16話
おはようございます、読んでくださりありがとうございます
「つまり」
…あれ?なんでこんな展開に
「魔力がいうこと聞かないからきっかけになればと圧倒的に不利なピンチを作ってぼこぼこにされた、と」
ミーナ怒ったらこんなにすごいプレッシャー出せるのな
「お、おう」
「それで、何が得られると思ったんですか?」
ごまかしは…やめといたほうがいいか、なんとなく
「ピンチに追い込まれりゃ、俺の意思も強くなって魔力がいうこと聞くようになるんじゃないのかと思ってな」
「…それで何か得られましたか?」
「いや、今回は何も」
「今回……は?」
うっ、なんだこの威圧感
「もしかして何回も今のみたいなことをやるつもりだったんですか?」
「……魔力が言うことを聞くまで」
「本気ですか?そんなやり方誰も考えたことありませんよ?それに、誰も考えたことなんて…」
「いや、まったく誰も考えたことがないなんて、ないはずだ…ここ数日専門書以外にも手を出し始めたんだが、ミーナが持ってきてくれた記録文献、その中に魔獣に襲われた時に魔法を使えるようになったという書き込みが少しだったが、存在し…たぞ」
最後少し威圧感ました…よな?
「それはそうですが、勇者という立場の者が思い付き、実行に移すものではありません。普通皆魔力を扱える者に挑むことの無謀さを心得ていますしね。…それにしても相変わらず本を読むの、早いですね」
「本は楽しいからな。ま、俺にそんな先入観や固定観念はないからね」
「…そうですか、わかりました。ですが今後このようなことを行う時は先に教えてください、何の説明もなしじでは心配です」
…威圧感は消えないけど、心配させちまったってことか
「わかった。悪かったな、心配かけたみたいで」
「…わかっていただければいいんですけど」
…なんか、どうせまたやるんだろうな、とか思われてそうだな
「次やろうぜ、アーロン」
「い、いいんですか?」
「大丈夫だろ、さあ、やろう」
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side リリス
いま私の目の前ではアーロンと力也の模擬戦が行われているが…
「まじか…」
思わずそんなセリフが漏れてしまうほど、正直予想だにしていない事態になっている
「やっぱすごいな、力也は」
取り巻きを連れていると近寄ることを許されないから今日は一人のもう一人の勇者が呟く
アーロンの縦横無尽な剣劇、それを危なげなく受け流す力也…
「…あんなことは、可能なんでしょうか」
昼食を持ってきたミーナがもらす
「普通ならありえん。ただ力也の奴は何か武術をやっておったようだし、さらにここ数日延々と繰り返される同じ相手との戦闘で、完全にアーロンの動きの癖が見抜かれておる」
「ですが…身体強化の有無がひっくり返るのですか?」
「そこはさすが勇者、としか言えんな。まああんな戦闘を数日続けて、毎日魔力を見るトレーニングをして、あれだけピンチな状況に立たされ続けても魔力を放出しかできないのは何とも言えん」
「…その点ですが、力也様のフラストレーションはかなりたまってきていまして、数日とおっしゃいましたが既に8日、1週間を超えてきています。このままでは単身危険地域に乗り込みかねません」
…力也の求めているのはおそらく自分を危険な目にさらすことで防衛本能やらなんやらをを刺激することで魔力を扱うきっかけをつかもうとしてるんだろうが…
「アーロンは既に力也の脅威にはなりえないな」
本気を出させたら流石に力也を殺しかねんしな
「…私が行こう」
だがしかし魔力の放出ができるのに扱えない?そんな話があるのかの方が謎だ…魔力の扱いは魔力を感じるところからだがそこはクリアできている。この訓練、魔力を感じれないものが感じれるようになるためには良いとは思うが言うこと聞かせるためには…どうなんだろうか?
「まあ力也がやる気なんだし、やってみるだけやってみようか」
愛刀の大剣に極限まで魔力を通し、纏わせる
これなら力也も経験したことのないレベルで死の恐怖に見舞われるだろう
「身体強化は全力、っと」
もし何もなければ寸前で止められるだけの余力を残して……まあ余波はすごいことになるだろうから怪我は必至かの
「…リリス、殺すでないぞ?勇者を殺したとあってはいくら王女でも…まして武官はともかく文官には煙たがられているお主では…」
「大丈夫じゃパトリシア、いくら何でもそこまではせんわ。力也は我も気に入っておる。いつも心配しすぎだの、パトリシアは」
「…ならよいのですが」
この魔力での攻撃が普通魔力のない者に向けるものではないことは分かっておる。だが力也は普通の類ではないことは明らか、このくらいが丁度いいだろ
「フーッ」
剣を上段に構えて一つ息を吐く
力也がこっちをちらっと見て少し顔を青ざめさせたな……しっかりと魔力の感知はできているんだな、アーロンが気が付かない程度には隠して魔力を込めたのにな
「行くか」
力也の変化を好機ととらえたのか一つ大ぶりの攻撃を仕掛けるアーロンを見て、力也の避ける先を予測して飛び込む
「なっ!?」
力也の予想を上回る速度だったのだろう、急に現れた我に驚いたような声を出す
「…死ね」
自分に可能な限りの殺気を込めて睨み
「はああああああああああ!!!」
振り下ろす!!
