2話
「しっかし、すげえ人数だな、今日と明日だけで全部回れるのか?」
俺達はまず魔法威力の測定場所に来ている
押し切られて今日だけはということで英雄もいるが
「全学年が同時に行いますし、しょうがないですよ」
「にしてもなあ、もう並んで結構経つぞ?ただ魔法撃ったり殴ったりするだけでこんなにかかるか?」
「人数が人数ですからね……」
「力也、俺は魔法撃つけど力也はやっぱ身体強化か?」
「いきなりなんだ、そりゃ俺には殴る以外の選択肢は無いが」
「やっぱそうだよな、これって身体強化の方が有利とかあるのかな?」
確かに、そこのところは考えてなかったな
目線でミーナに質問を投げかける
「確かそこで差が出ないように身体強化の人と、魔法の人とで計算方法は分けているみたいです。難しいことはわかりませんが有利不利は無いんじゃないかと思われます」
「まあそうだよな、差があるんじゃ尺度として問題だし」
「確かにそうだな、いやー無駄なこと考えてた」
……そう言う英雄の動きに周りの女子の何人かは反応している、やはり勇者という肩書とこいつの顔とが重なればそうなるのは必然
なのに誰も近づいてこようとはしない、普通ならただ並んで雑談を交わすことも厳しくなりそうなものだがそうならない
「……やはり私のせいでしょうか」
ミーナが俯きながらそんなことを言う
だが事実、軽い言葉はかけたくないし……
「気にすんな、結果として平穏に測定が出来そうなんだし問題ないさ」
はぐらかす事しかできないか、クソったれ
「何かあったのか?」
こいつはこいつで鈍感すぎて気が付かない、たまにその鈍感さが羨ましくなるぜ
「なんでもねーよ、そろそろ順番じゃないか?」
「そうだな!よっし、訓練の成果を見せてやる、期待してろよ?」
「お前の結果に期待なんてするわけないだろうが」
期待じゃない、確信だよ……こいつは確実に好成績を出す
なんか俺の言葉にショックを受けているが文字道理受け取ってるだけなので無視する
「さっきも説明したが能力値は十項目、魔法操作力、魔力含有量、魔法威力、魔法耐久力、魔法支配力、詠唱速度、魔力変換率、魔法干渉力、魔法抵抗力、戦闘経験から出される数値の合計、それぞれ満点は100点だから合計は1000点が上限…まあお前なら全部が60点以上なんて当たり前だろうからSランクは揺るがないだろ?どうせなら合計で800、上級魔導士くらいとってくれるよな」
「Sランク上級魔導士、格好良い称号だな!!」
格好良い、悪いの問題じゃないんだがな
「どうもある程度の目安として見られるから、この結果によっては見下されることもあるかもしれないぞ、勇者だから余程の事がない限り問題ないと思うけどね……まあ頑張って来いって事だ」
「力也の応援はいつもプレッシャーが増えるんだよな」
苦笑いしながらそんな事を言ってくる
「うるせえ、お前プレッシャーに弱かったか?」
そう言うとニヤリと笑みを浮かべて
「まさか、勿論逆だよ!」
とか言ってくる、だったら黙って行って来いってんだよ
「よし、行くぜ!!」
そう宣言して詠唱に入る
『………ほう、どこまで成長したものかと思っておったが、上級の光属性攻撃魔法か、魔力の込め方も申し分ないレベルじゃな』
急にどうしたよ、寝てたんじゃなかったのか?
