18話
『さて、まずはどうする?魔法の前に魔力の操作に慣れるところからかの?』
そうだな、そっから始めるか
そう考え立ち上がる。少し魔力を出して腕に纏うように走らせる
『流石じゃな、ほぼ初見でそこまで安定して扱えるとは。無駄ができているが私が回収すればいいだけじゃから周りから見たら完全に無駄がないようにすら見えるかもしれんぞ』
…今までのがウソみたいに言うことを聞くな、全く別物だぞ
『ふむ、その要領で全身に纏わせてみれば完全に身体強化ができてることになる。ここまで簡単に扱われると教えることがないんじゃがな』
ま、いままで苦戦しながらも毎晩やってたからな。まあなぜか完全に使い切ったっていう感覚がないのに意識が飛んだが、それもクロの封印が原因だったってわけか
『そうなるの。まだ魔力は残っていても体に回す魔力はなくなってしまっていたからそうなってしまったのじゃな』
「力也、もう簡単に身体強化ができるみたいだな。なんて変化の速さだ」
「…今なら姫さんの全力の3割くらいなら引き出せる気がする」
「ほう、やってみるか?」
『まだ辛くはないかの?創造魔法もまだ使えてないし』
身体強化でどれだけ伸びるか、それが知りたいんだ
『ならば私は無駄の回収に励むかの』
頼む
「ああ、やろうか。カリンは良いのか?」
「カリンは魔力切れじゃ」
そういや近、中距離魔法駆使して姫さんとやりあってたな、姫さんは身体強化だけに見えたが
「そうか。なら気兼ねなくできるな」
「うむ、さっさとやろう」
『主よ、全身に魔力を纏うときに少し目に多めに回すといい。最初は慣れないだろうが、今後役に立つ』
?分かった
「フッ!」
身体強化をかけ、戦闘態勢を整える。纏う魔力は先ほどのように少量ではない
「流石にこの量纏うと無駄が増えるな」
『うむ、これではすべてを回収するのは無理じゃから多少無駄になっとるの。まあ許容範囲じゃと思うぞ』
なら大丈夫か。姫さんの顔が良い獲物を見つけた時見たく喜色に染まっているのが怖い…もうパトリシアさんは帰っちゃったのにな
「さあ、やろうか」
「うむ!」
返事をするや否や身体強化をかけ飛び込んでくる姫さん。その大剣を短刀を交差させ受け止める
よし、これなら力の差はあまりない、片手でも受けられる
「このスピードなら余裕か、ならば!」
っ、姫さんの纏う魔力の濃度が上がる
「はあっ!」
大剣を振るっているとは思えない速度での連撃を一つ一つ短刀で受ける。小回りが利くのはこっちなのに一撃がさらに重くなり両手で受けないときついため反撃に回れない
『主!目と腕の魔力量を増やすのじゃ!』
それができてたらやってるが、一部の濃度だけ増やすってのはどうも難しいぞ!
『はじめは誰でもそんなもんじゃ、戦いの中で慣れるのじゃ!』
無茶言うねえ…
「ふっ、力也も楽しいか?」
「別に楽しくて笑ったわけじゃ、ねえよっと」
踏み込みからの横なぎの大振りをバク天しながら避ける
「我は久しぶりに楽しんでおるぞ!!」
っ!?さらに魔力が濃く…なら俺も!
『主よ、流石に無駄が多い、要訓練じゃ』
分かってるさ、だが今は
「はああ!」
姫さんの下からの剣を一歩下がり避け、避け上からの攻撃に意識を向けながら踏み込む
さっきまでじゃあ対応できないような速度の攻防、楽しくないわけがない!
