭を抱えた。


現在地森の中。


囲むように木があって獣道すらない。


しまいには方角すらわからない。


回りの木が高すぎて太陽が見えないんだよ。


ってかなんで木が高さ50メートルもありそうなくらいでかいわけ?


さっすがファンタジーだわ。


だから、けっして俺が小さいというわけではない。断じて。


最初っから詰んでるよ……


ってか、勢いよく歩き出そうとしたのにカッコ悪い……恥ずかしっ!!


「どうしよ……神頼みにするか?」


というか、それしかないか。


連理の杖を地面にたてる。


すると俺から見て左に倒れた。


「よっし、行き先は決まったな」


連理の杖を拾って左の方向へと歩き始める。


草が鬱蒼と生い茂ってるが、掻き分けながら進む。








しばらく歩くと、ピンッと直感的なものが気配を感じとった。


何かが群れで来ると。


その方向に体ごと向けて目を凝らす。


目が良くなっているのかかなり遠くまで見れるが、木々が邪魔でまだ見えない。


俺が向いていた方向を北とするならば、北西から、数は…………6か。


移動速度はかなり早い。


でも空を飛んでるにしては高さが低い。


ということは、木の枝から枝へと渡ってるらしい。


魔物か!?


どう対処しよう!?


逃げる、は移動速度的に無理そうだ。


戦う?


なら、どうやって!?


「…………ッ!?」


決めあぐねているうちに囲まれたッ!


自分の判断の遅さが恨めしい!!


仕方なく隙を作らないよう構えながら、目を周囲へと向ける。


一匹ずつ6方向に約20メートルの距離。


様子見をしているのか、そこから動いていない。


移動速度的にこの距離なら2秒かからないくらい。


ッ…………


どうする?


初手で風魔法をぶっぱなして脅すか?


たぶん、魔力を込めれば6方向全てに初手で魔法を放てる。


避けられるかもしれないけれど、半数は殺せるだろう。


気配の消し方的にもそれほど強くはないだろうし。


そうしよ――――ッ!?


気配が俺に向かってくる!!


遅かったッ!!


クソッ!!


自分の甘さが嫌になってくる!!


こうなれば近づかれる前に一匹でもッ!!



「風よ矢になりて敵を射よ『風の矢』」


不可視の風で出来た矢が1本眼前を飛んでいく。


木々の隙間を抜け丁度その場に現れた敵に突き刺さる。


弾かれるようにして落下していく敵。


見えた限りでは、四本腕で猿のような魔物だった。


かなりの高さから落ちたので、もしまだ生きていても落下の衝撃で死んでるはず。


「キキィィィ!!」


仲間が殺られたためか叫びながら背後に飛びかかってくる!


「気配がバレバレなんだよッ!!」


振り向き様に魔力を纏わせた連理の杖で横薙ぎをして迎撃をする。


バキッ!という音が打ち据えた四本腕猿から聞こえ、まるでボールのように飛んでいきドシャ!という音とともに木へとぶつかった。


チラッと見てみると何かに踏み潰されたかのように物になっていた。


「うっ……」


あまりにもスプラッタな状態に胃から何かがこみ上げてくるが、なんとか飲み込む。


今そんな隙を作ったら死ぬから。


「キキッ!?」


仲間のスプラッタを見たからか襲いかかろうとしていた四本腕猿は襲いかかろうとしていた体を急制動させる。


魔法を使うチャンスだ!!


