39話
後日談みたいな物へ
次の話で一章終了の予定です
「………ん?」
……もうこの天井も見慣れてきたな
『やっとお目覚めか、大丈夫か主』
おお、思った以上に痛みがない
『うむ、パトリシアとかいう婆さんはなかなかの腕じゃな』
お、あの人が来てくれたんか、助かった……
「にしても…」
左腕が残ってただけましか
「右腕は肩口から完全になし、と」
『無いものを生やすことは流石にできないそうじゃ、まあ慣れるのは時間がかかるじゃろうが命があるだけましじゃな』
せめて利き腕じゃなければなあ
「さて、どうも数時間寝てたって感覚じゃないんだが…どのくらい寝てたんだ?」
『大体2日くらいじゃな』
「2日!?……ミーナはどうなった?」
『まあ、自分の目で確かめるのがいいのじゃ』
もったいぶる事かよ、その反応なら問題なかったんだな
『まあ完全に問題ないとは言えんが、な。ひとまずは安心なのは確かじゃ』
そうか、良かった
「…さて、何時までも寝てらんねえよな」
立ち上がっただけでふら付くか、そこまでやわな鍛え方はしてないつもりだったが…
『片腕がなければバランスのとり方も変わってくる、そのせいかもな』
あー、そこからやり直さなきゃなのか、黒戸流もいくらか片腕でできるようにオリジナルに改変しないとな
「めんどくせえが、やるしかねえな」
コンコン
「…失礼、します」
「ミーナか、おはよう」
「力也様、おはようございます………おはようございます?」
「ん?ああ、もうおはようなんて時間じゃないな」
「力也様…?お目覚めになられたんですか?」
「たった今な、心配かけたみたいだな、すまんかった」
「あ…り……あ、あぁぁぁ…」
あー、また泣かしたよ俺
『主も進歩しないな、ほんと』
やっぱ俺が悪いよねえ、これ
『他に誰がいる』
「……はあ、すまんかったって、ミーナ」
「ううぅぅ、りぎやざまぁ……だんでわだじなんがをぉぉ」
「あーおい、泣くな泣くな、何言ってんか分かんねえし、片腕しかないから体支えるので精いっぱいだから、全く…」
「ううう、なんであのどき、わたじなんかを庇ったんでずかぁ……力也様をもしもの事からまぼるのがわだしのやぐめなのに、だんで……」
服をつかみながら倒れこむように体重を預けてくるミーナを支える
くそ、右腕無いせいで抱きしめる形にしか出来ない…
『メイドも顔を見られたくは無いじゃろうから丁度いいんじゃないか?』
しかし、この態勢はなかなか辛いぞ?
『男なら我慢じゃ』
はいはい…
「にしても、よく無事だったな」
そろそろ泣き止んだか?こういうとこで感情的になりやすいとはいえすぐ落ち着くだけの切り替えの良さは助かるな
『年齢的にはもっと感情的になってよいと思うがの、主も、メイドものう』
まあ、それが俺らだ
「うぅ、一部の獣人や魔族の者は、残りました……その全ては、孤児…同じ獣人や魔族に頼る者がいない者です」
「…なるほど、逆に言えば孤児以外は全員消えたか」
「はい、獣人が主なスラムも混乱に乗じて逃げていたようで、大半はこの国から姿を消しました」
「……立場はどうなっている?」
「あまりいいとは言えませんね、ですが想定の中ではかなりましな方です。今回の件で私たちの被害は極少数、今回の件でいきなり嫌いになった、というものは少ないでしょう…ただ」
「元々嫌っていたものからの迫害が悪化したか」
「はい、現状城内では表立って動きはありませんが、残った人間以外の種族はあまり出歩かぬように、との事です」
「大聖堂の方はどうなってる?」
「今回の中心にドゥーカ・ファミリーがいましたので、その後任となる家を探しているそうです。ちなみに今回最も戦果を残したのはカルタ様率いる騎士隊、次にクリストフ様の率いる騎馬隊、更にその二つの隊に準ずる戦果を挙げたのが、アラルコス様、デイジリー様両名です」
「……両名?まさか軍の戦果に個人で匹敵したと?」
「はい、お知りになっておいた方がいい情報かと」
「……ちっ、俺がこんな事になってるってのにな」
年下の女の子に完全に負けてんのかよ
『…やはり化物じゃったか』
「力也様は初の実戦ですし、しょうがありませんよ……まだまだ、これからです。召喚されて一年も経ってはおりません」
「……まあ、今は納得しておくか、こんな状況じゃ何も言えねえよ」
「はい、そうしてください。今お召し物の準備をいたしますね」
「ああ」
…しかし、この片腕でどうするかね
『少なくとも片腕になれる必要はあるじゃろう、その先はその時考えよう』
ああ、了解した。そういや英雄や姫様達はどうなってんだか、無事だったんだよな?