どっっという音とともに地面が陥没し砂煙があたりに巻き散る
……身体強化できない相手にこれはやりすぎたか?
いや…
砂煙がはれるとそこに力也の姿はなく
「どうだ?身体強化を初めて使った気分は」
訓練場の端にまで一瞬のうちにして移動していた
「死ぬかと思った、まじで」
成功して何より
side out
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上段、首を狙った横なぎの剣を屈むことで躱し手元を狙って木製の短刀振り上げる。来るのを予想していたかのようにそれを躱し完全に懐に入っていたはずの距離を相手の間合いへと変えられる。相手の構えから突きが、目線から喉元を狙っていることを把握し瞬時にそらすことで躱す
……ふう、今のは少し行動が遅れた、目は慣れてきたと思っていたんだが
突きの姿勢からの横に無理やり振るう剣、これはさっきもやってきたから予想は容易い…
この程度か、身体強化ってのは
こいつを見てれば魔力の扱いがそこまで得意とは言えないがしっかりと体に纏わせいるのが分かる。スピードもかなりのものだし元の世界のままじゃ流石にここまで反応はできてないだろう。だがどういうわけか、おそらく重力が軽いのだろうが、身体能力が上がっている。ここまで体が軽ければ…
カァァァァン!!
体の構え、姿勢、予備動作、目線から予想して受け流すのは可能、か
相手の踏み込みに対してすれすれで躱しながら懐に入る
「っ!?」
完全に俺の間合い、渾身の力を込めて鳩尾にこぶしを叩き込む
「…やっぱ無理かあ」
ここ数日に試したら鉄とかなら素手で粉砕できたんだがな、身体強化の防御力はすさまじい
「…お前硬すぎだろ、鉄くらいなら吹き飛ぶんだぞ」
距離を取りながらそう声をかける
「俺の場合攻撃よりも防御に身体強化が出ていると、何度も話したじゃないっすか…いくら攻撃やスピードを上げるのが苦手な俺に対してだとしても生身でまともに攻撃されると落ち込みますよ…」
「分かりやすいんだよな、お前」
「そうっすかねぇ…ま、続き行きますよっ」
そう言って前に出ようとする相手進行方向を予想して目の前に短刀を投げこむ
「っと」
一瞬足が止まったすきに接近するがすぐに反応されて間合いを取られる
ゾっ!?
その瞬間魔力の流れを感じてその方向にちらっと目を向けると
…なんつー魔力だ、姫さん…殺す気か?
それなりに隠された中で扱われているせいかそれに気が付かないようでアーロンは攻撃を仕掛けてくるので慌ててその対応に追われる
普通なら後出しで対応できる速さの差じゃないが今のは大ぶりだったため助かった、姫さんの前にまず今の相手をしっかりと見ないと…!??
「なっ!?」
目に映るのは恐ろしいほどの魔力を込めた大剣を振りかぶる姫さん、その顔は俺が今まで見てきた戦闘狂のそれよろしく、笑っていた
「…死ね」
美形だからそんな顔も様になるとか思っていたらそんな言葉が聞こえてくる
…なんつー殺気、元の世界じゃこんなの感じたことねーよ
こりゃ死んだか?……馬鹿が、死ねるわけがねえ!!まだ、なんもしてやってないだろうが!!
全身全霊を込めて、横にとぶ
っ!?
体に少しの倦怠感を覚えると同時に過去に経験したことのないほどの自分の速度に目を見張る
そのまま転がるようにスピードを殺して元いた方を見るように体勢を整える
…今、普通なら避けるなんて不可能だった。それに、地面を蹴るまでの反応速度も異常に上昇していたし、その距離もおかしなくらいだ…加えて魔力を放出した時の軽い倦怠感
砂煙がはれ、口角を上げた姫さんが口を開く
「どうだ?初めて身体強化を使った気分は」
使えたんだな、身体強化
死を感じる瞬間は永遠のごとく感じる、まだ経験したことはなかったが…相当なもんだな、これからどれだけ経験していくことになるんだろうな
ま、今言えることって言えば
「死ぬかと思った,まじで」