踏み込み少し見上げると上段への構えに移り口角を上げる姫様と目が合う
「黒戸流双剣術」
俺も口角を上げながらさらに魔力を多く纏う大剣に集中し体を大きく沈み込ませる
「「閃、弐之型」」
狙いは遠心力のかからない手元に近い部分、沈み込ませた反動を使い一気に2本の短刀を振り上げる
「はあああああ!!」
カアァァアン!!!という音とともにぶつかる
ちっ、剣が折れやがった…だがまあ
「痛み分けだな、我の剣は魔力で強化していたが、力也はしておらんかっただろう。まあ完全に勢いを止められた我の剣を考えると追撃できんかったな」
「そんなんまで頭が回んなかったな。ちなみに姫さん、今ので何パーセントだ?」
「そうだな、3~4割といったところだ」
「ちぇ、半分いかなかったか。まあ3割いったしいいか」
『物の魔力強化は自分の強化より難しいぞ。まあ多少なら私もカバーできるが、残念ながら私の能力は主の能力に準ずる。現状では多少の強化補助とナイフ一つを創造するのが限界じゃな』
逆に言えば俺が強くなった分クロも強くなって補助できる範囲も増えてくるわけか、てか俺のできない事でもできるのな
『多少魔法の方によってるだけじゃな。身体強化含む魔法の補助がメインじゃ。簡単なものや主のレベルに応じてその範囲も広がる』
なるほどね
「さて」
ん?姫さんがおもむろに剣を捨てたぞ…
「さあ、第2ラウンドだ」
姫さんの魔力を感じた瞬間に身体強化をかける
「なっ、武器なしで行くのか!?」
「いつでも武器があるわけじゃないからなっ!」
「創造魔法なら、魔力のっと、続く限り、いけるだろうがっ」
「確かになっ」
止める気ねえな、分かってたけど
姫さんの拳を躱したり受け流したりしつつ言い返す
『主、ナイフでも作ろうか?』
いや、無手での戦闘も心得ている、今はいい
『了解じゃ』
「いくぞっ」
身体強化をさらに強くかけたな?また濃度が上がった…
ガッ
!?何つー威力だよ
「ちっ、スピードまで上げやがって…」
「面白いものを見せてやろう、「炎装」」
っ!?炎を纏った?
『炎装、創造にはないが他の属性にはある各々の属性の象徴を纏ものじゃ。属性ごとに特性に加えて追加効果みたいなものがあるが、炎は触るとやばいのは分かるじゃろうが、通常より威力も上がっておる!』
ちょっとまて!どうやって受けるんだよそんな拳!
『相手に相当、超える魔力で腕を纏うのじゃ!』
全身の魔力が増えるぞ?
『この際しょうがない、魔力がある限り使い続けるしかない』
りょーかい
「ふっ、ならさっさと決める!」
「ほう?よく初見で対処法に行き着いたな、本能か?」
顔の笑みをより深くして拳の振るってくる
「なんでそんなに嬉しそうなんだよっ!」
炎を纏う拳を受け流しつつ反撃するも圧倒的な速度で全部軽くかわされる
動きを読んでもそれを見越した俺の動きを見てさらに行動を変化させてくるしな…
上段に放たれる蹴りに対し軸足に足払いを仕掛けて距離を離させる
さらに一歩下がることで踏み込んできた姫さんとの距離を変えずに半瞬の間を作る
「黒戸流、無手」
「っ!?させん!」
瞬発的に速さを上げて拳が振るわれる
「柔術、「柳葉」」
避けることができないと判断し、流派の柔術、その基本を用いて拳を少し逸らす
「柔術、「雷落」」
受け流した姫さんの腕に沿わせるように残していた手で腕を掴み、自分の方に引きつつ体に蹴りを入れることで姫さんの体を宙に浮かせる
てかかなり炎が熱い…
「っ!柔術…」
掴んだ腕を支点に姫さんを回し、完全にさかさまになった瞬間に
「よっ」
一気に腕を引き頭を地面にぶつけるように叩きつける!
衝突の瞬間の衝撃であたりに砂煙が舞う
てかこれで砂煙出るほどの威力とか身体強化ってのはなんて危ない魔法だよ…
『女の顔を地面に叩きつけるとは、主もえげつないのう』
いや、完全にもう片方の腕で衝突前に止められてる…
『なんと…』
「ふう、危なかったわ」
右腕をひねり上げた状態で下に力がかかるように抑え込んでいるのにも関わらず
「その対処法、やろうとした奴はいたけど成功させられたのは初めてだ」
一応免許皆伝してるんだぞ?