「風よ舞え!幾十幾百の刃となりて!!凶音をあげて踊れ!憐れな観客に叫喚をあげさせろ!!『狂乱の風』!!!!」



何十何百もの10センチ程の風の刃がそれぞれの四本腕猿に向かって襲いかかる。


「キキッ!?」


慌てて四方に逃げようとするが時既に遅し。


四本腕猿たちは周囲の木々もろともミキサーにでもかけられたかのように粉々となった。


肉片や血飛沫で辺りを赤く染めて。


「うえっ……………」


リアルにグロを見て吐きそうになるも、何とか飲み込む。


気持ち悪い。


今回はたまたま相手が弱かっただけ、これがもっと強い相手だったら死んでた。


それか、フェルテルのスキルが俺に継承されてなかったら。


考えただけでもゾッとする。


油断大敵。


ちゃんと胸に刻み込んでおかないと。


日本なんて安全な世界で生きてたから、警戒心が足らなさすぎるな。


だから、通り魔なんかに殺されたんだ。


もう死ぬのはこりごり、教訓を生かさないと。


母さん曰く、一度失敗してまた失敗する奴は死ねばいいらしいから。


手厳しい。


「すぅ……ふぅ……」


深呼吸をして息を整え、最初に倒した四本腕猿のもとに向かう。


一応、食料になるかもしれないし、試してみたいこともあるからね。


落下したであろう場所に向かうと頭にポッカリ穴があいている四本腕猿がいた。


そういえば、こいつってどんな名前なんだろ――――


『フォーハンドエイプ

《所持スキル》集団行動』


「うわっ!?」


突然空中に文字が現れ、無機質な声が聞こえたことに驚いた。


キョロキョロと見回すけど誰もいない。


気配もない。


何だったんだ――――って鑑定ってスキルしかないか。


フェルテルの記憶には空中に文字が現れて無機質な声が聞こえる、とかなかったからびびったよ……


それにしてもフォーハンドエイプって言うのか。


そのまんまだなぁ。


とりあえず、試したいことを試しますか!


フォーハンドエイプに触れてアイテムと念じてみる。


何もおこらない。


「んー?

アイテムって書いてあったからてっきりアイテムボックスのことかと思ったんだけどなぁ……」


フェルテルは持っていなかったらしいけれど、この世界にはあるらしいんだけど。


違うのだろうか?


もしフォーハンドエイプの死体を収納――――


「うえっ!?」


しようとしたら、突然フォーハンドエイプの死体が消えた。


まさか?


「ウィンドウオープン」

スッと出てきたメニュー画面からアイテムのところをタッチ。


するとフォーハンドエイプの死体と書かれた項目があった。


収納と思えばしまえるのか?


だったら、フォーハンドエイプを出す――――


ドサッ


にはどうしたらいいのだろうかと思った瞬間フォーハンドエイプの死体が目の前に。


出すって思えば出せるのか?


なら、収納。


「あれ?」


依然俺の目の前にあるフォーハンドエイプ。


収納って思えば収納されるんじゃなかったのか?


1回はフォーハンドエイプを収納――――


シュンッっと跡形もなく消え去るフォーハンドエイプ。


「……………」


1回目、3回目と2回目に何か違いがあったか?


フォーハンドエイプを収納しよう――――あっ!


1、3回目はフォーハンドエイプを収納しようと思って、2回目はただ収納と思っただけだ。


つまりは何を収納するのかを明確に思わなければいけないのか!


納得した。


となると出すときもたぶん同じだな。


さて、疑問も解決したことだし、先に進もう……


早く街や村、せめて道に出ないかなぁ……


身体能力が高いからか、あまり肉体的な疲れは感じないものの、面倒だし、飽きるし、一応は警戒してる歩いてるから精神的に参ってくるんだよね……



「はぁ…………」


溜め息を残して再び向かっていた方向へと歩き出す。










「ハッ!」


気合いの声とともに魔力を纏わせた連理の杖を突きだす。


抵抗も少なく、襲いかかってきた敵――――フォーハンドエイプの頭へと突き刺さり絶命させる。


そして今度は俺の左、右、後ろの3方向から襲いかかろうとしてることを気配で察知。


連理の杖にフォーハンドエイプの死体が刺されてるまま前に踏み出し、連理の杖を横薙ぎすることで刺さっていた死体を飛ばし、そのまま体ごと捻って3方向から襲いかかろうとしてちょうどさっきまで俺がいた場所でぶつかりあってる3匹を打ち据える。



