14話
なかなか時間が進まない~
「つまり、だ」
腕に纏わせた魔力が霧散していく
「俺には魔力を扱う素質やら才能やらがほぼないんだな?」
「…はっきりと言えば、そうなるな」
またか、この世界でもまた、か…
『お前には才能というものがないんだな』
うるさい
『立て!!この程度でくたばるのか!!』
言われなくても立つさ
『もういい、お前はもう、いらない』
黙れ!!!!俺の価値をお前が決めるな!!!
「……クソッ」
結局、どこに行っても同じだったな
「まあ今まで通りか」
「我、風を操り空を切るもの、いざ力を貸したまえ…」
訓練場の離れたところにいる英雄の天に向かってあげた手から少し離れたところに魔力が集まる
「「ウィンドカッター」!!」
ズバッという音と共に案山子が真っ二つになる
「流石です英雄様!!」
「勇者様、素敵!」
「あれには流石としか言えねえな」
「そうっすね、さすがに1週間やそこらで下級とはいえ魔法をあそこまで扱えるようになるのは凄いっすよ。自分の身体から離れた魔力を扱うのはまたさらに難しいことですからね。相当魔力に対する感応性が高いんでしょう。ただ、感応性に関していえば力也様も高いんですが…」
「確かに魔力を感じる事に関しては正直もう一人、英雄の方よりは上だよな」
「うっせー、感じれても言うこと聞かねえんだよ魔力」
「そういう姿勢がだめなのかもしれぬぞ、魔力は人を選ぶからな?」
「じゃー嫌われた俺はもう終わりじゃねえか」
「そんなことはない。と、言うよりも魔力を感じれる時点でそれはない。ほんとにダメなやつはまず感じることはないし、創造属性の適正が90を越えてきているのも魔力に好かれてる事の裏付けになる」
「じゃぁ何がまずい?」
「だから、少しばかり目線を変えろと言っておる。魔力をどう使うか、そればかり考えておるだろ?力を使うのではない、貸してもらうのだ」
「…姫さんたちは皆そんな感じでやってるのか?」
「いや?我は全く考えておらん。というか犯罪者も人殺しも魔力は使えるさ。ただコツを掴まない事には始まらないから何でもいいから始めたらどうかと思っての。魔力とは我らの意思に反応し、それを叶えんとする。まあ物は試しじゃ、最初くらい下手に出ろという魔力の願いかもしれんぞ?」
「そーかい…」
再び手元に魔力を集めてみるがまたも失敗する
「?どうかしたのか…?」
「何でもない。少し休むわ」
「そうか、ではカリンと実践訓練でもしてるかの。アーロン、カリンを解放せい」
「はーい」
「っていつの間にお前は芋虫みたいに縛られてたんだよ」
「うるさいわね、ああリリス様アアアアアアアア!!!」
いきなり飛びついて行ったけど大丈夫か?
「何時もの事っすよ、気にしないのが一番すね」
「そうかい、なら気にしないが。ところでお前、茶髪、サーニャは良いのか?英雄にとられるぞ?」
座りながらアーロンに話しかけるとアーロンも座りながら答えてくれる
「……どうしてそれを聞くんすか?」
露骨に反応したな。違和感の強い間だ
「サーニャに惚れてんだろ?見てりゃ分かる」
そのサーニャはここ数日英雄の方にくっついて魔法を教えてるな。三女の姫さんもワイワイやってるが
「1回英雄に惚れちまったらもう遅いぞ?英雄本人に自覚はないけどサーニャの方が気持ちに確信を持ったら遅い。ただのハーレムの一員になるぞ」
「……相手は勇者様っすよ」
今までもいたな。まあこれまでは勇者ではなく英雄って扱いだったが
「勇者なら人の恋路を邪魔していいっつう権利はない。まぁお前より英雄の方が魅力的でいい男ってのは否定できないし、その実あいつは本物のいい男だ、あきらめるのもしょうがないとは思う」
「力也様はいったいどっちの味方なんですか」
フフッと笑いながら言うアーロンは、どこか不安定な感じだな
「別にどっちの味方って訳じゃないが、俺に付き合ってるよりは英雄に付いている方がまだ可能性はあるだろ。俺としては凄い助かってるけどな」
「…ま、ボチボチやりますよ。知ってるとは思いますが、俺らはリリス様付の騎士です。つまり国からではなくリリス様から給金を頂いてます。国の騎士からは外れているのでリリス様から離れるときは休みか理由が必要です。今のサーニャは休業中、賃金は出ていません」
「……まじか」
「ええ、サーニャがこのまま行くと、リリス様付の近衛騎士からは外されます。リリス様に目をかけていただいてる状態ですので、リリス様のお心次第ですが。まあ勇者様に近しいものなら国の騎士に戻るだけでしょうが」