「なあに、身体強化の熟練度に差があった、それだけだ。だが何かが来るとは思って決めに行ったんだがな」
左手だけで顔の地面との衝突を避けたどころか、今も体全体で力を加えているのに片腕で支えられている
「ちっ、俺の負けだ」
腕を離せばすぐにでも間合いを詰められて終わり、このままでも今は何もしてきていない足で蹴り飛ばされて負けるだろ…普通ならすぐ離れて次の行動をとれるが、左腕に込められている魔力を見る限り勝ち目はない、な
「そうだな、終わりだ」
腕を開放するとすっと体を回転させて立ち上がる
「ふう、久しぶりに楽しかったな。最後割と焦って身体強化に魔力を込めすぎて炎装が外れてしまったわ」
「確かに、身体強化の性能がすごいってことが分かったし良い収穫だが、姫さんの実力がすごいってことくらいしか感想ねえよ」
『お疲れじゃ主。じゃがお主も結構楽しんでおっただろう、感情はしっかり伝わってきておるぞ?主もまた戦闘狂の類じゃな』
…体を動かせて嬉しかっただけだ、戦闘狂ってほどじゃあない、と信じてる
『ふふっ、そうじゃな、今はそれでいいかの』
今はってなんだよ全く
「まあ力也もなかなか楽しんでおっただろう?良いではないか。それに身体強化初めてでここまで動けているのはすごいんだぞ?普通最初は戦闘と魔法の維持なんて同時に行えないしの」
そこは多少クロにカバーしてもらってたがまあ言えないし良いだろ
「戦闘は日常茶飯事程度に思ってたからな、通常時とあんま変わんないんだろ」
だが結構無駄が多いみたいだな…倦怠感がかなり増えてる
『そうじゃな、今既に全開の30パーセント程度にまで魔力が減っておる。身体強化なのにありえないほど無駄があったんじゃな。普通ならあの無理やりな身体強化は数十秒も持たんぞ?主は魔力量が多いからあれだけ持っていたがな』
今回は魔力量に感謝、か。だがもっと増やさないとなあ…
「なるほどのう。まあそれだけの実力があれば魔獣の討伐に行く許可は出るはず、これでまた自由度が増すな」
「そっか、なら早めに創造魔法も身につけないとな…」
「創造魔法は我では教えられんからの、軍のものに教えを乞うとよい」
「了解っと。それにしてもカリンがやけにおとなしいな…姫さんとバトった後だといつもぎゃーぎゃーわめいて姫さんとバトってたのに」
「ああ、カリンのやつも力也を認めたんであろう。自分より強ければしっかり相手を立てるくらいはする。まあカリンも19、まだまだ伸びるさ」
「…そういえば前々から思ってたんだが、姫さんの近衛は若すぎないか?それに姫さんより弱い…どういうことだ?」
「そうだな、まず言うと、普通王族には護衛と言う名の強者がつけられるが、我の場合そのような父上の息のかかったお目付け役は嫌いだ」
「まあそんな感じはする。だが嫌だからって外せるものじゃないだろ、姫さんは王族なんだし」
「うむ、去年まではそうだったんだがの、今年からは解放されたのだ」
「…なんで?」
「我が世界ランキング100以内に入ったからだな」
100以内…世界ランク!?
「なっ…まじかよ」
「嘘ではない。まあ人を相手にするよりは魔獣相手の方が得意だが、ちゃんと世界ランキングに乗った。この国の軍でも我より強いものは少ない。魔獣の方が得意なせいで模擬戦で勝てないものもおるがの」
「…まじかい、姫さんが世界ランカーねえ」
「うむ。ちなみに我が国カエイラは世界ランキング100位以内の人数が一番多い国だぞ」
「お、おう…」
いまだに姫さんが世界ランカーってことの衝撃が抜けきらないんだが。まあここまで完全に封じ込められたし強いってことに越したことはないが、まさか世界ランクにのる程とわな
「そのおかげで護衛を外すという許可を得た。その上で気に入った騎士を雇って近衛騎士にして育てようと思っての。今年が初だから今年の新入りの3人なのだ。だから三人とも若いのだ」
「なるほどね。姫さんがすごいってことがよく分かった」
「だろう?もっと敬ってもよいのだぞ?」
さて、この姫さんを追い抜くのは一体いつになるんだ?




