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ふと、目が覚めた。


どうやら俺は仰向けで寝てたらしく、真っ白な天井が目に写った。


って、何で俺寝てたんだ?


ああ!思いだした!


黒色のパーカーを着た人とぶつかって転けたんだっけ?


うわぁ……母さんに叱られるよぅ……


前菜にお前はぶつかった人に謝ることも出来ないのかッ!!


って怒鳴られて、スープに頭に一発拳骨を落とされて、魚料理は……腹に三発?


肉料理に逆卍固めかジャーマンスープレックス、優しければラリアット。


野菜料理に膝を腹に一発……いや、二発、機嫌が悪ければ四発。


デザートはお好みで頭を両拳でグリグリと。


体罰フルコースの出来上がり!


考えただけでも顔が青ざめて体が震えてくる……


どうにかして逃げれないかなぁ……


父さんがいてくれればいいんだけど……父さん、今回の東京への旅行についてきてないしなぁ……


父さんがいればあの暴力じゃじゃ馬母さんを抑えてくれるんだけど…………


はぁ……


真っ白な天井ってことはここって病院か?


それにしては真っ白すぎだと思うが、まぁそれ以外考えられないし……


倒れた時に頭でも頭うったかな?


このまま寝ていれば母さんに怒られなくてもすむ…………いや、無理か。


母さんなら、ぶん殴って起こしそうだ。


残された選択肢は母さんが病室に入ってきた瞬間に全身全霊の土下座、後に全身全霊の謝罪、最後に見つからないだろうけど全身全霊でぶつかった相手を捜して謝ってこよう。


そうすれば、たぶんスープくらいは控えてくれるだろう。



そうと決まれば、起き上がらねば。


倒れた時に頭をぶつけてるかもしれないからゆっくりと上体を起こし、辺りを見回す。


そこには病室などではなく――――


「え…………?」



真っ白な世界が広がっていた。



少し離れたところにポツンとノートパソコンがある以外は。



「なんじゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁこりゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!?!?」


心から俺は叫んだ。


「はぁ!?なにこれ!?えっ!?えぇっ!?ここどこ!?」


おれはこんらんした。


「なんかむっちゃ広いんですけどぉぉぉ!?

いやいやいや!!広いわけないじゃないか!!

たぶんあれだな!あれだ!

壁も真っ白だから広いって勘違いしてるだけだな!!

きっとそうに違いない!!

……………ふぅ……こんなもんでいいかな?」


まぁ、どうせ夢だろうからノリで狼狽してみる。


ノリは大切。


まぁ、母さんに部屋に隠していた『獣耳少女と酒池肉林』というエロ本が見つかった時と同じくらいの狼狽っぷりにだろう。


あのときは本当に焦ったなぁ……


心臓どころか内臓全てが飛び出すかと思った。



因みに『獣耳少女と酒池肉林』は母さんによって燃やされた。

その後、イイ笑顔で母さんは笑って「おやすみ…………永遠に」と言った後の記憶がないのは気にしない方がいいだろう。


思い出してはいけないのだ。


うん。


さて、と。


マジでどうしょうか。


このままじっとして夢が覚めるのも勿体無いだろうし。


適当に動いてみるか。


少し離れたところにあるノートパソコンに目をむける。


ノートパソコンについて詳しくないからどのような機種かはわからん。


ただ白いろのノートパソコンで、すでに電源が入っているのか、「ここをクリックしてね!(はぁ〜と)」と写っていた。


胡散臭い、怪しい。


しかも何故はぁ〜とは平仮名なんだ?


記号でいいだろ別に。


後に回そう後に。


そしてこの部屋(?)


まず、広さが分からん。


部屋(?)全体が真っ白で距離感、というよりも壁がどこにあるのかわからない。


なんでこんな夢をみてるんだろう?俺は。


まぁ、夢だし、仕方ないか。


とりあえず、部屋がどのくらいの広さか歩いて確かめよう。


ノートパソコンは後にしよう。


なんか(はぁ〜と)がムカつくから。


立ち上がって、一度ノートパソコンの所まで歩く。


基点の目印くらいにはなってくれるだろうから。


画面の方を南、マウスがおいてある方を東、として考えるか。


まずはノートパソコンの背面、つまり北側に向かってあるいていこう。






歩いてみると、真っ白な光景が続き――――





ノートパソコンと遭遇した。


「……………なんでやねん」



壁に向かって歩いてたわけなんだが……


もしかして、一定の間隔にノートパソコンが置いてあったりして…………


うわぁ……流石夢だな。


とりあえず、マウスをキーボードの上に置いて今度は東側へと歩いていくと――――





ノートパソコンと遭遇した。


しかもマウスがキーボードの上に置いてある。


あー……これってループパターン?