3匹は弾かれたように飛んでいき、ドシャッ!という音とともに木にぶつかり、血肉を撒き散らしながら動きを止めた。


「ふぅ……敵の気配はなし。どうせまた来るんだろうけど……」


最初の戦闘から数えて5度目の戦闘を終えて先程突きで絶命させた死体を回収して愚痴をこぼす。


他の3匹はグチャグチャになっているので回収はしない。


これでフォーハンドエイプの死体が12体もアイテム欄にはいってることになる。


加減が出来ずに連理の杖で吹っ飛ばしてグチャグチャになってしまったのもあわせて30以上のフォーハンドエイプに襲撃されたことになる。


それほどの敵を倒しても疲れもせず、無傷でいられるこの体は凄い――――のだけれど、精神的には参ってくる。


戦いでの緊張感が精神をガリガリと削るからだ。


はっきり言って辛い。


一秒でも早く休憩がとりたい。


「ちょっと先に歩いてから休むか……」


そうと決まればと歩き出す。


すぐに休みたいけれど、少し離れたところじゃないとフォーハンドエイプの血の臭いで魔物がよってくるかもしれないし…………


はぁ…………


暫く歩いて背を預けるのにちょうどよさそうな木に背を預け座り込む。


その間にも警戒は忘れない。


喉が渇いたけれど水はない。


仕方無しに考え事をしてまぎらわそう。


何を考えようか……といっても1つしかないか。


フォーハンドエイプのことだ。


多い。多すぎる。


時間感覚が既に麻痺しかけているためだいたいしか分からないが、たぶん5時間程度しかたっていないと思う。


その間に5回も…………


戦闘にならないように隠れた時もあったので、それをいれると13回フォーハンドエイプの群れを見かけてるまたは戦闘していることになる。


たまたま俺がいるところがフォーハンドエイプの縄張りの近くなのか、それとも元々フォーハンドエイプが多い森なのか。


前者なら、ヤバい。


何故ならかなりの大きさの群れだろうから。


たまたま見かけるまたは戦闘したフォーハンドエイプの数は軽く70を超える。

そんな数が餌を取りにいくなり、他の何かをしているのなら、群れの数は500にとどくのではないだろうか?


とどかないまでもそれに近い数がいるのは確かだろう。


500なら、いける気がする。


だってフォーハンドエイプ馬鹿だし。


猿のくせに馬鹿だし。


まず3方向から襲ってきて避けられたら味方同士でぶつかるって馬鹿過ぎるでしょ。


それに、隠れてやり過ごしたフォーハンドエイプの中には枝から枝へと移るとき枝から落ちて死ぬやつまでいたし。


猿のくせに。


よく集団行動のスキルがあるなって感心するほど馬鹿だ。


それに魔法があるし。


フェルテルは膨大な量の魔力を持ってる。


それこそ世界のトップクラスレベル。


まぁ、魔の法を極めた者にしか贈られない称号、魔王を持ってるんだから当たり前って言ったら当たり前。


魔王は魔王でも魔の法を極めた者なので決して世界制服する方の魔王と勘違いしてはいけない。


閑話休題。


そして俺はそれよりも3割ほど多い。


チートすぎると思います。我ながら。


そして今日使った魔力量が、連理の杖はあまりフェルテルのもつなかで強力ではないため、物凄く魔力を消費する1度目の武装召喚でも1割程度、威力を弱めていた狂乱の風では5厘程度、風の矢は雀の涙程度、2度目からの武装召喚はほとんど魔力を使わないためこれも雀の涙程度。


それももう全快している。


ぶっちゃけ狂乱の風を全魔力を注ぎ込んで使えば小さな森なら全てを塵に出きるはず。


と、フェルテルの記憶にある経験が出きると言ってる。


そのあと魔力切れでぶっ倒れるけど。

そうでなくても、たぶん連理の杖での近接戦闘で800くらいはいけるだろう。


5回の戦闘でフェルテルには及ばないものの、達人、と呼ばれるくらいの腕にはなったと思う。


それに気配察知と魔力感知をフルでやれば森のなかでも500メートル先くらいは探れるようになった。


初めは慣れてなくて接近をゆるしたけれど今はもうそんなヘマはおかさない。


それに気配遮断をして忍び足をすればかなり近くまで気づかれずに近づけるだろう。


そこから半分くらいの魔力を使って狂乱の風を放って、残党は全部近接戦闘で仕留めよう。


もし、フォーハンドエイプの巣が洞窟なら別の魔法を使えばいいし。


よっし!


かなり休めたし行きますか!


