10話
遅くなり申し訳ないです
「なんでこんなところにいるのかしら?ここはあなたの部屋からそれなりに離れた場所にあるから迷ったということはないと思ってたけど、もしかして迷子?」
「違げーよ」
いきなり失礼なやつだなまったく
「あら、なら目的があってこっちに?こっちには研究室やら実験場やらのあまり勇者が好むような場所ではないのだけれど。歴代でもここに立ち入るような勇者は皆無だったはずよ?」
なるほど、こっちは研究関連の施設の集まりね……中を少し確認したかったけど、次女さんが立ち塞がるように立ってるってことはあまり俺らには知られたくない物の可能性も……流石に考えすぎか?
いや
「流石に皆無ってのは無いんじゃないか?先代は変に知識を求めてたから元の世界では研究職に就いてたと予想している……それが研究室に興味を持たないはずが無い」
「……そう、ならあなたの予測は外れてるわ。先代はここに立ち入ってはいないわよ。まぁ、興味を持っていたかいなかったかは知らないけど、少なくとも私の知る限りでは、ね。それに私がここに入るようになってから教えられたことには、歴代勇者はここに入っていないという事実よ。だからそう考えたの」
……それらしいことを並べてどうにか俺をこの中に入れたくないってとこか?
まぁこれ以上押し問答していても無駄かな
「そうかい。じゃぁ俺は他の探索に行くよ。ここは広すぎてすぐ迷いそうだし、早く慣れたいからな」
「………本当におかしな人ね、あなた本当に勇者なの?黒戸力也」
「どういう意味だ?」
「どうもこうも、歴代勇者の特徴は他の追従を許さぬほどのあらゆる方面への天性の才、魅了の魔眼でも持っているのかと思うほど容易く女を虜にするカリスマ、そして何故かすぐ人助けに走り自分の不利益を省みない愚かさ、悪を許さぬ凝り固まった意思、自身を信じて疑わぬ自尊心……これはたまに持たない人もいたわね。他には……重要なことは何故か聞こえないとかかしら?まぁそんなものよ。あげだしたらきりがないわね」
「……結局何が言いたい?」
「分からないかしら?あなたの片割れの聖名英雄、彼はそのほとんどを持ってるわね。既に私の妹はそのカリスマにやられたし、魔力適正は非凡なんて言葉では表せない。対して理由も聞かずに納得してこの国に尽くすと決める献身。自尊心は今のところは無かったように思えたけど、どうなるかはわからない。他はまだ不明ね」
「安心しろ、あいつは悪いと思ったやつは許さない正義の塊みたいなやつで、色恋沙汰には程遠い存在。難聴も持ってるぜ」
「……そう、なら彼は紛れもなくカエイラの勇者ね。それに対してあなたよ。この世界で非凡とされるが勇者ほどではない程度の魔力適正、そこまで悪くはないが良くもないカリスマ、直ぐに従わず情報を集める所なんて歴代の勇者じゃほとんど無いこと。他は知らないけど勇者のようには思えないわ」
「……まぁ、そりゃそうだろ」
「何か分かってるのかしら?」
「だって多分、俺はおまけだしね」
「……なるほどね、異例の二人の勇者なんかではなく、巻き込まれたかなんかした一般人というわけね」
「……たったこれだけで普通そこまで分かるか?まぁそうだけど」
始め俺が近づいても反応はなかったのに英雄が近づいた時に反応したあれを考えりゃそうなる
「その方がむしろ納得なのよ…そう、なら頑張ってね。確かにあなたは非凡な才を持ってるようだけど、それだけなら代わりは居るわ」
「……………あぁ、肝に銘じておくよ」
この場所はタイミングを見計らって調べるとして、他に行くかな
「そんじゃ、俺は他を探検するかな。じゃーな」
「…黒戸力也」
「………?」
「私はどちらかと言うとあなたに期待してるわ。魔王の家族もあなたよりよ。だから………失望させないでね」
「……はっ、上等」
これは次女さんなりの激励、なのかね…
まぁ魔王達のは英雄は主人公やってるのが好かないだけみたいだが
「力也様、少し遅いです。探し回ってしまったじゃないですか」