どこに歩いてももとの場所に戻ってきてしまう、というやつですかい?


「はっはっはっ、ふざけんなっ!!」


くっそぉ!結局はノートパソコンかよ!


まぁ、いっか、夢だし。


ノートパソコンの前にドサリと腰をおろして、クリックする。


――――nowloading――――nowloading――――nowloading――――nowloading――――nowloading――――


という文字が現れて……





再生、早送り、巻き戻し、一時停止のマークが画面の下の中央に現れた。


迷いなく再生のマークをクリック。



すると、映像が写りだした。


雑踏とした市街地――――いや、見覚えがある。


俺が倒れる前に見てた風景とそっくりだ。


もしかすると――――いたっ!!


俺が。


画面の中央にいたあまり時間をかけずに見つけることができた。


しばらくすると、画面の右端、画面の中の俺の進行方向から黒のパーカーを着た人が歩いてきた。



そして、黒のパーカーを着た人と俺がすれ違い――――



振り返ろうとした俺が――――




倒れ――否、崩れ落ちた。



そこで映像がアップになり、画面いっぱいに崩れ落ちた俺の姿が映し出され――――



「…………!?」


俺は息を呑んだ。



画面の中の俺の体には何かが生えていて、何かが生えているところから赤黒い何かが止めどなく溢れて地面へと広がっていった。







そして映像は一度途切れ、別の場面へと変わる。


そこでは、殺風景な部屋に、白い布を体に被せられた青白い俺が寝ていた。


それを囲むようにして――――



寝ている俺にすがりつくようにして泣いている母さんと妹の葉月。




そんな母さんと葉月を慰めるようにして優しく二人を抱きしめながらもきつく閉じられた目からポツリポツリと涙を流す父さん。


その後ろで感情を全て無くしてしまったかのように無表情で何も写してないような目から涙を流す、幼馴染みの雪菜。

そこで映像は終わり、再びここをクリックしてネ!という文字が現れた。



なんで……なんで!!


なんで母さんと葉月がいつも通り、仏頂面してないんだよ!!


葉月は小さい頃はよく泣く子だったけど、もう泣くような歳じゃないだろ!?


母さんにしたって今まで一度も泣いたことなかったじゃないか!?


なんで父さんがいつも通り、優しく微笑んでないんだよ!?


いつも、優しく微笑みながら家族を見守ってたじゃないか!?


なんで雪菜はいつも通り、楽しそうに笑ってないんだよ!?


どんなときでも楽しそうに笑ってたじゃないか!?

なんで…………なんで…………!!







分かってる……分かってるんだ…………


本当は気づいてた。


それでも……それでも、夢だって思いたかった。


夢だって信じたかった!


夢が覚めたらいつものような一日が過ぎていくんだろうなって思ってた!!


でも、でも、それは、もう二度と起きない出来事だったんだろう。





だって俺は――――










死んでしまったのだから。









認めてしまった途端、後悔と悲しみと親より先に死んでしまった申し訳なさで目から何かが溢れて視界がボヤけた。










――――――――――――




ゴシゴシと乱暴に目元を拭う。


俺はもう、十分に泣いた。


後ろを向くのはもう終わりだ。


考えなければ、前に進まなければ、いけないから。


両親にはそう教えられたから。


「父さんは優しく、母さんは暴力的にだけど……」


そう言って少し顔がにやける。


軽口を言える。


それは、余裕がでてきた証だから。


「よっし!」


声とともに顔に両手でパチンと叩く。


切り替えるために。


まず知るべきは今の状況だ。


まず大前提に俺は死んだ。


それは確かだ。


自分がそう認識してるし。


あの映像も捏造だとは思えない。


それでここはどこだ?


死んだ後の世界?


たぶんそうだと思う。


じゃあ、俺の目の前にあるノートパソコンは何のためにあるのか。


自分の死を認識させるため?


そうなるとこの部屋(?)はそのためにある場所なのだろうか。


だったら、ここをクリックしてネ!というところを押せば天国なり、地獄なりその他のところなりに行くのか?


まぁ、押せば分かるか。


それ以外にできる選択肢もなさそうだし。


マウスに手を添えて、クリックする。


カチッという音が妙に響いた。


そして――――




画面から――――




光が弾けた。



「うぁ!?」


咄嗟に目を庇おうと両腕を掲げようとした瞬間、バチッ!と頭の中の何かが弾けた。


「ッ!?」


そして溢れてくるさまざまな記憶や知識。


否、溢れてくるというよりは……むしろ思い出すというのが正しいような――――






そう考えてると、いきなり意識がとんだ。






まるでパソコンの電源が切れたかのように……




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