俺は立ち上がって再び歩き出した。





暫く歩くとまたフォーハンドエイプの集団を察知した。


距離は300メートル弱。


気配も魔力も数は17。


今までよりも数が多い。


殺そう。


この距離なら風の矢の有効射程圏内だ。


「風よ 拾条の矢となりて 敵を射よ『風の矢拾連』」


10本の矢が木々の間を駆けていく。


それと同時に俺自身も助走をつけて木へと跳躍してその木を踏み台にして、木から木へと跳躍していく。


森の中では木の根や雑草が障害物となる地面を走るよりも木から木へと飛び移った数倍も速いしフェルテルの身体能力ならばそれくらい可能だった。


風の矢には誘導性があるため普通なら確実に着弾するのだけれど、此処は森の中。


木々が邪魔して数本は木に刺ってしまう。


けれどもだいぶ遠くまで見渡せるようになった視力で見たかんじ4匹には命中したかな。


『キッキキッ!?』


いきなり何かに弾かれたように落下していく仲間を見て驚きをあげるフォーハンドエイプ。


正直言って、その反応はもう見飽きたんだよ!


木から木へと跳ぶ勢いはそのままに連理の杖を一番俺の近くにいたフォーハンドエイプの頭部へと突く。


何の抵抗も無しに突き刺さり絶命させ、突き刺さった死体を地面に投げ棄て木を踏み台にして体に急制動をかけて再び別のフォーハンドエイプへと飛びかかり、突き刺す。


そこでようやくフォーハンドエイプたちが俺を認識して敵であると判断した。


突き刺さった死体を地面に投げ棄て、今度は木を踏み台にして地面へと着地する。


態々、動きが限定される空中戦をするのも馬鹿げてるし。


自惚れてはいけない、それは油断だから、死に繋がるから。


生き残るためには自分の出きることのなかでより生存確率が高い方を選択しなければならない。


だから、慣れてない空中戦は駄目だ。


奇襲ならともかく。


「キィィキィィィィ!!」


「キイィィィ!!」


「キキッキィィィィ!!」


木上で威嚇をしてくるフォーハンドエイプ。


それを見据えながらも、悠然と無駄な力みなく佇む。気配と魔力を探り、何処から来られても対処出きるように。


ザァァァっと木の葉が揺れる。


来る!!


「キィィッ!!」


前から5匹。


回り込むようにして後ろから6匹が木の枝から襲いかかってくる。


うん。


なんかやっぱり馬鹿何だなぁと思った。


サイドステップでフォーハンドエイプの落下地点から退避する。


ゴツン!という音と共にドサッという音が聞こえあるフォーハンドエイプはうめき声をあげ、あるフォーハンドエイプは驚きの声をあげた。


1匹死亡の2匹重傷の4匹軽傷かな。


同士討ちのおかげでかなり楽になったね。


「ハッ!!」


声と共に踏み込んで素早く4回突きを放つ。


あっけなく無傷だった4匹のフォーハンドエイプの頭に突き刺さり絶命させる。


無傷のフォーハンドエイプが抵抗もできずに命を狩られたのに、残りの怪我を負っているフォーハンドエイプが抵抗できるはずもなく、一分もかからずにあっさりと戦闘が終った。


死体をアイテム欄に収納しようと、手を触れようとした時、あることに気がついた。


口元に血がこびりついてることに。


一瞬返り血かと思ったけれど、今回倒したフォーハンドエイプ全ての口元に血がついていた。


もしかして何かを食べた後なのかな?


そうなるとフォーハンドエイプって猿のくせに肉食なの?

まぁ、そこはどうでもいいか。


問題はフォーハンドエイプが狩りをし終えたということ。


そしてフォーハンドエイプが人を襲うこと。


もしかすると、村か何かが襲われたのではないのか?


そして、その村から巣への帰り道が俺が今歩いている方角ではないのか?




いや、考え過ぎかもしれない。


だって、何故人に限定しているの?


他の魔物かもしれないのに。


でも、あえて言うなら、胸騒ぎがする。


何か嫌なことが起こってるって。


フォーハンドエイプの死体を全て回収する。


ちょっと先を急ごう。


助走をつけて木へと跳躍してまた別の木へと跳躍して先を急ぐ。




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