『後でメイドに聞けばよいじゃろう』
…だな
「しかし、この腕じゃ着替えもろくに出来ねーぞ」
「ご安心ください、お手伝いいたしますので」
………早く片腕でも着替えられるようになるか、代替案を考えないとな
『相変わらず初心なのは治る気配がないのう、良いではないかそのくらい』
恥ずかしいだろうが!
『もう既に何度も裸は見られておるぞ?』
…………は?いつ?
『逆にどうして見られてないと思った、もともと戦場にいた上丸二日も寝ていたのにも関わらず体が綺麗じゃないか?』
まじかよ、いや…確かに何故かべたつかないけどさ、魔法とかのおかげじゃないのか?
『そんな魔法使われておらん、その方が楽じゃろうがそのような魔法が誰にでも使えるものならば風呂やらなんやらは作られんじゃろ、まあ初めこそはかなり顔を赤くしながらしておったがのう』
…………くっそはずい
「…?力也様、顔が赤いようですが、どうかされましたか?体調でも優れませんか?」
「いや、問題ない…」
『大丈夫かの?』
なんも大丈夫じゃねえよ
「…さっさと着替えて姫さんとこ行くか、状況を知りたい」
「分かりました、こちらにいらしてもらえますか?お召し物のお取替えを」
「…おう」
『くっくっくっくっくっく!』
うるせえよ!
…
……
「しかし本当に良かった、もう目を覚まさないかと思っておったぞ」
「だからっていい歳してんだから抱きついて泣きわめくなよ、姫さんとこのメイドが驚いてたぞ」
そういやエルフだったな、無事で何より
「いや、さっきのは忘れてくれ…取り乱した」
「いいんですよぉ?リリス様の面白い…もとい可愛い……じゃなくて、珍しい姿も拝めましたしぃ」
「……メイドさん、そろそろやめてやってくれ、姫さんが真っ赤になって震えてるぞ」
「いいんですよぉ、あの暴動から元気がなかったリリス様も元気になりましたしぃ」
「いや、そうじゃなくて」
「そういえばリリス様の求婚は受けてくださるのですかぁ?」
「げふっ、ぐふっ、ゴホッゴホッ」
このメイド、知ってんのかよ!?
「どうせリリス様のことですからぁ?雰囲気も何もない阿呆みたいなタイミングでしたんでしょうけどぉ?こう見えて夢見がちな乙女なんですよぉ……ですよね?」
「ですよね?じゃないは馬鹿もの!!何を力也の前で言っておるんだ!!!」
「そんな真っ赤になって言われてもどこ吹く風ですよ、少しは落ち着いて堂々としていらっしゃればいいんですよ」
……今度はダークエルフ、やっぱこの姫さん良いやつだな
『お、求婚を受ける気になったのかの?』
…ちげえよ、ただ異種族の迫害とかは好きじゃないだけだ。にしてもあのメイドには姫さんもしてやられてばかりだな、面白い
……何より、胸がでかいなあのエルフメイド
『…そういうとこは男なんじゃな』
「……力也様、視線がいやらしいです」
「………ジト目はやめてくれ、癖になりそうだ」
「や、やめてください、いきなり御冗談を…」
「すまんすまん…しかし仲いいな、姫さんとメイドさん達は」
「ほんと、気心が知れたって感じですね。リリス様が妹みたいになってらっしゃいますが」
「不思議な光景だ……」
「フフフ、昔からああなんですよ。申し遅れました、私リリス様付のメイドをさせてもらっているアリシアというものです。気軽にシアとお呼びください、ご主人様?」
「……あんたの主人になった記憶はないが?シア」
「リリス様とご婚約なさったのでしょう?でしたら私の主人ですよ」
……こっちのダークエルフのメイドさんもなかなかの曲者だなおい
「それに、勇者様は大きい方がお好きなようですし?」
「えっ!?」
「どうしたミーナ、いきなり……てかなんだ、大きい方って」
「フフフ、リリス様もなかなかでしょう?リーリアちゃん程ではないですけど」
「リーリア?」
「あ、リリス様をもてあそんでるエルフのメイドさんの事です」
「なるほど…って、まさか」
「ごめんなさいね、私の胸はそこまで大きくなくて」
そう来たか、いや、確かにリーリアさんの胸に目は奪われたが…
「うぅぅ、力也様もやっぱり……」
…さて、姫さんは相変わらずおもちゃにされているし助けにはならねえ。ミーナもなんかシアにおもちゃにされ始めたか、カオスになる前にどうにかして話し合いに持ち込みたいんだが
『クックック!!!面白いではないか!』
いや、楽しんでる場合じゃなくてさ…
「あー!!!いい加減にせい!リア!!力也がいるのだぞ!!」
お、姫さん復活か
「それで力也!何か話があって来たのだろう!?」
おお、姫さんの一喝でメイド二人が止まったか、まあ主だし当たり前だが
「ああ、状況の確認と、今後の事について、さ」




