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わがまま姫の専属騎士  作者: RINA
本編
6/50

第5話 矛盾する気持ち


「改めまして、おはようございます、姫。いつもご起床はこの時間ですか?」


食堂に運ばれた朝食を不機嫌な顔で片付けるヴァージニアに、ノアが微笑みながら問いかける。

太陽はすでに高く昇っていた。


「そうよ、悪い?」


ノアには一瞥もくれずにそう言い放つ。

一貫したその態度に苦笑しながら、ノアは首を傾けながら困ったように笑う。


「いいえ、悪くありませんよ。ヴァージニア様、お飲み物はいかがですか?」


「……ありがと」


不承不承にも礼を忘れないのは育ちの良さ故か。

ノアは「どういたしまして」と微笑み彼女のグラスを取ると、ジャグから冷えたジュースを注いだ。


風がカーテンを揺らし、太陽光が床に複雑な木漏れ日模様を描く。

少し離れた鍛錬場からは、小さく兵士たちの掛け声が聞こえる。


「…………」


しかしそんな平和な喧騒と打って変わり、ヴァージニアの胸中は穏やかではなかった。

彼は何も喋らず、ヴァージニアも黙っている。

結果、当然だが室内は沈黙で満たされていた。


(落ち着かない、落ち着かないわ!)


「……ノア」


「はい?」


「沈黙が重いわ。何か話しなさいよ。全く気が利かないわね」


唐突な命令に、背後から僅かに戸惑った気配を感じた。

それに少し胸がすっとし、ヴァージニアはやや得意げに後ろを振り返りながら続ける。


「ほら、早くしなさいよ。それから、後ろに立たれると首が疲れるから正面に来なさい」


「はあ……すみません。では……」


ノアはやや考える素振りを見せながらもヴァージニアの正面に回った。


「先日、深夜の巡回で王宮を回っていた時のことです。ふと窓の外に明かりを感じ目をやると、苦悶の表情を浮かべた女性の顔が逆さに覗いておりま」


「きゃあああああああああああああ!!!」


淡々としたノアの声をヴァージニアの悲鳴が遮った。


「隊長、賊ですか!?」


「いえ、何でもありません。驚かせてすみません」


血相を変えて飛び込んできた衛兵を退室させると、ノアは恐る恐るヴァージニアの顔を窺い見た。


「その……大丈夫ですか、ヴァージニア様?」


「……っ……!!」


ヴァージニアは顔を真っ青にし、耳を塞いで立ち上がると涙目でノアを睨みつける。


「……っ、あんた!わざとでしょ!私が怖い話駄目なの知っててわざと!」


「誤解です!知っていたら話しませんよ」


「絶対嘘!ああもう、だからあんたのこと嫌いなのよ!昔からへらへらして私の命令に逆らったことなんてないくせに、心の中では私のこと馬鹿にして笑ってるんだわ!この根性悪!腹黒!二重人格!!」


好き勝手に喚きながらノアの胸をぽかぽかと叩く。

されるがままになりながら、ノア小さく溜息を吐いた。


「酷い言われ様ですね……どうして私がヴァージニア様のことを馬鹿にするんですか。私は王家に一生の忠誠を誓っているのですよ。王族であられるヴァージニア様を馬鹿にして笑うだなんて、そんなことできるはずがないでしょう」


王族であるヴァージニア様。

その言葉に、何故だか胸がちくりと痛んだ。

しかし彼女がその意味を考えるより先に、ノアが笑顔で爆弾を投下した。


「しかし偶然とはいえ、こんなに可愛らしいヴァージニア様が見られるとは非常に得した気分です。怖いお話は苦手でいらっしゃるのですね、覚えておきましょう」


可愛らしい、ヴァージニア様。

先程と同じ拍子の言葉なのに、形容詞が違うだけで何故こんなに、


「…………っ!!!」


瞬時に顔色を真っ青から真っ赤に変え、ヴァージニアは今度こそ絶句した。


「……っっっ、ばかーーーーー!!!」


そして捨て台詞を吐くと、ものすごい勢いで扉を開け、走り出て行った。




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