アホな勇者様
「ねえおばあちゃんどうしてこんなところにぞうがあるの?」
今年70歳になるサチエは目に入れてもかわいくない孫娘から質問されました。
「この像はねえアホな勇者様の像だよ。」
孫娘のなんでだろうという顔にやっぱり私の孫はかわいいねえと孫馬鹿を出しながら、
質問に答えていきます。
「ふーん」
孫娘はおばあちゃんの説明に興味深そうにしながら像を観察しています。
すると孫娘は何かに気付いたのか新しい質問をしてきます。
「ねえおばあちゃん
ここにやさしいゆうしゃさまってかいてあるけどどっちがほんとうなの?。」
そうこの像の名前は「優しい勇者様」なのです。
おばあちゃん優しい顔で言いました。
「家に帰っておやつでも食べながら話してあげますよ。」
孫娘は
「わーいおやつだおばあちゃんはやくはやく。」
と言いながらおばあちゃんをせかして家に帰っていきます。
家に帰ると孫娘はおやつを台所から取り出そうとしますがおばあちゃんに
「準備しといてあげるから手を洗ってきなさい」
といわれ
「はーい。」
といいお返事をして手を洗いに行きました。
サチエが準備をしていると孫娘が帰ってきておやつを食べることにしました。
「おばあちゃんゆうしゃのはなしをして。」
とおやつを食べて人心地した孫娘がせかすので苦笑しながら話すことにしました。
----------------
昔々と言ってもそこまで昔じゃない昔に優真という男の子がいました。
この男の子は勇者でした。
その男の子はなにをしたのでもありません。
それでもその男の子は勇者だったです。
その男の子はたくさんの奴隷を買いました。
その男の子は金だけは潤沢にあったのです。
なぜならその男の子は王都で有名な奴隷商の息子だったからです。
そしてその父親が病気で死に。
母親は父親が死んだ後にぼこぼこにされた状態で死んでいたのが見つかりました。
そうして男の子のもとに残ったのは大量のお金でした。
そういうわけでたくさんのお金でたくさんの奴隷を買った男の子は奴隷たちをこき使い働かせました。
そうやってたくさんの奴隷を働かせているうちに男の子のもとにはまた結構な量のお金がたまりました。
男の子はそこそこぜいたくな暮らしをしているのですが、使用人は全員奴隷で衣食住を賄うだけでよく
住むところはもともと男の子の家は奴隷商だったので
奴隷を管理するために使ってた牢屋をちょっと改装するだけでよく。
着るものは奴隷なので最低限のものを。
食べ物はたくさん働かすために十分な量を与えていましたから普通の奴隷よりかは高価なものでしたが、
もともと奴隷の食事はそんなに高価な食材は使わないのでそこまで金を使いません。
そうしてたくさんの奴隷を使って小金持ちになった男の子はまた奴隷を買いました。
そうしてまた働かせました。
そうやっているとやがて奴隷が働くところがなくなってきました。
なので少年はほかの街にも奴隷を送りました。
そんなことをやっていたので少年はいつしか奴隷の派遣をする人という町の人の認識が強くなっていました。
そう思われているので男の子のところには奴隷を貸してくれという人が訪れます。
そういう人が訪れるので男の子の生活は大変になった。
っと言うことはありません。
その人たちの対応も奴隷に任せたのです。
町の人の中には「奴隷に対応させるなんて」と怒る人がいましたが男の子は全然取り合いません。
そういう対応を取っているので暴れだす人もいますが、
男の子の屈強な奴隷たちによって外に放り出されてしまいます。
そうして男の子は少年に成長し、そして青年に成長するほどの月日が経ちました。
青年はある日奴隷というものに疑問を持ちました。
人は皆同じ姿をしている。
ならすべて平等でないといけないのではないか?
この考えは明らかにおかしいです。
同じ姿をしているから平等でなければならない。どういう意味か全く分かりません。
この青年幼少期に両親が死にその後は誰にも引き取られることなく一人で生活していたので少しおつむが残念だったのです。
そんな青年がどうやってこの年齢まで生き残れたのか?
