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異世界の勇者は何を見る  作者: 小淵執悲
第1章 異世界召喚
28/50

28話

……長い



『う、うむ。まさかここまで説明という名の説教が続くとわの』



しかも一つ一つ言ってやがるからくどい、歴史が繰り返すことを言いたいだけだろうに



『そうじゃのう、じゃがまあ主はこの世界にきてすぐにあらゆる文献に手を出しておったから知っておるだけで大体の人間はそんなことに興味が無いからのう』



まあそうだが、国政に携わる者としてそれはどうなんだろうな



『それもそうじゃのう…』



「とまあこんなところか。お前らはカエイラの国政を担う者たちだろう、この程度の事しっかり把握しておけ!!」


お、終わったか。まあ要約したら過去にもこんな感じで世界的に事件が起き始め、その全てが世界大戦へとつながっていることを考えたら、周期的に見ても今回の件がそのきっかけになってもおかしくないってことだよな。それに対する対策としてまずカエイラの中から見直さないといけないって事も言ってたがよくもまあこんなに長々と



『途中で入ってきたアラルコスが寝ておるぞ…大丈夫かの、この国は』



「り、力也…俺たちは何をしたらいいんだ?何ができる?」


「なにってお前、俺らじゃそこまで動けないし、反乱や暴動の鎮圧くらいじゃねえのか?まあまだまだ力不足かもしれないが雑魚ならつぶせるだろ」


「…そうか」


…そうかこいつ、まだ人を殺したことはなかったな


俺もまだないが、家の都合上そういう場面に出くわしたことならあるし、その時にどう対応したら危ないかくらいなら分かっている。それに赤の他人程度問題なく殺せるしな



『…もう一人の方はそうもいかんじゃろう。あそこまで初対面の相手を気遣うやつもそうおらん』



ああ、こいつの場合まずためらうだろうな…だがそれはいい、今回の件はいいタイミングだし、あいつには失敗や後悔を経験してもらおう。その方があいつの為になる



『そうかの?むしろ再起不能なまでに潰れてしまうかもしれんのでは?』



いや、それはない。そこまであいつは弱くないし、あいつは本物の英雄の器だ。それにあいつのいいところは、一度の失敗で多くを学ぶこと。それに小さい失敗から大きなミスを防ぐような学習能力がある。あいつが過去に本当に失敗したとこなんて一度だけだ。その時の代償は俺が全治1か月の怪我をした事かな



『…全治1か月ともなるとなかなかじゃの。じゃがそんな奴に失敗や後悔を経験させるのはどうしてなんじゃ?その流れじゃとまた主が大変な目に…』



あいつがこの世界で生きていくには殺しに対する嫌悪は邪魔だ…正直ここまで殺しに対して意味のなさない法だとわ思わなかった。それに冒険者なる無法者の跋扈する社会、少々危険すぎる。だがあいつは一回の後悔で100を学ぶ。ここで経験しておけばあいつのこの世界における不安な点が大きく軽減されるだろ…あいつが躊躇ったことで、なにかあいつの大切なものが危険にさらされたり、最悪失うようなことがあればな



『…その犠牲はしょうがないというわけじゃな』



ああ、まああいつの場合基本小さいミスでそういうのを学ぶから誰かが命を落とすようなことはないと思う。ただまあ今の不安は、その英雄にとっての失う何かが、俺関連であればいいが、そうじゃないパターンも考えうるって事だな



『…どこまでももう一人の事を考え続けるのじゃな、主は。あやつにそこまでの価値があるのかの?』



俺にとっての恩人だ、あいつは何があっても、俺がいる限り生かす。あいつが望まぬ形だろうと、あいつが俺より先に死ぬなんてことは許さない



『…今回の件でもう一人自身が命を落とすことは考えられんのかの?』



それはない。世界はあいつを中心に回ってるんじゃないかってくらいあいつは英雄で、勇者で、主人公なんだ…失うのは大切なものだが、あいつ自身に及ぶ危険は少ない。あいつが勝てないレベルの相手はあいつと戦う事はほぼないし、もし戦っても弱体化されていたり相手に殺す気が無く見逃されたり、そんなことが起こるのが目に見えている



『…主も難儀なやつを恩人に持ったのう、主の立場が一番損な役回りじゃろ』



そうかもな、だがそれでいい、俺にとってのあいつはそういう存在だ。まあ厄介事が異常に多いがな


「力也よ、お主はどう考える?」


クロとの会話に意識を割いていると姫さんがいきなり話を振ってくる


「どうって、反乱は確実に起こるだろ」


「そうじゃな…その中で、完全に人間以外を排除するべきだと思うか?」


…?姫さんがここまで深く考えてるって事は、何かありそうだな


親しい友人か、男かは分からんが姫さんにとって近しいやつが獣人か何かか?


「そんな必要はないと思うが、万全を期すならそうすべきだよな。俺としてはミーナがいるからその事態はなるべく避けたいが、最悪の場合も考える必要がありそうだな」


「そうか、そうだよな…うん、そうだ」


…なにかやばい方に動きそうだな、姫さんにまで気を回す余裕があるか?英雄はなかなかに手がかかるぞ?



『…どうするのじゃ?カルタたちを頼るか?』



それが最良か


「大将軍よ、今後我々の動きとしてはどうなる?」


「…その前に聞きたいことが一つある。魔王は今頃ドゥーカの面々を集めているのだろう?集まっているのか?それと巫女はどうした…まだ娘とはいえ我と同等の地位、この状況でどこにいる?」


「…大将軍の言う通り、妻は今ドゥーカに招集をかけています。しかし応答が無いのがイカーチとファールだそうだ」


…共に獣人の家柄、いい流れとは言えねえな


「巫女様ですが、現在ご湯あみ中でして…代理としてわたくしめが」


っ…大将軍が見るからに不機嫌だな、まあこんな人とあんな小娘が同等の権限を持つなんて考えたくもない、無知な権力の恐ろしさをこのおっさんは知ってるな


まあ英雄にご執心なおかげであいつに不利になるように権力が行使されることはないだろ


「…巫女はもういい。目下の問題はイカーチとファールの両家だな、カルタ、クリストフ、動けるな?」


「はっ!!」

「勿論です!」


…あの二人なのは、信頼があるのがあの二人って事か



『やはり他の若い大隊長はそこまでの信頼は無いようじゃの』



実力的に他の隊長や隊員なんかと比べたら別格なのは確かだ。若いから経験や熟練度が足りないだけだろ…まあそれを補うレベルに片方は到達してそうだがな



『…そこまでか?あのナタリア・レッキャは』



英雄にきゃっきゃきゃっきゃと教えてたのを見た後じゃ何とも言えない気分になるが実力は確かだし、適正属性も英雄ほどじゃないにしろ化物だ



『…まあ主とは真逆のタイプじゃな』



「レッキャとサヴィーナは軍を従えて待機、魔法師隊は2隊、魔法剣士隊は3隊が常に動ける状態で待機させておけ」


「了解です」

「了解しました」


…さて、俺はどうするか


「勇者の二人はしばらくは今まで通りの生活で大丈夫だ、必要な時には連絡をする」


「了解」

「わ、分かりました!」



『嫌な流れじゃが主のやることは変わらん、強くなるしかないのじゃ』



…だな、早く強くならなきゃ、何もできない

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