『騒がしくての、まあ黙っとるから何かあれば呼んでくれ』
分かった、そんときゃ頼む
クロと会話してるうちに詠唱は終わり、バカデカい音と共に機械に魔法が叩き込まれる。周りの生徒が黄色い悲鳴上げたりしてるし、相当なもんなんだろうが、あれで何点なんだろうな
「ふむ、文句なしの100点、流石は勇者だな」
「よし、まずは最高得点!」
振り向きながら良い笑顔見せやがって、周りがうるせえよ、少し離れてるからいいものの
「あの機械凄いですね、今ほどの威力も難なく受け止め、無力化してます」
ミーナがそう言ったところで初めて機械の凄さに気が付く
「ま、壊れないってんなら壊したくなるのが人間ってもんだよな」
「…程々にしてくださいね?」
一回面白そうだって思ったんだ、止められねえさ
「今度は力也の番だな、頑張れよ!」
「おうよ」
「ふむ、黒戸力也か、壊すみたいな事を言っていたが出来るかな?この機械は去年ジャッポネの一人が壊してから魔法で言うならば最上級クラスまで耐えられるように改造されてちょっとやそっとじゃビクともしないぞ?」
ほう、面白い
「だったら、本気でやってみよう……身体強化」
魔力を左腕に集中、反動で吹き飛ばない程度に足にも回すが相手は固定された的、威力だけを考えてればいいし、実践で使えないレベルまで偏らせることが出来る
右利きだったし、右腕が無事だった時と比べたら威力は落ちるかもしれないが
右足を踏み込み、足首から膝、腰と流れるように力を伝え、拳の威力を極限まで高める技
「ふっ!!!」
黒戸流無手、「弾破」!!!
轟音が響きミシィと機械が軋む音が聞こえた
「………おいおい、爆発四散はさせずとも、本当にやりやがったなコイツ」
心底驚いたという顔で担当の教師が俺を見る
「ちっ、吹っ飛ばせなかったか」
完全にぶっ壊すつもりでやったのにな
「いやいや十分だ、機械はいかれちまって計測不能になってる、文句なしの100点だよ」
ま、十分か
『それにしても無茶をしたのう、実践はおろか軽い模擬戦でも全く使えんほど溜めに時間はかかる上にただのパンチだから攻撃範囲は狭い、こんなんで測定していいのかの……』
………ひゃ、100点取れてるんだからいいじゃんかよ
『まあそうなんじゃがな』
「さっすが力也、びっくりするほど濃い魔力だった」
英雄が少し興奮気味に言ってくる
そこまで魔力をしっかり感知出来るようになってるとはな
「ま、壊しきれなかったのは心残りだが。次はミーナか、しっかりな」
「はい」
ミーナは暗殺業にスナイプと全くと言っていいほど威力とは無縁、どこまで戦えるか…
『主、黙っていると言いつつ度々済まぬが、右後方から殺気、右前方からも、左手からもじゃ』
ああ、俺が思っていたよりも圧倒的に根が深そうだな
人間至上主義、か………
殺気の出所を確認しつつ、姫さんから注意されていた魔法至上主義と並ぶゴミみたいな主義の事を思いだす
「ふむ、58点、まずまずだな……Sクラスの中では決して高いとは言えないからな、気を付けるんだぞ」
「はい」
担当の教師は変な主義は無いのか、はたまた仕事と割り切っているのか、助言までするあたり前者であると願いたいが、ひとまず安心はできるだろう
「まあお前は威力に関してはそんなもんさ、他だな」
「はい、力也様にご迷惑をおかけしないレベルは必ず……!!」
「ま、気楽にな」
ミーナは俺や英雄とは違う、このまま行けばこれ以上の成長は無いってレベルまで既に達してしまっている。今はライフルや拳銃での新しい戦闘が身に付いてきているから成長はするが、魔導士としての成長は望めない、これが周囲のどう評価に響くか………
ま、今考える事ではないか
「英雄、次どこ行く?」
「そうだな、近くで魔法操作力と魔力含量やってるみたいだし近場から攻めるか?」
渡された会場案内を見ながら英雄がそう提案する
「おっけ、それで行くか、隣の闘技場か?」
この学園は闘技場の数が半端じゃない、二桁どころか20に近い数の闘技場がある。他の学園は多くても10が限度らしいので相当なものだ
「そうみたいだ、行こうぜ!!」
「はいよ、行くぞミーナ」
「はい!」