それは奴隷たちが支えてきたからです。
青年は仕事に関しては妥協を許しませんでしたがご飯に関しては十分な量、
奴隷という立場を考えれば異常と言っていいほどの量を食べれたからです。
そして奴隷というのは主が死ぬと一度国のものになり奴隷として売られます。
そうなったとき今以上の待遇は望むべくもありません。
だからこの青年が罠にかけられそうになったなら罠だと教え、
殺されそうになれば助け、新人の奴隷が来ればこの青年の奴隷としてのルールをみっちり教え込むといった努力をしてきたのです。
さて奴隷制度がおかしいと思った青年はすぐさま行動を起こしました。
自分の配下の奴隷たち
「私は奴隷制度はおかしいと思う。だからただすための方法を考えよ。」
と命令したのです。
奴隷制度がおかしいと言いながら奴隷を奴隷として扱うという矛盾に青年は気づきません。
ただこれを聞いた奴隷たちは必死で考えました。
この青年のおつむが弱いことはわかってます。
だからこの青年が納得すれば行動に移すと思われます。
そしてこの青年、今では動けば国を揺るがすことが可能なほどその勢力は拡大していました。
そうして奴隷たちは考えに考え結論を出しました。
奴隷の国を作ればよいと。
その案を成年に伝えると青年は納得し何より面白いと笑って行動に移させました。
結果から言うと国はできませんでした。
奴隷たちがやろうとしたのは町を一つ作るという計画で、
その町の中は青年の奴隷たちが市民で、ある意味平等ともいえる空間を作ろうというものでした。
ただ町を一つ作ろうとしたところで国側からストップがかかりました。
そんなに大量の労働力が抜けられては国の運営が立ち行かなくなります。
それほどまで青年の奴隷は国の中に浸透していたのです。
国側からは武力行使も辞さないという勧告が来ました。
ただ青年はおつむがあれでしたので国に対してこう回答しました。
人は皆同じ姿をしている。
ならすべて平等でないといけないのではないか?
これに困ったのは国側です。
武力行使も辞さないと言ったら帰ってきた返事はこれでした。
奴隷に反対しているところはわかったのですが理由がさっぱりわかりません。
実際に武力行使をするわけにもいきませんでしたし。
青年の奴隷はいたるところにいます。
その奴隷が全員武装し国に対して反乱してきてはわかりません。
何とか勝つことはできると予想は立ちますが国の被害が大きすぎます。
青年と対話することに諦めた国は奴隷のまとめ役のようなことをしている奴隷と対話することになりました。
結果を言いますとその奴隷は国から最大限の譲歩を引き出しました。
奴隷制度自体をなくすことはできませんが、奴隷の待遇についてかなり改善させたのです。
ただ青年は奴隷制度が嫌だったのです。
その青年に奴隷のまとめ役の人は必死で説得しました。
「今までの奴隷は家畜として扱われていました。
それがこれからは強制労働させられている人間になったのです。
悪いことをすれば罰を受けなければいけないでしょう。
それと同じようになったのです。」
と言って。
これまでの苦労をつぶされてはかないませんのでそれはもう必死でした。
それに青年は納得しました。
そうして国の法律にも奴隷とは強制労働を課せられた人間枝るという言葉を入れさせてご満悦です。
そうやって悦に浸っていたところで
グサリ
それは青年の心臓に短剣が刺さった音でした。
今回の青年の行動は一つ悪い方に転がれば他国に攻めいれられかねない行動でした。
国のことを憂えた騎士の独断でした。
その後騎士は奴隷たちに捕まえられ死刑になりました。
そうしなければ青年の奴隷だった人たちの怒りが収まらなかったからです。
奴隷たちにとって青年は英雄のようなものでした。
奴隷の待遇を大幅に改善させたその人物が国の所属のものに殺された。
それは国に対して反乱を起こしかねないものでしたから。
青年の葬儀は盛大に行われました。
青年の奴隷だったものは悲しみ、青年の奴隷ではない者の奴隷だったものは青年のことを憧れ英雄視しほめたたえました。
そうして青年が奴隷の国として作ろうとした街の真ん中に像が建てられました。
青年のことをよく知るものからその像は「アホな勇者様」とよばれているそうな。
----------------
「どうだったかい?」
と孫娘に聞いたサチエは孫娘が寝ていることに気付きました。
押入れから掛布団を持ってきて孫娘にかけながらサチエは幸せをかみしめました。
この幸せがあるのはあのアホのおかげだと
男の子から少年そして青年になるまで守り
そして国に対して奴隷の身でありながら交渉をした女性は今はもうおばあちゃんになって今日も幸せをかみしめているのでした。
童話風の話も短編の話も書くのは初めてです。
どこに不着地するのかわからないままかいていきましたらこういうものになりました。