「…アーロン、お前、家族は?」
「祖父と祖母がいます。両親共に魔物に殺されていますので、給金がなくなるのはつらいですね。ちなみにサーニャの父親は国の武官、母親は文官ですので。さらに言えば彼女はサンピアゴ、ドゥーカ・ファミリーの一角です」
…どっかで見た名前だとは思っていたがそうだ、サンピアゴはこの国の選ばれし名家の一家か…
「大きく影響はない、か。それに勇者に目をかけてもらえる可能性があるなら親は止めないよな」
逆にアーロンは賃金のなくなる状態じゃあ養えなくなるか。確かにつらいな
「はい。まあ俺のサーニャへの気持ちは力也様が言うようなものではなく、あこがれの色が強いですから。立ち直るのも早いと思いますよ。引きずる気はありません。相手があの勇者様なら、納得もしますよ」
「そうかい、なら俺が口を出しすぎるわけにはいかんわな。ま、後悔はするなよ」
「はい、ありがとうございます」
その瞬間 ゴッ という音がしたかと思うと何か、いや、カリンが飛んでくる
ズドォォォォォン!!という音と共に俺らのすぐ近くの壁に衝突したが…
「……どうした姫さん、いあやまあ予想は出来るが」
「その予想の通りじゃ、はああ」
「カリンも懲りませんねぇ」
「ま、それもいいところだな」
「そういえば、サーニャは相変わらずか」
「…はい」
「そうか、伝えておけ、期限は今週末だ」
「へえ、意外と厳しいんだな」
「あたりまえじゃ、素質は認める。が、我はあののろけた顔は好かん」
「分かりやすくて何より」
「よし、少し休憩とするか」
「唐突ですね。まあ丁度いいですしサーニャに話してきますよ」
…アーロンが悩みすぎなけりゃ良いがな
…
……
「…巻き起これ!「ファイヤートルネード」!!!」
少し離れた位置の英雄…なら良かったのに、すぐ目の前にいるこいつはわざわざこんなとこまで来て
「凄いな、たった一週間で中級の魔法を扱うのか…威力は少し弱めだが、少なくとも初級は越えている…なんて才能だ」
「どうだ!?力也!」
こいつは俺の気持ちに気づいてるのか?全く気付いてないのか?
「ったく、相変わらずすごい奴だよお前は」
「ささっ、では次は水の中級に挑戦してみましょうか、すぐにできるようになりますよ!」
そういう女は…誰だ、こいつ。また知らんうちに増えてるし
「力也様、彼女はわがカエイラ軍魔術師隊の大隊長のナタリア・レッキャ様です。この国の軍の魔法師としては最強のお方です」
へえ……!!??軍の大隊長!?こいついつの間にそこまで交友広げて…って今の感じ完全に落ちてるだろ
「オッケー、じゃあ力也!またレベル上げて来るからな!!」
「おう、今度は上級を頼むわ」
「流石に時間かかるな!!」
できないなんて言わない、こいつはすぐ出来るようになるな
「勇者様ならすぐ出来ますよ!まだまともに魔力を扱えないあっちと違って」
あっちって、俺だよなあ…
「んー、力也は魔法使いタイプじゃないだろうし、そんな風に見てたら、足元掬われちゃうよ?」
この手のタイプは多かったからそのあしらい方も身に着けてるよな。ま、その言葉を嘘にしないために俺がどれだけ大変だったかは置いといて
「そ、そう、ですか」
「ならさらにその上をいかないといけませんね!!がんばりましょう!」
サーニャは完全に英雄側か。アーロンの選択は正しかったのかな、前の世界より高ペースで俺の予想を軽く超えてきてる。もはや魅了とかそれ系の魔法かけてんじゃねーのか?
「じゃあな力也今度は模擬戦闘しよう!」
「おうよ」
…いつだってこいつには勝てなかった。勉強も、スポーツも、ルールがあれば何でも
確かに全てでなんて負けてない。ただ一つ、ルール無用の裏路地の喧嘩を除いてな
ただ喧嘩が強いだけの幼馴染、家がそういうところだから近所でも評判の悪い俺
そんな俺でも友達として、親友として接してくれた、ただ二人の存在
だから俺はお前の隣に立てるよう、やってるんだぜ?
……あいつが死んだ今、唯一の友の、お前の隣に、立ち続けられるように
なあ英雄、覚えってっか?約束したよな、昔、俺はだれにも負けないって、屈しないって
そうじゃなきゃ、お前の隣になんて、立ってられないからさ。バカみたいに先を突き進む、お前の隣に
あいつに悪いもんな、なあ、英雄?
「…アーロン、頼みがある」
「はい?」