部屋に戻るとすぐに少し息を切らしたミーナが入ってきた
「悪い、一通り見ていたんだが思ってたより広くてな」
…見張りのようなやつの気配はする。つまりミーナと見張りには繋がりが無いってことか
「お気をつけください……では少し急いで準備をしましょう。と言いましてもこちらにお召し変えしていただくだけですので」
と言ってだしてくるのは………
「…スーツ?」
「はい。一応きちんとした格好でなければならない場ですので。紹介だけですがだらしない格好でなめられてはいけませんので」
「…いくら服装で誤魔化しても子供ってだけでなめられそうだがな」
「それは大丈夫ですよ。この世界の、特にカエイラは8カ国きっての実力主義。国のトップクラスに14才という若さで立っておられるデイジリー様の影響が大きく、皆若いというだけでは下に見ることは少ないです。と言いましても魔王の子女や選ばれし名家の家柄などの立場の者だけですが。力也様は勇者としてですので問題はありません。たまに偏屈なお方もおられますが、お気になさらず」
……デイジリー・シャイニーラ、あの子がこの国トップクラス…?それはそれで、どうなんだ?あんな若い女の子が上に立ってちゃ……
今はまだ考えるのは早いか
「そっか。まぁとりあえず着替えるよ。ちょっと待っててくれ」
「ドアの外にいますので、準備が出来ましたら声をお掛けください」
「分かった」
「英雄、なにやってんだそんなところで」
「あ、力也!なんかさ、ネクタイが上手くしまらなくて……よっ、これでどうだ?」
「……お前そんな不器用だったか?」
「んなこと言われてもやったことねーからなぁ。力也はやったことあるのか?」
「ミーナに任せた」
「おい!力也も出来ねーんじゃねーか」
「スーツなんざ着たことねーんだもんよ」
「だよなぁ……よっ、これでどうだ?」
「正直、歪」
「歪ってなんだよ歪って!?」
「ひ、英雄様、お手伝い致しましょうか?」
「本当か?助かる!えーっと、ミーナさんだっけ?」
ミーナが英雄の手伝いをかってでるが……
「うん、駄目だ」
「…はい?」
「ん?何が?」
「ミーナが英雄のネクタイ絞めるのを手伝うのがだ」
正直やりすぎだとは思うが用心するに越したことはないよな……自分付きのメイドが英雄に惚れてたら否応にも英雄の騒動に巻き込まれる
「そういうのはそっちに頼め」
「そっち?ってソフィーさん!」
「お、お待たせしてしまい申し訳有りません」
少し呼吸が荒いのは駆け足で来たからか。まぁ間に合ってくれてよかった
「助かった!ソフィーさん、ネクタイやって貰えると嬉しいんだけど…」
そういやこの人は犬耳なんだな…
「はい、もちろん構いませんよ。ですが英雄様、私は侍女なんですからさんなどをつけなくとも良いんですよ?」
「ん〜やっぱソフィーさんって感じだからなぁ…多分年上だと思うし…」
「確かに年は私の方が上ですが、立場が違いますから…はい、出来ましたよ」
「ありがとう。そういうものかなぁ…力也はどう呼んでる?」
「呼び捨て。明らか年下っぽいし、メイドに敬語で話してたら周りになめられる可能性も否めないから」
「周りになめられる…?」
「基本敬語ってのは敬うべき相手に向ける言葉だ。言い方は悪いが侍女ごときに敬語を使うやつは誰にでも敬語で話すような奴か侍女にすら強く出れない奴だろ。お前はともかく俺の容姿が前者に見えないのは明らかだ」
「そう言われりゃ確かにそうかな……まぁ力也は目付き悪いからね」
「あれ?確かミーナちゃんは同い年ではなかったでしたか?」
「あ、はい、力也様と同じで15才です」
「まじか、3,4年下かと思ってたよ」
「確かにミーナちゃんは童顔ですからそう見えても仕方ないですね」
「え、えと…そろそろ行かないと時間が…」
「ん?もうそんな時間か…よし、さっさと行って終わらせるかな」
「始めから時間はほとんどありませんでしたよ」
……ミーナのジト目が痛い




